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インタビュー

クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)――闘う弦楽四重奏団が17年ぶりに来日! テリー・ライリーやライヒを披露

©Jay Blacksberg

〈闘う弦楽四重奏団〉17年ぶりの来日コンサート

 「大好きな日本で久しぶりに演奏できるので、全員が興奮しているんだ」と喜びを語るリーダーのデイヴィッド・ハリントンの傍から「好物の納豆を早く日本で食べたいよ」と口を挟むのは、同じくヴァイオリン奏者のジョン・シャーバ。去る2月、カリフォルニア大学バークリー校コンサート・ホールにおける取材は、こんな感じで始まった。

 1973年の結成以来およそ半世紀にわたり最前線で活躍してきた“闘う弦楽四重奏団”クロノス・クァルテットが、今年9~10月に日本公演をおこなう。来日コンサートはなんと17年ぶりということで、メンバーの気合いの入り具合も半端じゃない。
今回の来日コンサートは計5ヶ所の会場でおこなわれるが、プログラムの多彩さが、まさにクロノスの在り方、スタンスそのものを物語っている。あらゆる意味でボーダーレスなのだ。

 たとえば、東京オペラシティや盛岡市民文化ホール、八ヶ岳高原音楽堂での演目。若き日のハリントンが偶然ラジオで聴きクロノス結成へのインスピレーションを得ることとなったジョージ・クラム《ブラック・エンジェルズ》を筆頭に、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスなどのミニマリズム作品、ジョージ・ガーシュイン、更にジョン・コルトレーン、ザ・フー、ローリー・アンダーソンといったジャズ/ロック系作品まで、なんともヴァラエティ豊か。クロノスがその長いキャリアを通して、異なるジャンル、異なる文化、異なる時代の間の架け橋あるいは灯台になってきたことを今更ながら思い知らされよう。

 「そう言ってもらえてうれしい。架け橋や灯台としての役割を果たすことがクロノスの仕事、あるいは責務のひとつだと考えてきたので。私は12歳の時に音楽家になると決心し、歳を重ねる中で多くの音楽に触れてきた。様々な声、様々な楽器、様々な地域がもたらす音楽…それらが常に、継続的に、クロノスにエネルギーを与えてくれるんだ。偏見を持たずに耳を澄まし、自由な想像力を保ち、音楽がその磁力を発揮できるようにすることが我々の責務だ。音楽家同士、あるいは音楽家と聴衆がつながって新しい関係を構築する可能性をクロノスは常に探っているんだ」

 そう語るハリントンの目は、もちろん未来へも向けられている。上記3会場で演奏される日本人作曲家、望月京の《Boids》などはその象徴だろう。クロノスは、世界中のいろんなジャンルの作曲家に委嘱した新曲のスコアと音源を特設サイトからフリー・ダウンロードできるようにする教育的プロジェクト〈Fifty For The Future(未来のための50曲)〉を2015年から続けてきたが、望月京《Boids》もそのひとつだ。

 「現時点では50曲中まだ35曲しか完成してないけど、そのサイトでは作曲家が自らの音楽や人生について語る声も聴くことができるんだ。このプロジェクトが若い音楽家やリスナーにとっての新たな入り口になったり、コンサートのアイディアにつながる刺激になればいいと思っている」

 キャリアやスタンスを総検証したようなプログラムの一方で、近年の話題作の日本初演も注目されるところだ。そのひとつが、彩の国さいたま芸術劇場での〈A Thousand Thoughts〉。これは、アメリカの映像作家サム・グリーンが企画・制作したもので、クロノスの半世紀弱の活動を振り返ったドキュメンタリー・フィルムと、クロノスの生演奏、そしてクロノスの傍に控えるサム・グリーンによるナレーションの三つが重なり合う実験的マルチ・メディア・ワークである。

 「これはコンサートなのか、レクチャーなのか、それとも映画なのか…と私も最初は戸惑ったんだけど、その全部が同時に起きるんだ。クロノスが今までに取り組んできたものを超えた壮大かつ神秘的な作品と言っていい」

 私もインタヴュー後にコンサートを観たのだが、映像と実物、過去と現在の交差の中でマジカルなフィードバックが起きる様はなんとも刺激的だ。

 「つまりこれは、クロノスを取り巻く事象に対し時間がどう影響を及ぼすのかを明らかにしつつ、生命/人生の重力を表現しているんだ。私たちのことを全く知らない観客も含め、多くの人々にとって価値あるものを生み出すという点において、監督のサムはクロノスよりずっと先をいっていると思うよ」

 ちなみにこの作品中に登場する(映像と生演奏)のは、ジョン・アダムズ、ジョン・オズワルド、ペロタン、テリー・ライリー等々の楽曲だ。

 そして、神奈川県立音楽堂で演奏されるのが、テリー・ライリーの大曲《Sun Rings》。「クロノスにとって彼の作品はいくつあっても多すぎることはない」とハリントンが語るように、クロノスはこれまでにたくさんの新曲をライリーに委嘱し、他の作曲家とは別次元の濃密な関係を築いてきた。まさに盟友である。

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