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イタリアのミラノを拠点に活動する電子音楽家、ロレンツォ・センニ。トランスやレイヴのサウンドを独自に研究する彼は、それらを換骨奪胎して音楽を作り出している。〈未来的〉と呼ぶにふさわしいエレクトロニック・ダンス・ミュージックの極北のような彼の曲を聴いてもらえれば、エイフェックス・ツインが気に入っている、という逸話にも納得してもらえるだろう。

名門ワープから発表したEP『Persona』(2016年)から早4年、センニが待望のフル・アルバム『Scacco Matto』をリリースした。今回は、これを機に彼のキャリアやその作家性を紐解く。書き手は、京都のレコード・ショップ〈Meditations〉のスタッフであり、著書「ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド」を7月に上梓する注目のライター、門脇綱生だ。 *Mikiki編集部

LORENZO SENNI 『Scacco Matto』 Warp/BEAT(2020)

 

時代が一周した今、電子音楽の台風の目はワープ?

テン年代に加速することとなったトランスやレイヴの解体及び再考、〈Tri Angle〉や〈Halcyon Veil〉〈Modern Love〉などのレーベルを中核にエレクトロニック・ミュージックのアップデートを推し進めたポスト・クラブ/ポスト・インダストリアルの興隆――こういった、実験音楽がダンス・ミュージックと流れを同じくしていった過程で新たに開拓されてきた先鋭的文脈さえも、現在はスタンダードへと押し込まれつつある。

そんな中で、新たなるエレクトロニック・ミュージックの台風の目は、その源流といえるワープが再び握っているのかもしれない。そう思わせる才能が、ワープからアルバムをリリースする。エイフェックス・ツインがライブ・セットでヘヴィー・ローテーションしたことでも話題を集め、ニコラス・ジャーやアクトレスといった人気アクトもまた自身のミックス作品の中で取り上げてきたイタリア・ミラノの異才、ロレンツォ・センニだ。