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2. Rina Sawayama “LUCID”

天野「2位はリナ・サワヤマの“LUCID”。リナ・サワヤマのことはもはや説明不要かと思いますが、英ロンドンを拠点に活動している日本人アーティストです。今年リリースしたアルバム『SAWAYAMA』は世界的に高い評価を得ています。最近、マーキュリー賞の一件が話題になりましたよね。同賞はイギリス/アイルランド国籍を持つアーティストを対象としたUKの権威ある音楽賞ですが、彼女は日本国籍のためノミネートされなかったんです。多くのリスナーやミュージシャンが、その選考基準に疑問を呈しました」

田中「マーキュリー賞は来年以降、資格を見直すことも検討しているようです。つまり、そういった変化を促すくらいに彼女は影響力を持った存在なんですね。すごい。この“LUCID”は、12月4日(金)にリリースされる『SAWAYAMA』のデラックス・エディションに収録される新曲。ビッグ・ルーム・ハウス的なサウンドが気持ちいいダンス・ポップですね」

天野「『SAWAYAMA』は、R&Bからニュー・メタルっぽいラウドなサウンドまで多彩な音楽性が楽しいアルバムでした。一方この曲では、彼女の歌声の溌溂とした魅力が引き出していますね。プロデューサーは、レディ・ガガやジャスティン・ビーバーらのヒット曲で知られる売れっ子のブラッドポップ(BloodPop®)。嵐のシングル“Face Down: Rebornも彼が手掛けていました。また、メインストリームのみならず、ヴァンパイア・ウィークエンドやハイムといったインディー・バンドの作品にも関わっていますね」

田中「“LUCID”は、『SAWAYAMA』でも彼女と共作していたシンガー・ソングライターのローレン・アキリーナ(Lauren Aquilina)と共作したメロディーとブラッドホップのビートを組み合わせて作ったそう。実は、2018年には完成していた曲なんだとか。たしかに『SAWAYAMA』の楽曲と比べると、いい意味で先鋭的になりすぎず、ポップに振り切れた印象もあります。〈Lucid Dream=明晰夢〉の体験を綴った歌詞も、てらいなくロマンティックです」

天野「ただ、サワヤマの音楽ってけっこう大味で、垢抜けていないところがありますね。だから、〈音楽的にもっと洗練されてほしいな……〉って思うんです。この曲についても同じことを思いました。『SAWAYAMA: Deluxe Edition』にはアルバム収録曲のライブ録音やアコースティック・ヴァージョンのほか、レーベル・メイトであるThe 1975“Love It If We Made It”のカヴァーも収録されるのだとか。さらに、同日にはドリーム・ワイフや〈End of the World〉ことSEKAI NO OWARIによるリミックスを収録したEPもリリースされます。どちらも楽しみですね」