THIS MEANS WAR
2020年もUKのロック・バンドが熱い! 現行シーンの賑やかな勢いを証明するブリストルの最強ポスト・パンク・バンドがサード・アルバムを堂々の完成! 高い評価と商業的な成功を獲得した前作に続き、この快音がふたたび時代を撃ち抜くのか?
脳天に突き刺さる直情的なメッセージとサウンド!
世界的パンデミック、〈Black Lives Matter〉運動、格差社会などの社会問題に対し、シニカルかつ暴力的なまでの力強さで声をあげるブリストル発ポスト・パンクの雄、アイドルズが『Joy As An Act Of Resistance』(2018年)以来となるサード・アルバム『Ultra Mono』を発表した。
かつて同郷のポップ・グループはレゲエのグルーヴを採り入れたが、今作で彼らがアプローチしたのはヒップホップのフィーリング。ルーツでもあるディスチャージやダムドの要素はもちろん、USハードコア・シーンを牽引したデッド・ケネディーズのDNAも感じさせる直情的なメッセージとジャンクな演奏は、以前にも増して脳天に突き刺さってくる。ヤー・ヤー・ヤーズやスタークローラーらを手掛けてきたニック・ローネイとアトム・グリーンスパンがプロデュースを担当し、サヴェージズのジェニー・ベスが“Ne Touche Pas Moi”にゲスト参加するなどバックアップ体制も十分! 彼らの存在は時代が求める絶対的な必然性なのかも。 *柴田かずえ
磨かれながらも変わらないアグレッシヴな本質
初来日も果たした2018年のアルバム『Joy As An Act Of Resistance』が全英5位まで浮上し、マーキュリー・プライズへのノミネートやアイヴァー・ノヴェロでの最優秀アルバムという栄誉にも輝いたブリストル発の5人組、アイドルズ。パルチザンのレーベルメイトにあたるフォンテインズD.C.らと並ぶポスト・パンク・バンドの現在形として評価を高めている彼らだが、叙情的でクールな熱を放つフォンテインズと比べても彼らのアグレッシヴな表現はより直截的でダイナミックなものだ。前作リリース後のジョー・タルボット(ヴォーカル)はアナ・カルヴィの“Wish”やジェニー・ベス(サヴェージズ)の“How Could You”に客演し、バンドではメルト・ユアセルフ・ダウンの“It Is What It Is”をリミックス。先日はストリーツのミックステープで“None Of Us Are Getting Out Of This Life Alive”に参加したのも話題になっていたが、このたび届いた待望のサード・アルバム『Ultra Mono』はそうした広がりを反映しつつもバンドの本質をガッチリ見定めた内容に仕上がっている。
前作のエンジニア陣をそのままプロデュースに迎えた今作はパリでレコーディングされ、デンゼル・カリーとのタッグ作も記憶に新しいケニー・ビーツ(FKAツイッグス、エイッチ、kZm他)がアディショナル・プログラミングという形で全体のフィーリングを整えている。ジェニー・ベスがお返し参加したほか、ジーザス・リザードのデヴィッド・ヨウ(!)、ウォーレン・エリス(ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ)、ジェイミー・カラムも絡むなど、より大物然とした制作行程を経て磨き抜かれた仕上がりと言うこともできるが、さまざまな事象や社会問題をテーマに轟くサウンドの迫力はシンプルに最高と言うほかない。さらなるスケールアップが期待できそうな大満足の一枚! *轟ひろみ