記録破りのパワフルでリリカルな18歳が早くもファースト・アルバムを完成! 2021年を象徴する話題のニューカマーはどのようにして誕生したのか?

テイラー・スウィフトの子

 2012年に発表されたテイラー・スウィフトの名盤『Red』からは、“We Are Never Ever Getting Back Together”“I Know You Were Trouble”“22”など次々と大ヒット曲が生み落とされた。その多くがジェイク・ギレンホールやハリー・スタイルズといった彼女の元カレを題材にしていたことでも大いに話題を撒いたが、そんなテイラーの私小説風アルバムを熱心に聴き込んでいたのが本稿の主役、10代はじめのオリヴィア・ロドリゴだった。クリスマス・プレゼントでレコード・プレイヤーを贈られると、アナログ盤の『Red』をゲット。来る日も来る日も学校から帰るや否や、そのアルバムをずっと聴いていたという。そんな彼女もいまや18歳。“Drivers License”でセンセーショナルにデビューを飾り、ファースト・アルバム『SOUR』で世界の注目を一身に浴びている。テイラー・スウィフトの再来と囁かれ、テイラーからは〈Baby〉(=娘)と呼ばれる彼女。テイラーが撒いた種は、すくすくと育っていたというわけだ。

OLIVIA RODRIGO 『SOUR』 Interscope/ユニバーサル(2021)

 カリフォルニアで生まれたオリヴィアは、母親がドイツとアイルランド系、父親がフィリピン系。アジア系アメリカ人というので、日本人にとってはどこか親しみやすいルックスなのだろう。幼い頃から歌と演技のレッスンに励み、10代はじめにはギターやピアノを操り作詞作曲を始めていた。芸能界入りはモデルや女優業などだが、13歳から出演したディズニー・チャンネルのコメディ・シリーズ「やりすぎ配信! ビザードバーク」ではメイン・キャストを務めて、歌を披露。16歳の時にディズニープラスのドラマシリーズ「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」の主役に抜擢され、そのニニ役でブレイクを果たしている。シングル“Drivers License”で彼女を知った人は多いかもしれないが、ディズニー・ファンの中には、きっとその頃から彼女に注目していた人もいるだろう。オリジナル版は2006年からディズニー・チャンネルで放送されたTVムーヴィーの「ハイスクール・ミュージカル」で、そこからザック・エフロンやヴァネッサ・ハジェンスなどのスターが誕生した。今回のリメイク版からも、オリヴィアや共演者のジョシュア・バセットらがスターとなり、そして主演の2人に恋の噂があるのも、ザック&ヴァネッサと同様だった。

 さて、その「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」でのオリヴィアは、演技のみならず、歌でも高い評価を獲得してきた。番組中ではオリジナル版からのカヴァー曲のみならず、新たに書き下ろされた新曲も多く歌われている。そのなかには、ジョシュ・カンビーが書き下ろした“Wondering”や“Out Of The Old”、彼女とジョシュアが共演した“Just For A Moment”などもあったが、ひときわ話題を呼んだのが、オリヴィア自身が書き下ろして歌った“All I Want”というナンバーだった(いずれもサントラ『High School Musical: The Musical: The Series』に収録)。わずか3日間で書き上げられたというバラードは、当時16歳だった彼女のソングライターとしてのデビュー曲でもあり、じわじわと人気を獲得。オリジナルMVなども作られ、アカペラ・グループのディカペラがカヴァーを発表するなど、シンガー・ソングライターとしての彼女への注目度も一気に上昇させる。この曲の成功がソロ・シンガーとしてのレコード契約へと繋がった。