ジェラルド・ラヴ脱退を経て、TFCは新しいチャプターへ

――さて、前作『Here』(2016年)を5年前に発表してから色んなことがありましたよね。まず旧作のリイシューがあって、脱退したメンバーも交えたアルバム再現コンサートがあり……と回顧的プロジェクトが続き、その後メンバー交代を経て新たなスタートを切りました。バンド史上、どんなフェーズだったと言えるんでしょう?

ノーマン「そうだな。僕らとしては常に未来を向いていたいんだけど、昔のアルバムが廃盤になって久しかったから、再発できたのはうれしかったね。

そして再発する以上はツアーを行なって、プロモーションしなくちゃいけない。そこで英国各地で3公演ずつ、クリエイション時代のアルバムを全編再現するショウを企画したんだ。レコーディングに参加したメンバーを集めて。つまり、初期の作品に大きな貢献をしたブレンダン・オヘアと、その後の作品に参加したポール・クインがドラムを叩いてくれたのさ。

で、あれがジェラルドとの最後のツアーにもなった。当初からそうなると分かっていたから、ひとつの時代に幕を引くという意味で、いい企画だったと思う。

でもツアーが終わった瞬間、とにかく前に進みたかった。メンバー交代についてもすごくラッキーだったと思うよ。デイヴは本来ベーシストだからね。そもそもバンドって変化し続けるものだし、そんな中で、常にポジティヴな面に目を向けている必要がある。だから僕らは今回のメンバー交代を、フレッシュなことに挑むチャンスと見做した。これまでもティーンエイジ・ファンクラブの歴史には様々なチャプターがあったし、今また新しいチャプターに突入して、すごく楽しんでいるよ」

※編集部注 2018年、『Bandwagonesque』(91年)、『Thirteen』(93年)、『Grand Prix』(95年)、『Songs From Northern Britain』(97年)、『Howdy!』(2000年)をリマスタリングして、180gの重量盤LP+7インチ・シングルとしてリイシュー。同年、これらの作品の楽曲を演奏するツアー〈Songs From Teenage Fanclub - The Creation Records Years〉を行なった

2018年のリイシュー・プロジェクトのトレイラー

レイモンド「そうだね。ジェラルドがバンドを脱退したいと告げたのが3年くらい前だったかな。それから半年ほど彼と活動を続けて、アルバム再現ライブがあったわけだけど、ポールやブレンダンも交えてこれまでの歩みを振り返って、みんなでこの過渡的な時期を過ごすことができたのはうれしかったよ」

 

新メンバーとの実り豊かなコラボ

――エイロスはほかにも色んなプロジェクトを抱えていますが、バンドに誘った時、すぐにオーケーしてくれたんですか?

レイモンド「ノーマンがまず電話で話したんだったね」

ノーマン「ああ。〈エイロス? 元気?〉〈うん、元気だけど〉〈でさ、これから何本がライブがあって、良かったらキーボードを弾いて歌ってもらえないかな〉〈おー、いいね!〉っていうノリで話が進んだ。長年の友人だし(ノーマンとエイロスはジョニー(Jonny)というユニットでコラボしている)、いいヤツだし、ミュージシャンとしても極めて有能だし、彼は常に動いていたいタイプなんだ。そして『Endless Arcade』に大きく貢献してくれたよ。

曲作りは基本的に僕とレイモンドが担当しているけど、みんなに細かく指示を与えたわけじゃないんだ。特に今回は、まず僕とレイモンドがギターで曲を聴かせて、あとは各自、それぞれのパーソナリティーを反映させながら自分のパートを練っていった。

エイロスはユニークなサウンドをプラスしてくれたし、ヴォーカルも素晴らしい。言ってみれば家族の一員みたいな存在で、彼がいることが自然に思えて、すぐに息が合ったよ」

『Endless Arcade』収録曲“I’m More Inclined”

レイモンド「ライブ・パフォーマンスでの彼の集中力と熱さは半端じゃない。思わず見入ってしまうこともあるし、歌声にも圧倒される。クールなんだけど、中途半端なことはやらない。真摯で、常に全力で取り組む。そういう人とコラボするとすごくインスパイアされるよ。

デイヴも素晴らしくて、ミュージシャンとしての能力に関しては誰よりも抜きん出ているんじゃないかな」