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電気グルーヴ 『“人間も動物” ツアーパンダ2013』 キューン(2013)

アルバム『人間と動物』(2013年)リリース後の全国ツアー〈ツアーパンダ2013〉から、同年3月13日にZepp DiverCityで行われたライブの模様を収録。〈レディング・フェスティバル〉でのカート・コバーンを想起させる、点滴スタンド付きの台車に乗った卓球とそれを押す瀧(両者ともに病人スタイルの衣装)がゆっくりと姿を現すオープニングの“The Big Shirts”からもう楽しいったらありゃしない。

近年の彼らのライブでは欠かすことのできないDEVICEGIRLSによるVJはもちろん、ステージの左右に設置された巨大な顔型オブジェを使ったプロジェクション・マッピングの演出もオーディエンスを大いに盛り上げてくれます。

また、それまでは機材回りのサポートを担当していたagraphこと牛尾憲輔がステージにサポート・メンバーとして参加。“Disco Union”などは、彼のアレンジによるヴァージョンでパフォーマンスされています。終盤での“FLASHBACK DISCO”“Shangri-La”“少年ヤング”“N.O.”の畳みかけは圧巻!

 

電気グルーヴ 『電気グルーヴ25周年記念ツアー “塗糞祭”』 キューン(2016)

結成25周年を記念して開催されたライブ〈塗糞祭〉の模様を映像化。

これまでも〈2階からぎょー虫ぶらさげおじさん〉〈野村ツアー〉〈歌う糞尿インターネット攻略本〉など強烈なツアー・タイトルを冠していたが、ここに極まると言っても過言ではないくらい素晴らしいネーミングで行われたステージはまさに〈祭〉というべき豪華なゲスト(a.k.a.挑戦者)が次々と登場します。

CMJK、DJ TASAKA、砂原良徳といったチャレンジャーに加えて、スチャダラパーとは“今夜はブギー・バック”をパフォーマンス(オザケンのパートは卓球と牛尾が担当)。さらに、金髪カツラに網タイツ、紙ごみ付属のポリバケツを着用し、ティッシュペーパーの空き箱を履いて出演する天久聖一の〈日本はまだまだ豊かになりますぞー〉ボイスも。また、電気がプロデュースした伝説のゲームソフト「グルーヴ地獄V」などニヤリとさせるネタが大量に投影されるDEVICEGIRLSのVJも必見。

そして、ラストに披露される“無能の人”(“N.O.”の歌詞違いヴァージョン)や“電気ビリビリ”は、インディーズ時代のアルバム『662 BPM BY DG』(90年)収録仕様に忠実なアレンジとなっており、後者の後半の歌詞はヤバすぎると判断されたのか卓球&瀧のヴォーカルがボコーダーで処理される羽目に。

なお、当日に演奏された“Twist Of The World”は、エコー&ザ・バニーメン“The Cutter”のサンプリングが影響したのか未収録、配信されているアルバム『KARATEKA』(92年)にも収められていないので、音源で聴きたい人はCDを購入しましょう。

加えて、本作には副音声が入っていませんが、ライブ中のMCがバッチリ楽しめます。アルコールなしでスパークする卓球のトークは、時折客をポカーンとさせてしまうほどで、危なっかしい発言等には〈ピー音〉ではなく、芸人・GO! 皆川による〈ウンチョコ〉ボイスで自主規制を行っています。

 

電気グルーヴ 『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 キューン(2016)

大根仁が監督を手掛けた電気グルーヴ初のドキュメンタリー映画となる本作。とにかく一筋縄ではいかない電気の25年の活動を、約2時間でまとめることができた大根監督の手腕に拍手。

ヒストリーものなので新参者には抜群の内容ですが、大阪・十三ファンダンゴでの初ライブをはじめ、第1回の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉やヨーロッパ・ツアーの裏側など長年のファンでも見たことがないような貴重な映像が盛りだくさんです。

また、天久聖一、CMJK、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、小山田圭吾、スチャダラパー、砂原良徳、山口一郎、WESTBAMらが彼らとの関係性や当時の思い出などを語るシーンが挟み込まれますが、映画が始まって数分で登場する〈FUJI ROCK FESTIVAL〉の生みの親である〈大将〉こと日高正博の異様な貫禄が強い印象を残します。

 

電気グルーヴ 『TROPICAL LOVE TOUR 2017』 キューン(2018)

2017年3月25日にZepp Tokyoで行われた単独公演の模様を映像化。最高傑作『TROPICAL LOVE』(2017年)を作り上げた後のツアーということで、オープニングの“人間大統領”から会場は異様な盛り上がりを見せます。

また、後述する「クラーケン鷹」と同様に3月のライブということで初期の名曲“March”を披露、歌詞の内容も含めて普段の彼らのパフォーマンスでは味わえないような甘酸っぱさが感じられるのも見どころ。さらに、“新幹線”“Eine Kleine Melodie”ではステージ前部に紗幕が垂らされ、スクリーンのように映像を投影する演出が圧巻です。

ライブのクライマックスは、『TROPICAL LOVE』収録の“UFOholic”“トロピカル・ラヴ”の2連発。ただひたすら音楽に身を任せる気持ちよさをぜひ自宅で堪能してもらいたい。

そして、アンコールではアルバムに参加した夏木マリが映像のなかで歌唱する“ヴィーナスの丘”と、前身バンド・人生のナンバーをリメイクした“半分カメレオン人間”を披露するという、アンコールらしいサービスが届けられて幕を閉じます。

 

電気グルーヴ 『クラーケン鷹』 キューン(2018)

2018年3月17日に開催されたワンマン公演の模様を収録。近年の電気グルーヴのなかでは卓球も語っているように、〈最高峰〉の出来と断言できる内容に仕上がっています。

新たな代表曲と言いたい“Fallin’ Down”をはじめ、スチャダラパー“Trio The Caps”ネタも飛び出る“Missing Beatz”、トミタ栞のキュートな歌声が印象的な“プエルトリコのひとりっ子”“いちご娘はひとりっ子”など、序盤から目が離せない展開。その後、“Upside Down”“モノノケダンス”“MAN HUMAN”という〈アニメ・タイアップ3連発〉を挟み、ギタリストの吉田サトシがステージに参加する“柿の木坂”以降は現在進行形の電気グルーヴが一番カッコいいことを証明する圧倒的なパフォーマンスです。

オールド・ファンは、卓球とまりんが共作した名曲“猫夏”をアレンジした“Caty Summer”でノックアウト必至。吉田のかっちょ良すぎるギター・リフを聴き逃すな。
そして、アンコールにはみんな大好き日出郎が参加して“燃える!バルセロナ”を披露し、“人間大統領”で終了。“N.O.”も“Shangri-La”も“富士山”も演奏されていないのに、まったく不満が残らないこの完成度はちょっと凄い。

なお、副音声では卓球が電気グルーヴの音楽性について非常に重要なことを述べているので、ファンならば必聴です。

 

ちなみに、カテゴリーは映像作品でないものの、彼らのパフォーマンスを楽しめる作品はいくつかリリースされており、シングル“MAN HUMAN”(2018年)のDVD付き仕様にはストリーミングで生配信された〈DENKI GROOVE DECADE 10 LIVE STREAMING〉の模様を収録。また、アルバム『TROPICAL LOVE』(2017年)の初回生産限定盤のDVDには、2016年3月9に開催された単独公演〈お母さん、僕たち映画になったよ。〉の本編がノー・カットで収められています。さらに、シングル“Fallin’ Down”(2015年)の初回生産限定盤のDVDには、前述した〈塗糞祭〉から3曲がパッケージ。

おすすめは、『人間と動物』(2013年)の初回生産限定盤のDVDに収録されていた〈WIRE12〉のライブ。このイベントならではの〈ほぼヴォーカルなし〉のパフォーマンスは、普段のライブでは見ることのできない貴重なものかと思います。ただし、同作の初回盤は現在購入困難なので、まわりの持っている人から借りるとかして、頑張ってください(無責任)。