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駆け足でグラミーまで

 記念すべきデビュー・シングル“Tim McGraw”は2006年6月、16歳の時にリリース。大好きなフェイス・ヒルの夫であり、人気カントリー・シンガーであるティム・マッグロウの名を冠したシングルは、いきなり大ヒットとはならなかったが、全米TOP40入りを果たして、まずまずの成績だった。が、本格的な歴史に残る華々しいチャート記録は、その後に続いたシングル“Teardrops On My Guitar”(全米13位)や“Our Song”(全米16位)からスタートした。数々のヒット曲に釣られる形でファースト・アルバム『Taylor Swift』もじわじわとチャートを這い上がり、最高全米5位をマーク(カントリー・チャートでは首位を獲得)。ロングセラーを記録した。収録曲の大半をリズ・ローズというカントリー界のヴェテラン・ソングライターと共作。ジュエルやバンド・ペリーなどカントリー・ポップを多く手掛けるネイサン・チャップマンがプロデュースにあたった。2人との関係は、その後も長く続いていく。

 セカンド・アルバム『Fearless』が発表される2008年秋頃には、テイラー人気は爆発、もはやセンセーショナルなものとなっていた。前作の勢いが一向に衰えぬなか、発表された同作は、いきなり全米1位をマーク(その後も連続7作で1位を記録し、いまなお更新中だ)。2年間の成長ぶりは目覚しく、彼女が一人きりで書き上げたナンバーが大幅に増え、共同プロデューサーとしてのクレジットもゲット。18歳になっても、恋を夢見る少女らしいイメージは変わらず、現代版「ロミオとジュリエット」ともいえる“Love Story”、白馬に乗った王子様に思いを馳せる“White Horse”など、背伸びがちな世代にあっては、むしろ珍しく新鮮に映った。共感した同世代女子から熱狂的な支持を仰ぐこととなる。同作によりグラミー賞の最優秀アルバム部門を(当時)最年少の20歳で受賞。MTVヴィデオ・ミュージック・アワードで最優秀女性アーティスト・ヴィデオ賞の受賞スピーチ中に、カニエ・ウェストが突然ステージに上り、マイクを奪って〈ビヨンセこそがこの賞に相応しい〉と喚いた事件を覚えている人は多いだろう。その後、長年に渡って繰り広げられる両者の確執の始まりでもあった。