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希代のポップスターが時代と世代の変わるタイミングで踏み出した未知の可能性……より率直な自身の思いを自由に表現した『Wonder』の全貌がまもなく明かされる!

情熱的な変化の輝き

 22歳といえば大胆不敵で意欲満々、希望に満ち溢れ、未知なる可能性に闘志をメラメラと燃やしている――そんな年頃だろうか。ショーン・メンデスが、20代になって初となるアルバム『Wonder』で大きく変貌を遂げようとしている。これまでに発表した3枚のアルバムは、母国カナダをはじめアメリカなどのチャートで軒並み1位を獲得。もはや大スターと呼べる存在だが、今回はいっそう高みへと舞い上がりそうだ。前作までのティーン時代が、上昇気流に乗りつつも自身に与えられた才能を探り当てようとする旅だったとすれば、22歳になったいまの彼には、己の長所や特技、アドヴァンテージがはっきりと見えている。それらをフルに活用して、思いっきり実力を発揮すべきシーズンが到来した。ホップ、ステップからジャンプへと。ひとっ飛びに脱皮を遂げて、持てる力のすべてを音楽にぶつけて勝負しようというわけだ。

SHAWN MENDES 『Wonder』 Island/ユニバーサル(2020)

 すでに先行シングル“Wonder”で変化を感じ取っている人は多いだろう。地の底から突き上げるかのようなパワーや情熱、昂揚感。明らかにこれまでのシンガロング調とは異なったダイナミズムが渦巻いている。あれよあれよと広がりを見せ、ドラマティックに展開するサウンドスケープは、コールドプレイやイマジン・ドラゴンズといったロック・バンドのそれにも通じる訴求力を持っている。瞬く間に皆を取り込み翻弄してしまう。デビュー当初は、ギターを爪弾きながら真摯な歌を聴かせるシンガー・ソングライターといった印象だったのが、前回の来日公演(2019年10月の横浜アリーナ)ではすっかり成長して逞しくなった姿で驚かせた。自身のバンドを率いて、水を得た魚のように生き生きと、パワフルに歌い演奏する姿は、まさしくロックスターそのものだった。若かりし頃のブルース・スプリングスティーンを彷彿とさせるストレートな視線とヴァイタリティー。一挙一動が目を見張らせ、すべてがキラキラ眩しく輝いていた。

 その輝きは“Wonder”のMVからも十二分に伝わってくるはずだ。森の中を駆けずり回り、コレオグラフされたダンスを踊り、大洋に向かって絶叫する。白いランニングシャツの下から覗く上腕筋がしなやかに、ダイナミックに跳ねまくる。しかも、その躍動感や生命力は、サウンドと見事に繋がっている。力強くて、マスキュリンで、壮大で、そして少々ナルシスティックでも。そのハリー・スタイルズにも通じるアンドロジナスな美学や繊細さは、ポップスターにとって大きなプラスと言えるはず。そもそもナルシスティックだからこそ、常にショーン・メンデスという理想像を追い求めてきたのではないかという気がする。