AKB48の〈しぶとかわいい〉最年長が節目のアニヴァーサリー・イヤーに一大決心!? 渡辺淳之介によるWACKサウンドのソロ・シングルは新たな境地への第一歩となる!

 AKB48の現役メンバーとして圧倒的な世間的知名度を誇り、個人でもTVやラジオ、YouTubeへ活躍の場を広げてタレント性の高さを発揮している柏木由紀。ソロ歌手としても2013年に“ショートケーキ”でデビューして以降、多忙なグループ活動の傍らで定期的にソロ公演やツアーを開催してきました。そんな彼女がレーベル移籍を経て7年5か月ぶりのソロ・シングル“CAN YOU WALK WITH ME??”を完成させたわけですが、その楽曲プロデュースを務めたのは、BiSやBiSHらを手掛けるWACKの渡辺淳之介。邪道を自認してきたWACKのマナーと、15年近くに渡って王道の美意識を貫く柏木の邂逅は、果たしてどのような成果をもたらしたのでしょうか?

柏木由紀 『CAN YOU WALK WITH ME??』 キング(2021)

 

羨ましさもありました

――まずは渡辺さんを今回プロデューサーに迎えた経緯から教えてください。

「ラジオ番組がきっかけですね。本当に初めましての状態で、渡辺さんと2人で1時間生放送で対談したなかで、秋元康さんがその放送を聴いていて、生放送中に〈柏木の曲を渡辺さんにお願いできませんか〉って連絡がきて、そこでは〈え、そんなことあります?〉みたいにふわっと終わったんですけど、実際にお二人と話す機会を設けて、本当にやるっていう形になりました」

――秋元康さんプロデュースの「TOKYO SPEAKEASY」という番組ですね。

「そうです。先に出演が決まっていた渡辺さんが、対談相手にたまたま私を指名してくれて。だから秋元さんがそこまで考えて2人を選んだってわけじゃなくって」

――そういう順序だったんですね。渡辺さんの活動やWACKのアイドルについて、いつ頃からご存知でしたか?

「ん~、いつから知ってたんだろう? 最初は尖ったことっていうか、変わったことをしているという印象があって、存在や曲はけっこう前から知ってはいたんですけど、本当にちゃんと観たのは、ここ1~2年だと思います。普通にTVとか観てて『アメトーーク!』とか、音楽番組以外にBiSHさんが出演されてるのを普通に目にするようになったので。豆柴の大群さんも番組で観てたりしました」

――楽曲についての印象はありましたか?

「いや、めっちゃ好きでした。普通にリスナーとして聴き心地が良いし、ライヴでも盛り上がるし、でもちゃんとバラードみたいな曲もあったりして、〈あっ、アイドルでこんなに音楽の幅あったらいいな〉って。リスナーとしては純粋に曲が良いなと思ったし、同じアイドル目線で言うと〈こういう曲が欲しいな〉みたいな羨ましさもちょっとありました。あとは何かこの、〈意志のある感じ〉が好きだと思ったんですよね、WACKの皆さんの。大変なことをやってるけど、それが全部自分たちの伝えたいことっていうふうに見えるのが、アイドルとして理想だなって私は思っていて」

――それはAKB48もそうじゃないですか?

「え~、でも伝わってない気がするんですよね。AKB48が歌番組で歌ってて、〈元気もらえるな〉とか〈明るくて可愛いな〉ぐらいまではあったとしても、〈この人たち、死ぬ気でこれを伝えようとしてる!〉みたいなのは。WACKはそういうのが乗せやすい曲も多いし、その意味ではAKB48とはまた違う形のアイドルとして、凄く良いなと思ってました」

――そもそもCDとしては7年5か月ぶりのソロ・シングルですが、その間に他グループとの兼任も忙しくされてた一方、もっとソロもやりたいという思いはなかったですか?

「コンサートはコンスタントに続けたいなっていうのはずっと思っていて。7年前はソロ・デビューできて嬉しいけど、どういう状況なのかよくわかってなかったんですよね。で、その間にいろいろ経験して、〈いまソロで出す需要はないな〉っていうのを、ひしひしと感じたここ数年間だったんですよ。もちろんAKB48だけで十分に充実してたので、ソロも出せるなら出したいけど〈絶対出したいです〉って言えるまでの自信がないというか。だから、ソロのコンサートとか、たまに歌番組のカヴァー企画とかに呼んでいただく時とかに歌のイメージをどうにか残して、いつかタイミングが合って曲も出せたらいいなっていうのは、ずっとありましたね。ファンの人にも凄く言われてましたけど、〈いや、いまは無理だよ〉って普通に言ってました(笑)」

――以前も〈ボーカル選抜〉に選ばれていたり、ソロのコンサートも定期的に開催されてますけど、柏木さんがそこまで歌が好きで歌にこだわっていることを知らない人も多いかもしれませんね。

「AKB48に歌手のイメージはないと思うので、外側まではなかなか届かないですよね」

――なので、久しぶりのシングルを、また違うリスナー層の興味を惹く方法で出されるっていうのは、秋元さんの閃きなんだろうなと思いました。

「あ~、確かにそうですね。私がただ出すだけじゃ届かない人たちにも確実に届くと思うので、ありがたいですね」

――最初にラジオの共演があって、その後はどのように進んでいったんでしょう。

「ラジオは5月だったんですけど、しばらくして……たぶん6、7月ぐらいに秋元さんから〈渡辺さんと一緒にご飯食べましょう〉みたいなお話があって。で、お二人もそこが初対面だったんですよ。渡辺さんも〈秋元さんに値踏みされるんじゃないか?〉〈ラジオ聴いただけでプロデュースを頼まれるわけがない〉って思ってたみたいで。そしたら秋元さんは〈どんな曲が良いかな?〉みたいに、もうやる前提で話しはじめて。私たちは〈あれ、決定事項?〉みたいな感じで、もうそこから〈作詞も任せます〉とか進んだ話になって、その場でやることを再確認した感じでした」

――具体的な制作はどんな感じで始まったんでしょう。

「LINEでやりとりしたり、すっごい長いアンケートみたいなものを渡辺さんが作って、好きな映画とか憧れてる芸能人とかを理由と一緒に答えるみたいなのをやりました」

――曲作りのためのリサーチみたいな。実際にそのアンケートは活かされてますか?

「はい。リサーチ以上に、〈この情報はどこで仕入れたんだろう?〉っていうぐらい、答えてないことまでピッタシ合ってるというか。渡辺さんは昔のインタヴューとかも片っ端から読んでくださったそうで。だから将来の夢や目標を話したことも盛り込まれていたり、語尾の感じとか、伝え方とか、言葉のチョイスまですっごいフィットするのでビックリしました。〈プロデューサーなんだ〉って思いました(笑)。ホントに凄いです」

――そうやって出来上がった3曲は、いずれも渡辺さんが作詞、SCRAMBLESの松隈ケンタさんが作曲されています。

「他にも何曲か候補があって、私も聴いたんですけど、どの曲も選べないぐらいめちゃくちゃ良かったので、渡辺さん側が推す3曲になりました」