yonkeyは、中田ヤスタカやきゃりーぱみゅぱみゅが所属するアソビシステムが発掘した、22歳のプロデューサー/シンガーだ。彼はクラシック・ピアノやブレイク・ダンスなど様々な表現を経て、高校在学時に自身のバンド・Klang Rularの活動を開始。さらにバンド活動とは別に、スクリレックス(Skrillex)やゼッド(ZEDD)などの影響からビート・メイク、プロデュースを始める。ソロ名義では2019年にAAAMYYY(Tempalay)を客演に招いた“ダウナーラブ (feat. AAAMYYY)”を、2020年2月にオッド・フューチャー(Odd Future)のメンバーとしても知られるエース橋本(Ace Hashimoto)を召喚した“Haunter (feat. Ace Hashimoto)”を発表。それぞれ高い音楽性で多くのリスナーに驚きを持って迎えられた。さらに現在、ヒップホップ・クルーBAD HOPの弟分であるOGFのプロデュースとトラックメイキングなども務めている。

そんなyonkeyがソロ名義として4月1日に“タイムトリップ(feat.さなり)”を、そして4月10日にはKlang Rularとして“iCON”をリリースした。ポップに仕上げられた前者でフィーチャーされているのは17歳の若手ラッパー・さなり。過去2作とは違い、年下のアーティストがコラボ相手となる点も注目の1曲だ。一方の“iCON”はバンドとして初の正式な音源リリース。日本の様々な音楽をカヴァーするYouTube動画〈Midnight session〉も人気を集めているなか、万を持して発表された今作はいわゆる〈バンド・サウンド〉というステレオタイプにとらわれない自由な音作りが特徴だ。タイプの違う両曲は、どの様に生み出されたのだろうか。

どこかミステリアスな存在のyonkeyだが、実際に対面してみると〈音楽を愛し努力する真面目な青年〉という印象を持つ。既成概念を崩す創作とは裏腹な雰囲気だが、音楽に対する考えは鋭く、語る言葉はフレッシュで示唆に富んでいた。一連の新作に秘められた意図や裏側、そして自身のルーツについてyonkeyにインタビュー。

yonkey 『タイムトリップ(feat. さなり)』 LINE(2020)

Klang Ruler 『iCON』 LINE(2020)

 

クラシック・ピアノ、映画、ブレイク・ダンスにボイパ……様々な経験が現在に

――新型コロナウイルス騒動で大変な世の中になってしまいましたが、yonkeyさんはご無事ですか?

「僕は大丈夫ですが、外に出られないのは不便ですね。イベントも全部中止になって、人と直接的に関われない状況は辛いです。現在は基本、自宅での音楽制作をメインに活動しています。いつになったらまたライブを再開できるか、という見通しはまだ立てられません。ただ細心の注意を払った上で発信を続けようとは思っていて、いろんなアーティストに声をかけたりはしています」

――そうですよね。今日はまずyonkeyさんの生い立ちについて軽く伺っていきたいのですが、もともとクラシック・ピアノを弾いていて、コンクールに出るほどの腕前だったそうですね。

「はい。一時期、母親世代の間で男の子にピアノを習わせるブームみたいなものがあったんです。だから最初は習っている友達が多かったんですけど、2~3年すると僕くらいしかいなかった(笑)。その時は弾くのが楽しいというよりも〈弾けるようになりたい〉という気持ちで続けてましたね。

12歳くらいの時、カワイの音楽コンクールで全国大会まで行きました。でもその日の最初に弾いた8歳くらいの女の子が僕の何百倍も上手くて、それで心が折れたんです。1日8時間とか練習するくらいじゃないとあれは弾けないなって。それからはポップスのアレンジ……例えば荒井由実さんの“ひこうき雲”のアレンジ・ヴァージョンとか、“ルパン三世のテーマ”のジャズ・アレンジなどを弾いてました。聴く音楽もGReeeeNとかEXILEなど、クラスのみんなが知っているものばかりで」

――中学校の時は映画も撮られていたそうですね。タイトルは覚えてますか?

「適当だったのでタイトルとかはないですよ(笑)。スマホを初めて買ってもらった時に〈これで何でもできるじゃん〉って思ったのは覚えてます。当時は映画『レオン』に影響を受けて、クラスの背が高いカッコいい男の子に殺し屋役をやらせてました(笑)。エア・ガンを撃って、弾に見立てた単三電池を〈カランカラン〉と落とすシーンを撮ったりとか。

小さい時から父が毎週〈これ見よう!〉と言って、『E.T.』とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか、よく昔のSF映画なんかを見せてくれてたんです。当時は〈古臭いな〉と思うものもありましたけど、そういう経験から、音楽に縛られないクリエイティヴを意識することができたと思います。音楽+映像で〈見せなきゃ〉というよりも、自然と〈これならこの映像が合うね〉という流れになるというか。今回の“iCON”のMVや〈Midnight session〉も自分たちで制作していて、映像にもこだわっています。

当時観ていた映画の音楽は誰が作っているかわからなかったですけど、最近だとクリストファー・ノーランとハンス・ジマーのタッグが好きですね」

――なるほど。

「それから高校の時はブレイク・ダンスにハマって、くるくる回ってましたね(笑)。スクリレックスとかダブステップを聴いた辺りから、音楽だけじゃなく踊りも良いなと思いまして。その時は〈(音楽を)作りたい〉という気持ちよりも〈(音楽で)踊りたい〉という気持ちが強かったんですよね。

同じ頃、ボイス・パーカッションにも凝ってました。授業中にこっそりスクラッチを練習していたら、気付いたら大きな声になっていてみんながこっちを見て固まっていて(笑)。昔から集中すると、それに一直線になってしまうみたいで。今も音楽を作り始めて、気付いたら外が真っ暗になっていたりしますから」

 

ヴォーカリストとしての経験が、ヴォーカル・ディレクションにも活きていく

――そんなyonkey少年が、高校在学中にバンド・Klang Rularを結成し、その活動と並行してソロでも活動するようになります。今回はソロとバンド、両方の新作がリリースされるわけですが、まずはソロでの新作“タイムトリップ(feat.さなり)”についてお話を訊かせてください。さなりさんと一緒にやろうと思ったきっかけは?

「僕の作品でアートワークを担当してくれた2BOYさんが、さなりくんの作品も手掛けている縁で、彼を紹介してもらいました。デモを送ったら〈ぜひやろう〉という感じで制作が始まったんです。これまで3回くらい会ってはいたんですが、がっつり制作するのは初めてで。彼に聴かせたのは“タイムトリップ”だけでしたけど、その前に3つほどワンループの素材を作っていて、どのテンポ感がさなりくんに合うか自分のなかで考え、最終的に残ったのがこの曲だったんです」

――曲のいろんな場面でいろんな音が鳴ってますよね。

「そうなんです。前作(“Haunter (feat. Ace Hashimoto)”)に続いて、録り貯めていたキッチンの音とか、家の鍵などの日常的な音をサンプリングする手法を用いています」

――メロディーも軽やかで、カッコよさもかわいらしさも両方ある感じで。

「さなりくんの今までの楽曲を聴いた上で〈このメロディーラインが合うな〉という直感を大事にしました。サビ冒頭のリリック〈まだ間に合うから〉の部分もさなりくんの発音を考えた言葉のチョイスです。この部分の息の抜き方だったりは、デモの段階で僕が彼の声モノマネをして録りました(笑)」

――さなりさんの印象はどうですか?

「年は結構下ですけど、〈普通に大人みたいだな〉という第一印象でした。年の差を感じなかったというか、僕と話しているときも落ち着いているし、何なら僕の方がオドオドしているぐらい(笑)。レコーディングもお互いに〈今のどうでした?〉〈今ここが良いと思ったけどどう?〉〈いいですね〉と、フレンドリーなアイデアの交換ができたと思います」

――yonkeyさんはこれまでにAAAMYYYさん、Ace Hashimotoさんとコラボしたシングルを発表していますが、お相手のことはどれくらい調べるんですか?

「フィーチャリングする時は相手のリサーチから徹底的にやります。相手の楽曲はすべて聴くし、表面上の人柄もSNSをチェックしたりして。そういうのをした上でレコーディングして、それまでの想像を超えていくのが楽しいんですよ。制作中は年齢差の意識はないです」

——ご自身もヴォーカリストですけど、個人的な歌に対するこだわりはありますか?

「僕自身、歌は好きで日々鍛錬はしています。もともとは歌を勉強したいと思って専門学校でゴスペルのコースを志望して、発声練習とかをひたすらやっていたので。だからヴォーカルのディレクションをするときもその経験が活きていると思います。さっきも言ったようにひとつのことに没頭すると周りが見えなくなるので、トラック作りに没頭しすぎると歌のことを考えなくなることもあるんですけど、活動が偏っていないかチェックすることが必要で。ピアノを弾きながら発声練習や運動をするなどして、力が落ちないようにしています。

あと、日本人と外国人の歌唱を比較すると、同じ音程を歌ったものでもイコライザをかけた時の質感や倍音の成分が全然違うんですよ。だから外国人の歌声はやっぱりすごいんですけど、倍音が多い声が必ずしもグラミー賞を獲るわけではないし、倍音がない声だって輝ける可能性はあるし、そういうことを考えながら自分で歌ったり、ディレクションしたりしています」

 

〈新世代の象徴〉Klang Ruler

――もう一方のリリースである、Klang Rulerの新曲“iCON”についても教えて下さい。

「これは少し前にできていた曲で、すでにライブでは披露していて。バンドとしては正式なリリースがなく、1作目として出すなら〈僕たちが新世代の象徴だ〉という、この曲がふさわしいかなと思ったんですね」

――ソロとバンドの違いはどうですか?

「ソロと比べると、まず僕がフロントマンとしてパフォーマンスするということが大きいです。あとはアレンジをバンドに委ねるかどうか、という制作の違いがありますね。リズムやベースライン、ギターのアプローチはソロの時とは全く違う手法ですから」

――メンバーはどういう人たちですか?

「Klang Rulerのメンバーは幼なじみもいるし、高校の同級生もいるし、専門時代の同級生もいて、徐々に集まっていった感じですね。僕以外のメンバーは一日中ひたすら楽器を練習していたり、めっちゃストイックなんですよ(笑)」

――それぞれの音楽性は?

「結構バラバラです。清水翔太(ドラムス)はヒップホップ/R&B、かとたくみ(ベース)はジャズ、莉希(ギター)は邦ロック、Sakura(ヴォーカル&キーボード)はインディー・ロック/インディー・ポップが好きで。制作は僕を中心に出したアイデアを全員でまとめる感じですけど、自分の知らない部分をそれぞれが持っているからこそ、ひとつの楽曲に対して色々なアプローチが生まれるんです。そういうやり方だと、芯はブレないけど、各メンバーのキャラクターは出ると思っていて」

――“iCON”は間奏でトラップ風のビートも取り入れていますけど、ライブではどのように再現しますか?

「Klang Rulerは機材のセッティングも特殊で、かとたくみはベースだけでなくベース・シンセも弾くし、清水はパッドも使ってヒップホップのリズムを出すし、僕もサンプラーを使ったりするし。各メンバー2種類以上楽器を使って、曲中のサウンド・チェンジにも対応できるような体制にしています。だからセッティングも普通の倍くらい時間がかかるし、PAの方も大変だと思います。4バンドくらい出るイベントだとサウンドチェックする時間が無くなっちゃうこともあって(笑)。今は協力してくれているPAさんがいて、その人が細かく調整してくれています」

――“iCON”はミックスもご自分でされたそうですね。

「“タイムトリップ(feat. さなり)”は自分で大体ミックスしてから細かい点をエンジニアの方に投げましたが、“iCON”の方は納品まで僕がやりました。今回はミックスの土台である低音の処理に一番時間をかけていて、色々なヴォリューム感で何時間もキックとベースを聴き続ける、みたいなことをやりました。でもずっとやっているとジャッジできなくなっていくので、そういう時はいったん止めて、また次の日にふらっと聴いてみたときに〈あ、ベースでかい〉と思ったりする。そういう感覚を大事にしているのでミックスも1日じゃ終わらないんです。何日かかけて、色々なコンディションのなかで判断するという感じです」

――そういう作業で何か参考にした音源はありますか?

「今回はハーフ・アライヴ(half•alive)の“still feel.”をミックスの参考にしました。ドラムスのサウンド感やバランスがかっこいいので。“iCON”のラップ部分で鳴るサブ・ベースの音は個人的に今好きな低音ですね。ヒップホップのトラップ・シーンでよく使われる音色なんですけど、大きなフロアで聴けば聴くほど気持ちいいと思います」

――それとKlang Rulerは様々なアーティストとコラボしながら、例えば和田アキ子の“笑って許して”とか山本リンダの“どうにもとまらない”といった曲まで大胆にアレンジしたカヴァー動画〈Midnight session〉を上げていて、それをライブでも演奏しているのが特徴的ですよね。いわゆる日本の歌謡曲についての印象を教えてください。

「決して今のサウンドっぽくはないんですが、そこに独特の日本らしさがあるのが面白いと思っていて。〈懐かしいけど新鮮〉っていう不思議な感覚があります。起承転結がハッキリしているからセクションが多いし、そんななかで、ループもので培ったアレンジを混ぜたら面白いかなとか。歌謡曲はコードとメロディーが表裏一体というか、同じ世界線で生きている曲が多くて、そのコードじゃないと説得力が出ない場合があるので、無理なリハーモナイズをせずに現代のサウンド感やリズム感で変えて行く方がいいなと思ったりとか。もちろん原曲へのリスペクトも忘れずに、今後もっともっとリヴァイヴァルしていっても良いかなと個人的に思っています」

――日本語で歌う意味については、ご自分のなかで考えがありますか?

「日本語って英語などに比べると音をはめにくくて、メロディーもひとつの音に大体1文字しか入れられない。となると伝えられる情報量も変わってきますけど、そのなかで良い表現をしている曲はたくさんあります。難しいことだと思うんですが、言葉数が少ないなかで聴く人に想像力を与える日本語は素晴らしいと思っています。

僕自身も英語を勉強しているんですけど、第一言語である日本語が最も狙ったフィーリングを表現しやすい。サウンド面では日本っぽさを全く意識してないんですけど、言葉の面では世界に向けて日本語で戦っていきたいと思ってます」

――最後に、自分たちの世代について思うことはありますか?

「僕ら世代はジャンルの壁を本当に気にしないと思っていて。周りのミュージシャンも〈ヒップホップやってるけど、海外のポップスも好きだし、歌謡曲も好き〉みたいな感じが多い。お互いにジャンルを気にしなくなっている世代だと思います。〈界隈(シーン)〉というものに固執しないで、良いものは良いという。そのなかで僕はトラックメイクやサウンド面で修行を積んできたつもりなので、リスナーに〈yonkeyぽい音〉を意識してもらえたら嬉しいなって思います。同じ世代でいうと最近、空音くんが僕の作品を認めてくれていて、〈yonkeyぽい音〉を武器にしていこうと思っています」

――今後フィーチャリングしたいアーティストはいますか?

「Vaundyくんとは良い曲が書けるだろうなと思いますし、藤井風くんも同い年で前からカヴァー動画をチェックしていたということもあってコラボしてみたいですね。年上の方だったら小袋成彬さん。彼の音楽は去年からずっと聴き続けていて、個人的に尊敬しています」