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インタビュー

Nulbarich『NEW GRAVITY』コロナ禍の重苦しい重力下でポジティヴに音を鳴らし続けるための挑戦を語る

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変わり続けること

 そのように自身のスタンスと改めて向き合った〈Disc-1〉がある一方で、他者と触れ合うことでまた別種の新味を獲得したのが〈Disc-2〉だ。

 「さいたまスーパーアリーナを成功させることができて、やっと他のアーティストをデートに誘う勇気が生まれた、みたいな(笑)。これまでは〈こんな俺じゃぜったい落とせない、あの子〉みたいな感覚で、自分たちの音楽の力を自覚してなかったんですよ。でも、活動を3年続けて、アルバムを3枚出してさいたままで行けたら、〈どうもNulbarichです〉って胸張ってもいいんじゃない?って」。

 そうして〈デートに誘った〉面々と完成させた一枚は、n-buna(ヨルシカ)のリミックスによるVaundyとの“ASH”で幕開け。続く88ライジングからのリリースでも知られるタイのプム・ヴィプリットを迎えた80s風シンセ・ポップ“A New Day”、BASIとのニュー・ジャック・スウィング“Together”も新鮮だ。

 「“A New Day”と“Together”の流れはほぼネタですよね。最高だなと思います。“A New Day”は完全に80sをイメージしていて。プムは80sのカッコ良さを今の新しいものとして消化できるから、振り切ってできますよね。恥ずかしさがないので。むしろニュー・スクールっていうか。イントロの〈ウソだろ?〉って思うようなシンセの響きも、二人でテンション上がって〈良いねえ〉って(笑)。“Together”も最初、自分でビートを作ってて笑っちゃいましたけどね、ベタな感じなので(笑)。以前オンライン・ライヴでやったときは割とアコースティックな感じだったんですけど、ビートはちょっと跳ねてたので、それをインスピレーションに改めてビートを打ち込んでたら、この跳ね感は絶対にニュー・ジャック・スウィングのほうがいいなあと思って。スネアを〈スポーン〉ってやつに変えたら〈ああ、近くなってきた!〉ってなって、このままいっていいのかどうか迷いながらオーケストラ・ヒットを当ててみたら〈フゥー! いっちゃえ!〉みたいな(笑)」。

 そして、実は10年来の知り合いであるAKLOと「僕はもともとトラックメイカーなので憧れの人」だというBACHLOGICによる“Sweet and Sour (BACHLOGIC Remix) feat. AKLO”、リリックのフィーリングを含めて好相性を示した唾奇との“It's Who We Are (CraftBeatz Remix) feat. 唾奇”といった、JQのルーツであるヒップホップ色の濃いリミックスも良好。加えて、昔からファンだったというRHYMESTERのMummy-Dをフィーチャーした“Be Alright”は、「リズミカルにいくDさんも好きなんですけど、緩いトーンで核心を突いて人間性に迫るリリックにいつも喰らっていたので、そこがいちばん出る楽曲」を狙ったとのことで、30年選手だからこそのキャリアの重みと飄々とした生き様を背中で見せつける、Mummy-Dらしさを引き出した楽曲になっている。

 「〈僕はサビを歌うだけで、あとはDさんにしか言えないことをリリックにしてください〉ってお願いしたら、普通に3ヴァース書いてきてくれて。過去の自分、その後の自分、そして今リアルタイムにスタジオから帰るタイミングの自分っていう時系列で、しかもDさんらしい、いわゆる天丼じゃないですけど、1ヴァース目の入りと3ヴァース目の入りの文字だけを変えて同じリリックにしているところも超グッとくる曲だなっていう。というか、ぶっちゃけこのバランスはもうMummy-Dの曲ですよねっていう(笑)。

 プムとVaundyの曲、あとBASIさんに関しては割と半々ですけど、リミックスと“Be Alright”に関しては、もうメインは俺じゃないんですよね。でも、その人の2ヴァース、3ヴァースを聴きたかったので。しかも“Sweet and Sour”と“It's Who We Are”は過去の曲だし、僕のヴァースを僕自身がもう一回出すのは違うかなと思って、リミックスというよりはサンプリングとして捉えて、2ヴァースをキックしてほしいとお願いして。それって、なかなかやってくれないことなんじゃないかなと」。

 『NEW GRAVITY』というタイトルがコロナ禍の重苦しい状況を映す言葉だとするなら、Nulbarichが本作で見せる変化は、その新しい重力下でポジティヴに音楽を鳴らし続けるための挑戦なのかもしれない。そして、ますます風通し良く自分のペースで歩く彼らのスタンスこそが、今求められているものなのだと思う。

 「僕らはデビュー当時から〈Nulbarichとは?〉みたいなところをジャンル感も含めて放り投げてきたし、変わり続けることが成長だと思っているので。ただ、人のことを悪く言うような曲はやめようと思ってます。とりあえずそれ以外は、思ったことを書いていこうっていう。“Mumble Cast #000”のリリックに書いてあるように、〈それが君の望み通りのものかは保証適応外〉ですけどね(笑)」。

Nulbarichの作品。
左から、2016年作『Guess Who?』(RAINBOW)、2018年作『H.O.T』、2019年作『Blank Envelope』『2ND GALAXY』(すべてビクター)

 

『NEW GRAVITY』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ヨルシカの2020年作『盗作』(ユニバーサル)、Vaundyの2020年作『strobo』(SDR)、プム・ヴィブリットの2019年作『Bangkok Balter Club』(White Noise/インパートメント)、BASIの2019年作『切愛』(BASIC MUSIC)、AKLOの2019年作『REGULAR』(Studio A)、唾奇×Sweet Williamの2017年作『Jasmine』(Manhattan/LEXINGTON)、CraftBeatzことTOCCHIの2019年作『Swings』(FINAL WEAPON COMPANY)、4月28日にリリースされるRHYMESTERのライヴ盤『MTV Unplugged: RHYMESTER』(ビクター)

 

JQが参加した近作を紹介。
左から、リミックスで参加したOmoinotakeの2020年のEP『Long for』(NEON/サンバフリー)、楽曲提供したDISH//の2021年作『X』(ソニー)