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スレイヴ“Watching You”で俺はひとり踊りながら、その曲に惚れ込んだ

そろそろ取材時間が終わりに近づいてきたのだが、「ファンクのことも話さないか」と言って、サンダーキャットはソウル/ファンク・コーナーへと向かう。そして、スレイヴのコーナーでアルバム『Stone Jam』(80年)をピックした。

彼の新曲“Black Qualls”で、スティーヴ・レイシー、チャイルディッシュ・ガンビーノというバリバリに現代的な顔ぶれと並んで参加しているのが、ファンク界の大ヴェテラン・シンガー、スティーヴ・アーリントン。そのアーリントンがかつて参加していたオハイオ州のグループが、スレイヴだった。

『It Is What It Is』収録曲“Black Qualls (Feat. Steve Lacy & Steve Arrington)”

「スティーヴ・アーリントンを知ったのは、俺がブランドン・コールマンとギグをやったときのこと。その日、ピアノのテックで入っていたスタッフが俺らより年上でね、彼はいつも10代のころに好きだった音楽のことを話してくれたんだけど、彼からスレイヴを教えてもらったんだ。ギグの後に彼はDJでスレイヴの“Watching You”をかけた。それを聴きながら、俺はひとりで踊った。踊りながら、その曲に惚れ込んだ。もっとスレイヴのことを知りたいと思った。そして、それからすべてのアルバムを買った」。

スレイヴの80年作『Stone Jam』収録曲“Watching You”

スレイヴの全盛期だった70年代後半から80年代の前半には、似たようなディスコ・ファンク・グループがたくさんいた。そのなかでもスレイヴがサンダーキャットの心を躍らせたのは、なぜなんだろう?

「スレイヴのサウンドにはブラック・エクスペリエンスがはっきりと滲んでいる。みんなが楽しめるダンス・ミュージックだけど、本質はとてもブラックなのさ。スヌープ・ドッグみたいな人が気がつくタイプの本質が、彼らにはあるんだよ」。

 

いつかドナルド・フェイゲンと一緒に仕事してみたいな

さて、そろそろタイムアップ。もう心残りはないかなと思いきや、どうやら壁に飾ってあるレコードで見逃せない一枚を見つけたらしい。

「ドナルド・フェイゲンを忘れちゃいけない。『The Nightfly』(82年)はとんでもなく重要なアルバムだ。スティーリー・ダンもいいけど、彼がソロで出した『The Nightfly』には敵わない。俺の人生にすごく大きな影響を与えたんだ。全曲好きだから、聴くときは絶対に曲はスキップしない。最初から最後まで完璧に美しく作られているんだからね」と言い終えて、ポツリと最後に「いつかドナルド・フェイゲンと一緒に仕事してみたいな」とひとこと。

ドナルド・フェイゲンの82年作『The Nightfly』収録曲“I.G.Y.”

『It Is What It Is』の国内盤ボーナス・トラックに入っている“Bye For Now”に参加しているマイケル・マクドナルドは、ヨット・ロック・ブームによる再評価でも注目されたシンガー・ソングライターだけど、彼はドゥービー・ブラザーズ以前にスティーリー・ダンに参加していたことがあるし、ドナルド・フェイゲンとツアーしたこともある。その〈いつか〉は、あながちそんなに夢物語じゃないかもしれない。

というわけで、サンダーキャットがTOWER VINYL SHINJUKUでセレクトした6枚のアルバムを両手に持って、最後に記念写真をパチリ(タワーレコード店員専用のエプロンと名札もつけて)。

 

サンダーキャットが選んだレコード