2018年のセカンド・アルバム『Con Todo El Mundo』で世界的なブレイクを果たしたクルアンビン。2019年3月には待望の初来日公演を行い、7月の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉では最終日の〈FIELD OF HEAVEN〉で大トリを務めるなど、日本でも知名度だけでなくライブ・アクトとしての実力(チャーミングさも含め)が定着した。
昨年末には全米ツアーでの共演がきっかけとなり、同郷テキサスのR&Bシンガー、リオン・ブリッジズとの共演EP『Texas Sun』をデッド・オーシャンズ(Dead Oceans)からリリース。クルアンビンとしてもデッド・オーシャンズと契約を交わし、2年ぶりとなるサード・アルバム『Mordechai』へと至った。
誰にも予想できなかった新型コロナウイルスの蔓延により、アルバムはまさかのその渦中での発表となったわけだが、4月27日にまず配信リリースされた第1弾シングル“Time (You And I)”には、そんな時代の到来を彼らが予期していたかのようなポジティヴなメッセージ(〈それが人生〉)が、明確な歌詞としてベーシストのローラ・リーによって歌われていた。これまでもローラやギタリストのマーク・スピアーらがコーラスやセリフで声を添えることはあったものの、インストゥルメンタル・バンドであったクルアンビンとしての新生面を感じさせるリリースに心が躍った(自粛中でも)。
また、同時に発表されたミュージック・ビデオも、彼ららしいユーモアと他者への優しさが黒人の男女によって表現されたもので、大きな話題を呼んだ。
新作についてのこのインタビューは、5月中旬にローラとドラマーのドナルド“DJ”ジョンソンを迎えて行われた。リオン・ブリッジズとのEP制作、新作に歌詞を持ち込んだ経緯、バンドを囲む環境の変化に対する心境などを訊いている。インタビュー後にも、新作から“So We Won’t Forget”“Pelota”と相次いで音源とMVがリリースされているし、5月26日には忌まわしいジョージ・フロイド事件が起きてアメリカや世界中が〈Black Lives Matter〉で揺れる現況について訊きたかったというのも率直なところだ。
だが、そうした状況になる以前のインタビューではあるけれど、彼らの受け答えの自然さと、そのなかに見えるクルアンビンらしさへの信念は変わらずに伝わってくる。きっと彼ら自身もこれから、この『Mordechai』を理解していくことを楽しみにしているはず。クルアンビンはそういうバンドだ。