トキメキと切なさをめいっぱい与えてくれる18歳。その歌声に、その瞳に、そのギターの音色に世界中が恋をした! ウソは言わない、彼ならきっと君を幸せにしてくれるはず。だって彼は……

 

第2のジャスティン・ビーバー

 SNSを通じて数多くのスターが誕生している現代。なかでもジャスティン・ビーバーはデビュー以前からそれらをうまく活用し、いまも彼が何か投稿するたびに世界が大騒ぎするほどのインフルエンサーぶりを発揮している。

 そのジャスティンが昨年〈彼の声を聴くと笑顔になる!〉と発信して話題になった人物こそ、本稿の主役であるショーン・メンデスだ。現在18歳のショーンもまた動画サイトをきっかけにメジャー契約。2015年のデビューEP『The Shawn Mendes EP』が全米5位、同年のファースト・アルバム『Handwritten』が全米1位を記録し、さらにTime誌の名物企画〈もっとも影響力のあるティーンエイジャー30人〉に3年連続で選ばれるなど、以前から注目されてきたシンガー・ソングライターではあるが、ジャスティンのつぶやき以降、北米以外の地域でも知名度が急上昇。〈第2のジャスティン〉との呼び声も高い。

 「〈第2のジャスティン〉と呼ばれるのも悪い気はしないよ。音楽性やキャラクターは真逆だと思うけど、同じカナダ出身の才能に溢れたミュージシャンだからね。彼と対等な位置で評価されるなんて凄く光栄だよ」。

『Handwritten』収録曲“Never Be Alone”
 

 ショーンの音楽を語る際にやはり欠かせないのが、ローティーンの頃から弾いているというギター。余計な装飾をせず、その響きを前面に出すことによって、オケだけでも喜怒哀楽が十分に伝わってくるのだ。

 「ギターは自分にとって手放せない楽器というか、スマホに並ぶ大切なツールなんだ。時間がある時にちょっと弾くだけでも、心が落ち着くしね」。

 そう語る彼に憧れのミュージシャンを尋ねてみたら、ジョン・メイヤーとの答えが返ってきた。言う間でもなく〈現代の3大ギタリスト〉のひとりである。

 「ギタリストとしてはもちろん、ジョンはソングライターとしても物凄く優れているし、歌詞も共感できるようなものが多いよね。また、聴いていてとても美しさを感じるんだ。まるでポエムのような世界だと思うよ。いまではギターをプレゼントしてもらえるほど彼と交流があるんだけど、人間としても素晴らしいし、たくさん刺激を受けている。僕の曲作りにジョンからの影響が強く表れていることは確かだね」。

SHAWN MENDES Illuminate Island/ユニバーサル(2016)

 昨年9月にリリースされるや、本国カナダやUSはもちろん、UKチャートでも初の1位に付け、このたび待望の日本盤化となるショーンのセカンド・アルバム『Illuminate』からも、ジョン・メイヤー作品に通じるオーガニックな風合いが感じられる。テイラー・スウィフトのツアー・サポートを含む多くのライヴも経験し、「パフォーマーとしてのいまの実力をしっかり発揮できた」と本人も満足気だ。

 「音楽性は前作と共通している部分も多いけど、着実に成長した自分がここにはあるんだ。それに今回は時間をかけて制作できたから、前よりもっと良い曲が揃っていると思うよ」。

 

悩みを分かち合いたい

 フィフス・ハーモニー仕事で知られるデイライトや、かつて自身もティーンの頃に黄色い声援を集めたギター男子の先輩格であるテディ・ガイガーなど、前作からの続投組も一部で残しつつ、今作ではほとんどの曲をジェイク・ゴスリングがプロデュース。オールディーズ調や爽やかなパワー・ポップなどをアクセントに、基本はオーソドックスなフォーク・ポップでまとめている。

 「ギターを弾きながら浮かんだフレーズを元に、曲を書いていくことが多いよ。それらをジェイクたちが素晴らしいものに仕上げてくれたんだ。一緒に仕事できて、とてもラッキーだったと思う」。

 プロダクションがシンプルだから、歌と言葉がくっきり浮かび上がってくるのだろう。“Treat You Better”では片思いの相手が恋人からひどい仕打ちを受けている様子に胸を痛め、“Honest”では逆に思いを寄せられてもそれに応えられないことへの申し訳なさを綴り……と、ショーンのリリックは一方通行の恋愛をテーマにしたものが多く、そこも人気の理由。主に同世代から大きな共感を集めているようだ。

 「僕の場合、特定の女の子に対して〈自分がそのパートナーになれたらいいのにな〉といった歌が多いよね。もちろん似たような体験も過去にあったけど、恋愛をテーマにすることでみんなと共通の悩みを分かち合えるから、そこが好きなんだ。恋愛に対する人の感情は普遍的で楽しいトピックだし、そういうのを表現していきたいんだよね」。

 たとえ自身の経験をベースにしていても、押し付けがましさは皆無。ストーリーテラーみたいにどこか客観的かつ冷静な印象の歌が多いのも、彼の特徴だと筆者は考えている(だから、どの年代の方もきっと感情移入しやすいはず)。しかし、そんななか本編のラストを飾る“Understand”だけは雰囲気が違う。ショーンの生き様が見えてくる気がして、その深みのある、言うなればセクシーな歌唱表現に、思わずハッとしたほど。

 「“Understand”では15歳から18歳になるまでの自分の考え方や感情の変化を綴ることができた。ようやく人生ってものを真剣に考えられるようになった自分をね」。  

 恋愛以外にも人生には思いもよらない出来事がたくさん待ち構えている。それを乗り越え、より良い道に進むための方法を10代なりの視点で模索したのが、この『Illuminate』なのではないだろうか。

 「どんなに暗い瞬間があったとしても、人は誰しも必ず〈光り輝くステージ〉に立てると信じている。その思いをタイトルに込めたんだ。この作品が多くの人に共感や勇気を与えられたら嬉しいな」。

ショーン・メンデスの作品。