私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

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(左から)延本文音(ベース)、吉田卓史(ギター)、倉品翔(ヴォーカル/ギター/キーボード)、つのけん(ドラムス)

GOOD BYE APRIL 

2011年東京で結成された〈ネオ・ニューミュージック・バンド〉。郷愁を感じさせる楽曲と、ワン&オンリーといわれる倉品翔のボーカル。また倉品と延本によるそれぞれの個性を持った歌詞、確かなバンド・アンサンブルと飾らないMCで魅せるライブも魅力。ニューミュージック、とりわけチューリップ、大瀧詠一や小田和正などの古き良きポップスをも血肉にした、世代も時代も問わないエヴァーグリーンなそのグッド・ミュージックは、幅広い支持を獲得しつつある。近年では、演劇集団キャラメルボックスでの舞台音楽の全曲担当や、JFN系列ラジオ番組「OH! HAPPY MORNING」への楽曲起用、その他楽曲提供、演奏サポートなど、活動の幅を大きく広げている。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

倉品翔(ヴォーカル/ギター/キーボード)が選ぶ1曲
杉山清貴&オメガトライブ “Dear Breeze”(85年作『ANOTHER SUMMER』収録)

風を感じる曲が好きです。どこかへ出かけることが極端に少なくなった去年、風や風景が曲から見えてくると、とても癒されました。自分もそういう曲をもっとつくりたいなと思いました。また、コロナ禍の影響かわかりませんが、去年から静かな曲を聴くことが増えました。無意識に落ち着いたリラックスしたムードを体が欲していたのかもしれません。海へ行かなくても、目を閉じて再生するだけで、夏の海が見える。風を感じる。そんな1曲が“Dear Breeze”です。今年の夏はもっと海を見に行きたいです。

 

延本文音(ベース)が選ぶ1曲
伊藤銀次 “雨のステラ”(2007年作『BABY BLUE』収録)

コロナが流行して、ライブ等が続々中止に。もともと自宅が好きで滅多に出かけない私にとっては、ライブが中止になってしまった事は大きな変化でしたがそれ以外は特に何の変化も無いと思っていました。しかし、お花見、夏祭り等、私が普段行かないイベントが先々まで軒並み中止になってゆく。そして、日は過ぎても、季節の変化を感じなくなっていることに気づきました。私が参加しなくても、参加している人達を見たりする事も季節の風物詩と捉えていたようです。

併せてマスク生活。季節の変わり目の匂いを嗅ぐ機会がぐっと減りました。そんな中、4月の緊急事態宣言の後訪れた最初の季節である、私が一番大好きな季節〈梅雨〉。楽しみだったのに、ただ時が過ぎるのを待つかのような、どこかよそよそしい時の過ぎ方。まだ未熟な夏の気温と、雨が煙立つ大好きな季節を感じたくて、2020年の梅雨はこの曲ばかり聴いていました。

 

つのけん(ドラムス)が選ぶ1曲
The 1975 “Nothing Revealed / Everything Denied”(2020年作『Notes On A Conditional Form』収録)

コロナというものに直面した時。みんなが不安を感じていく中、僕らは勇気や希望、楽しさを届けて少しでも気持ちを軽くしてあげれる側だと思ったんです。でも、それって自分が満たされてなければその楽しさは伝わらないと感じたので〈自分を最大限に満たす〉という事を徹底的に行いました。

特に自宅での過ごし方を意識して、新しいルーム・フレグランスで香りを楽しんだり、模様替えして気持ちを入れ替えたり。その結果、充実した時間を過ごせることができたのですが、更に色を加えくれたのがこの曲。落ち着いた雰囲気と胸にスッと入ってくる心地よいリズム。心を満たしてくれる大好きな1曲です。

 

吉田卓史(ギター)が選ぶ1曲
宇多田ヒカル “誰かの願いが叶うころ”(2006年作『ULTRA BLUE』収録)

普段から出不精、連絡もあまり取らない性格でコロナが蔓延して人と会うことがさらに無くなったとき、どこか気持ちが楽になってました。それと同時に自分が本当に必要としている人、必要としている居場所はどこなのか自然と考えるように。近い考えをもって話せる人はかなり少なかったんですが、それが物凄く嬉しかったんです。縁があるそういう人のことを大切に想って、悲しいこととか起きんかったらええな、とか勝手に願ってます(笑)。

ラヴソングではあるけどももっと別の意味で、人間関係を考える上で自分にとって昔から大切な一曲。コロナ禍の中で心を落ち着かせたいときによく聴いていました。

 


RELEASE INFORMATION

セーラー服と機関銃/feel my hush
​リリース日:2021年8月28日(土)
フォーマット:7インチ・シングル
価格:2,200円(税込)
レーベル:DOBEATU
品番:DBEP16
詳細:https://onvinyl.jp/item/dbep16/

TRACKLIST
A面:セーラー服と機関銃
B面:feel my hush