セルフ・カヴァー作『EARPLAY ~REBIRTH 2~』とコンピレーション『角松敏生ワークス -GOOD DIGGER-』『角松敏生ワークス -GOAL DIGGER-』を発表し、12月23日(水)に映像作品『TOSHIKI KADOMATSU Performance “2020.08.12 SPECIAL GIG”』のリリースを控えるなど、コロナ禍の2020年もハードワーキンに活動し続ける角松敏生。2021年にはさらに、6月19日(土)に神奈川・横浜アリーナという大舞台でデビュー40周年ライブを行うことが発表された。

今回は、2020年10月にビルボードライブ東京で開催された公演〈TOSHIKI KADOMATSU Performance 2020 “Kadomatsu Plays The Guitar vol. 4” ~歌もうたうよ~〉のライブ・レポートをお届け。インスト中心のパワフルかつテクニカルな演奏から、音楽家・角松敏生の新たな顔が見えてくる。 *Mikiki編集部


 

昨今のシティ・ポップ再評価において、角松敏生への注目度の上昇は引き続き特筆すべきものがある。現在認知される〈シティ・ポップらしさ〉のメルクマールともいうべき初期楽曲から、ヒップホップ等も貪欲に取り込んだ革新的な作品群、年齢を重ねるごとに深みを増していく近年のアルバムに至るオリジナル作品はもちろん、今年7月にリリースされたプロデュース/ソングライティング・ワークをまとめたコンピレーションもスマッシュ・ヒットを記録するなど、世代を超えたファンからそのキャリア全体へ熱い視線が送られている。 

トータルなサウンド・クリエイターとしての評価に加え、ヴォーカリストとしての圧倒的な実力が言語の壁を超えた支持の理由になっているのは言うまでもないが、この間、海外リスナーを含めた新世代から注目されている彼の〈アナザー・サイド〉がある。それこそは、闊達きわまりないギター奏者/フュージョン・クリエイターとしての一面だ。

少し前までフュージョンというと、主にロック系のリスナーからときに〈軟派〉な音楽とされてきたのは隠しきれない事実だろう。しかし、このところのシティ・ポップ再評価を経由して、そうした〈常識〉を前提としない新しい聴き手によってフュージョン・ミュージックの再興してきたのだ(自身も超絶ベーシストであるサンダーキャットへの高い注目度をみよ)。

中でも、角松敏生が87年にリリースしたインストゥルメンタル・アルバム『SEA IS A LADY』は動画配信サイトでも目をみはる再生数を記録するなど、この数年で一気に世界的認知度を上昇させた作品といえる。鮮烈な演奏の魅力に加え、〈ただプレイする〉ことを超えた豊かなアレンジメント、そして現在におけるトラックメイク的センスにも通じるようなバランス感覚は、同時代のフュージョン作品と比しても無類の完成度を誇るものだ(2017年には本作をセルフ・リメイクした『SEA IS A LADY 2017』もリリースされており、そちらの内容も素晴らしい)。