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サンダーキャットの軽いノリ

――今作『Reflection Overdrive』はどんなふうに制作を進めていったんでしょうか?

三宅「アルバムの2曲目“Phantom Gizmoがわりと昔からあった曲で、アルバムの起点になっています。この曲は以前よりもフューチャーファンク的でガシャガシャしたしたものがやりたくて作り始めたんです。

『Reflection Overdrive』収録曲“Phantom Gizmo”
 

その後ジャネット・ジャクソンとかガイみたいな、ニュー・ジャック・スウィングのノリに憧れる時期があって、それをやってみたくて作ったのがEPの表題曲で今回のアルバムにも収録した“Ecco Funk”」

――“Ecco Funk”はサンダーキャット(Thundercat)がベースを弾いていることでも話題になりましたよね。

三宅「2016年にカナダのモントリオールで開催された〈Red Bull Music Academy〉に参加したときに、サンダーキャットが僕らのライブを観てくれて、とても気に入ってくれたんです。で、〈ベースを弾きたいから作りかけのものあれば渡してほしい〉と言われて“Ecco Funk”を聴かせました」

『Reflection Overdrive』収録曲“Ecco Funk”
 

――サンダーキャット、そんなライトなノリでベースを弾いてくれるんですね。好感度高いなあ(笑)。

三宅「(笑)。彼は“Phantom Gizmo”も弾いてくれたんです。2曲とも当然素晴らしいプレイなんだけど、今まで偽物感がある音楽を作っていたのに、急に超絶に上手い生のベースが入ってきて〈どうしよう……〉って思っているうちに何年か経っちゃった。やりとりはその後もしていたんですけどね。でも結局、“Phantom Gizmo”のベースはぜんぶMIDIに置き換えてしまいました……(笑)」

――なんと大胆な。

三宅「“Ecco Funk”に関しては、さすがに彼の生ベースも活かしてますけど」

 

YMOやオメガトライブ……『Reflection Overdrive』の歌謡曲っぽさ

――今回のアルバムには様々な海外アーティストが参加されていますが、どんな繋がりなんでしょう?

三宅「みんな〈Red Bull Music Academy〉で友達になった人たちですね。かなり長い期間同じ宿に泊まって一緒の時間を過ごすことになるので、自然と仲良くなっていって。ヴォーカルで参加してもらったマティアス・アグアーヨ(Matias Aguayo)とフリアン・マヨルガ(Julián Mayorga)とは、今も一緒に曲を作っています。フリアンは声が綺麗で、優しい声で“TV Fuzz”を歌ってくれたんですけど、結果的に全編オートチューンをかけてしまった(笑)」

『Reflection Overdrive』収録曲“TV Fuzz”
 

――マティアスが参加した“Kimi Wa Monster”も彼のカタコトの日本語ヴォーカルが不思議な魅力になっています。MVもすごくユーモラス。

「(笑)。本人が日本語で歌いたいと言ってくれたんですよ」

『Reflection Overdrive』収録曲“Kimi Wa Monster”
 

――ヴォーカルでいうと、今回は数曲で三宅さんも歌声を披露していますね。特に一曲目の“Disco Na Koi”では、めちゃくちゃ声が高橋幸宏に似ていてびっくりしました。

三宅「いや〜、あんまり寄せるのもどうかと思いつつも……(笑)。最近ずっとYouTubeで昔の歌番組を観ているんです。そのうちに、自分で歌ってみるのもアリかもな、と」

――この曲は、曲調も含めて〈ザ・YMO〉な感じ。やっぱり彼らからの影響は大きいんでしょうか?

丸山「好きですね。昔の私は生楽器主義な感じでしたけど、CRYSTALに入ってからよく聴くようになりました」

三宅「僕はちょっとひねくれていてあまり聴いてこなかったんです。CRYSTALでいろいろな曲をやる中で、別にYMOを狙ったものじゃなくても電子音を使っているという理由で〈YMOっぽいね〉と言われる時期があって。だから、あえてYMOを聴くことは避けていた(笑)。けど、そのうちにフラットに聴けるようになってきて、歌謡曲的な観点からアプローチしてみるのも面白いかなと思ったんです。それで、“Disco na Koi”では振り切ってYMOっぽくしてみました」

『Reflection Overdrive』収録曲“Disco Na Koi”
 

――今作の資料には、YMOに加えてオメガトライブの名前も影響源として載っていて、確かに彼らの作品と通じる要素を感じました。これもまた〈歌謡曲っぽさ〉ですよね。

三宅「まさにそうですね」

丸山「オメガトライブはこの何年かでハマったんですよ。やっぱりカルロス・トシキ時代(86~91年)が好きですね」

※正式名称は1986オメガトライブ、のちにカルロス・トシキ&オメガトライブへと改名
 

――80年代後半にかけてオケのエレクトロニック色も強くなってきますしね。

三宅「日本語の発音が少しあやしい感じもとても魅力的ですよね」

丸山「ジャケットやロゴまわりのヴィジュアルもいい。カジキマグロをこういうふうに使うんだ、とか(笑)」

1986オメガトライブ 『Navigator』 VAP(1986)

――歌謡曲っぽさでいうと、歌詞からもそういった要素を強く感じました。特に、“Northern Taurids”と“Refraction Overdrive”。この2曲の作詞クレジットにある〈Shinya Sato〉さんというのは……?

三宅「彼も元々CRYSTALのメンバーだったんです。映像制作をやっていくために脱退したんですけど、ずっと僕の家の裏に住んでいたこともあって僕らのMVに関わってくれたり、ずっと交流は続いているんです。彼も80年代の林哲司周辺の音楽が大好きだったので、歌詞を書いてみてくれない?と相談したんです」

――当時の歌詞の雰囲気が本当によく出ていますよね。あの時代の情景が目に浮かぶような。

三宅「そう。でも、結局中身はからっぽみたいな感じがいい(笑)」

丸山「微妙なところを突いてくれている感じですね」

『Reflection Overdrive』収録曲“Refraction Overdrive”