City Lights ©Roy Export S.A.S

2021年3月17日(水)に東京・錦糸町すみだトリフォニーホールで開催されるシネマ・コンサート〈新日本フィルの生オケ・シネマ vol.5 チャップリン《街の灯》〉。日本屈指の優れた音響を誇る会場で、新日本フィルハーモニー交響楽団の生演奏と最新技術でよみがえった名作映画を堪能できるプレミアムな企画だ。

今回は、チャップリンの最高傑作との呼び声が高い「街の灯」(1931年)が上映・演奏される。そこで、喜劇王の執念が生んだ「街の灯」の素晴らしさやイベントの醍醐味、今回使用されるスコアなどについて、本企画の大ファンであるライター・桑原シローに綴ってもらった。 *Mikiki編集部


 

City Lights ©Roy Export S.A.S

チャップリン映画をよみがえらせる名企画が復活!

映画上映とフル・オーケストラの生演奏を融合させたシネマ・コンサートは数あれど、〈新日本フィルの生オケ・シネマ〉シリーズほど純粋に映画的喜びを与えてくれる催しはなかなかないと思う。なんたって主役を担うのが喜劇王のチャーリー・チャップリンなのだから。誰も異存はないだろう。

日本屈指の音響を誇る〈すみだトリフォニーホール〉において開かれる、同館を本拠地とする新日本フィルハーモニー交響楽団の生演奏と映画上映を合体させた本イベントは、1920年代から30年代にかけて制作されたチャップリンの傑作サイレント・ムーヴィーを現代によみがえらせる名企画だ。年に一度大いに笑って大いに泣くチャップリン祭りとして常連客も増えているが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で残念ながら開催が見送られ、今回の公演に振り替えられたのだった。いろんなことが物足りなく感じてならない1年だったけれど、生オケ・シネマに参加できなかったことが理由のひとつになっていると思う人も少なくないのでは?と想像する。

 

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チャップリンがすべてを手掛けた力作にして人気作「街の灯」

このたび1年間のブランクを空けて開催される第5弾に選ばれた作品は、1931年に公開(日本初上映は昭和9年1月)された「街の灯」。2017年の〈Vol.2〉に続いて、本イベントへの登場は今回が2度目となる。

身なりはみすぼらしいけれど優しい心を持つ放浪紳士チャーリーが、ある日目の見えない貧しい花売り娘(ヴァージニア・チェリル)に恋をする。チャーリーはなんとかして彼女の病気を治したいと決意し、手術費用を工面するため奮闘努力するのだが……。

そんなあらすじを持つこのコメディー・ラヴ・ロマンス作品は、生涯80数本の映画を作ったチャップリンのフィルモグラフィーのなかでも人気と知名度ではトップクラスを誇るもの。制作、監督、脚本、編集、主演とあらゆる面でチャップリンが指揮を執り、シナリオ執筆に1年、撮影と編集に2年という月日を費やした力作であり、初めてみずから音楽を手がけ、作曲家としての才能を世に知らしめた1本としても知られる(彼は少年時代からヴァイオリンやチェロ演奏を得意とする音楽愛好家であった)。

「街の灯」予告編