イギー・ポップ(Iggy Pop)『The Bowie Years』ボウイと過ごした77年、異質なふたりの胸躍る創作をまとめた7枚組ボックス

2020.06.15

永遠の淫力魔人、イギー・ポップのボックス・セットをもし編むとするならば。そんな想像を巡らせたとき、ほぼ全員がコレを思い浮かべたのではないだろうか。コレとは、このたびリリースされた7枚組ボックス『The Bowie Years』。ボウイとは、もちろんイギーの盟友であったデヴィッド・ボウイのことで、まとめられているのは、彼との密なるコラボレーションの数々であり、ストゥージズの解散後にソロ・アーティストとして踏み出した77年あたりの音源だ。

ドラッグ漬けで破滅の道を転がり続けていたイギーをクリエイティヴな世界へと引き戻した恩人、ボウイ。彼らがパリやベルリンでレコーディングした『The Idiot』(77年)と『Lust For Life』(78年)という2枚のオリジナル・アルバムはロック史に残る名盤として認知されているが、異質なふたりが絶妙なバランスを維持しながら作り上げた音世界はいまの耳で聴いてもスリリング極まりないもの。

前者は、ボウイの歴史的名盤『Low』(77年)でも見られたクラウト・ロック的アプローチがふんだんに散りばめられており、従来のイギーのイメージを覆すような知的なムードが濃厚。デカダンな色合いを帯びたエクスペリメンタルなサウンドを背にし、アンダーグラウンド・ロック界の魔王的表情を浮かべるイギーがなんともカッコよい。そんな異色作が、丁寧なリマスターが施され、どの音もしっかりと磨き上げられているわけだが、奇妙な味わいがより際立った感があり。なかでも、のちにボウイがセルフ・カヴァーする“China Girl”はいっそうグラマラスさが増した印象だ。

一方『Lust For Life』は、〈生への意欲〉という題名どおり爆発力の高いパフォーマンスが詰まった1枚で、パンク・オブ・ゴッドファーザーと呼ばれたイギーの魅力が乱反射している。映画「トレインスポッティング」のオープニングに使われて90年代にリヴァイヴァル・ヒットした“Lust For Life”、スージー&ザ・バンシーズのカヴァーも忘れ難い“The Passenger”、それにボウイ・ヴァージョンも人気の高い“Tonight”やソウル風味のバラード“Turn Blue”など名曲たちが生き生きとよみがえっていて嬉しいったらない。

で、本ボックスの目玉となるのは当時のライブ・パフォーマンスの数々で、両アルバム発表直後に行われたふたつのツアーからの音源をまとめた名ライブ盤『T.V. Eye-1977 Live』(一部にボウイもキーボードで参加)は丸々収録し、それに加えて、ロンドンのレインボウ・シアター公演&シカゴのマントラ・スタジオでのスタジオ・ライブというふたつの未発表ライブ音源が発掘されている。前者などブート並みのワイルドな音質だったりするのだが、イギーの汗が飛び散る様子が目に浮かぶような熱演揃いで、とにかくアガリまくること必至。

別ミックスやシングル・エディットなどとっておきのレア曲をまとめたディスクも含めて充実した本作は、彼が出演する映画が2本も公開される(ジム・ジャームッシュ監督最新作「デッド・ドント・ダイ」とインディアンの音楽を紐解くドキュメンタリー「ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち」)特別な年をより輝かせてくれるお宝だ。

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