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スタンリー・クラークはベースの革命児

さて、まずはどこから見始める? サンダーキャットの第一声は、「スタンリー・クラークはどこ?」。チック・コリア、アイアート・モレイラとのグループ、リターン・トゥ・フォーエヴァーをはじめ、ジャズ、フュージョン、ロック、ブラジル音楽とジャンルを横断して活動するジャズ・ベーシストだ。そのコーナーを探して、おもむろに歩き出すカラフルな男(サンダーキャット)。そして手にしたのは76年のアルバム『School Days』だった。

「彼はベースの革命児だと思う。学んだことは多いよ。作曲法、作曲するためのフィーリング、大胆なフレージング。俺にとって生涯のフェイヴァリット・ミュージシャンだよ。そして、このアルバムは俺が初めて譜面に書き起こしをしたアルバムでもある。そういう意味でも、俺のトップ・アルバムのひとつだね」。

スタンリー・クラークの76年作『School Days』収録曲“School Days”

レコードをしげしげとみながら、「あんまりこのアナログは見かけないんだよ」と誰に聞かせるでもなくつぶやく。そして「日本でレコードを買い出したら大変だ。持って帰るのがめちゃくちゃ重くて大変だから」と笑った。レコードを持ち運ぶ重さは、やっぱり万国共通の悩みなのだった。

 

ジャコ・パストリアスの“Portrait Of Tracy”を聴いて俺の人生が完全に変わってしまったんだ

ジャズ・ベーシストと言えば、やはりこの人も外せないだろう。ジャコ・パストリアス。超人的なテクニックと自由奔放なアイデア、そしてドラマチックな一生を駆け抜けた伝説的な存在だ。 

「セルフ・タイトルのファースト・アルバム(76年作『Jaco Pastorius』)。たぶん、俺の人生でもっとも重要なアルバムだと思う」とサンダーキャットは断言した。そのプレイを少年時代に初めて聴いたときのエピソードがおもしろい。「あれは午前3時だったかな。パパが深夜ラジオでジャコの“Portrait Of Tracy”が流れてきて、わざわざ寝てた俺を起こしにきたんだよ(笑)。俺はその当時、ベースを熱心に練習してたからね。その曲ではたくさんベースの音が聴こえて、一度におおぜいのプレイヤーがやってるみたいだった。でも、パパが〈ジャコがひとりで弾いてるんだよ〉と教えてくれた。それを知ってぶったまげたよ。そこから俺の人生が完全に変わってしまったんだ」。

午前3時の目覚ましがわりに聴いたジャコのベース・プレイ。それは絶対記憶に残るよね。

ジャコ・パストリアスの76年作『Jaco Pastorius』収録曲“Portrait Of Tracy”

「ジャコにはベースという楽器にできる可能性の大きさを教わった。彼は偉大なイノベーター。いまも俺を〈もっと弾け〉と鼓舞し続けてるんだ」。