
母の死を綴った著書「Crying In H Mart」
――ところで、亡くなったお母さんとの想い出を綴った著書「Crying In H Mart」が、ニューヨーク・タイムズの〈ハードカバー・ノンフィクション〉部門のベスト・セラー2位を記録したそうですね。おめでとうございます! まだ邦訳は出ていないのですが、以前ニューヨーカー誌に掲載されたエッセイの延長的な内容なのでしょうか?
「そうそう。第1章の中身がそうで、本の中で扱っているテーマの序奏みたいになっていて。オレゴン州のユージーンで、母の介護をしていたときの体験について、韓国料理の作り方を教わることで彼女の死の悲しみと向き合うことについて綴っているんだよね」
――本を執筆した後で、自分の中で何か変化はありました?
「最初は、これでよかったのかどうか自信が持てなくて……。完全にプレッシャーにあてられてたっていうか、ものすごく大きなチャレンジだったし、〈バカなことしてない? しくじったらどうしよう?〉みたいな。しかも大切な母親との思い出や私達の関係性を書いてるわけで、失敗したら取り返しがつかないと思って。
ただ、本が世に出てからは、心の底から安心できたし、ようやく自分のことを許せるようになった。自分自身もそうだし、まわりの人達や、この本に関わってる人達を、色んな意味で受け入れてもいいんじゃないかって気持ちになったんだよね。書くことで、母親のことをより深く理解できるようになったのもあるし、自分と母親との関係性について、あるいは母親という1人の人間についての理解がより深まったのもあるし。本当に、書くことでトラウマだとか辛かった経験を乗り越えることができたんだよね。おかげで今は本当にスッキリしたし、人間的にも成長した気がする。
それと本に対しての反響が、想像をはるかに上回るくらい熱狂的で好意的だったので、今はあの本を出してよかったって心から思ってる」
心を一つにして、アジア人差別の解決に向けて前進しよう
――最近、アメリカではアジア系移民へのヘイトが問題になっています。アジア人同士でもお互いに憎み合っていてうんざりするのですが、そんな中であなたが活躍していることに励まされます。アジアン・アメリカンとして、音楽を通して伝えたいことはありますか?
「この1年は、世界中の人達にとって色んな意味でしんどい1年だったよね。だからこそ、自分の音楽が人々の心を少しでも軽くしたり励ましたりしてくれるといいなって。一人一人が喜びを大切に守って育てていけるようになるといいよね。
今、世界で起きてるアジア人に対するヘイトの問題は、9・11のときにイスラム系の人達がいわれのない差別を受けた状況にすごく似てると思う。特定の人達のせいにして攻撃することで、不安や恐怖を少しでも紛らわそうとしてるっていう。コロナの件も、いわゆる白人層や大多数を占める人種が、アジア系のせいでコロナが広まったんだみたいな、根拠のない差別感情をアジア人にぶつけてて。しかも、政治家の中にもヘイト・スピーチ的な発言をしたり煽ったりするような人達がいて、そのせいでさらにひどい状況になってる。
色んなところでこの質問をされるんだけど、正直、自分にもわからないんだよね。これまで生きてきて、さんざん色んなことを感じてきたし……。
今までだったら、人種差別の問題とか、できるだけ〈なかったこと〉にしてきたと思う。自分は差別なんてされてないし、仮にそういうことがあったとしても、笑い飛ばして終わりにしてた。自分は差別なんてされてないし、関係ないって態度でいるほうがラクだったから。
ただ、ここに来てこれだけ問題が深刻に表面化したってことは、これ以上見過ごすことができないってサインだと思う。自分達の経験を言葉にして、断固とした態度で一致団結して、励まし合って支え合いながら、問題を解決していく時期に来てる。だから、今回の件が、むしろみんなの心を一つにして、解決に向けて前進するきっかけになることを心から願ってるよ」
RELEASE INFORMATION

JAPANESE BREAKFAST 『Jubilee』 Dead Oceans/BIG NOTHING(2021)
リリース日:2021年6月4日
品番:DOC225JCD
フォーマット:CD(国内流通仕様)
定価:2,750円(税込)
世界同時発売/解説・歌詞・対訳付/ボーナス・トラック“Coffee Hanjan”のダウンロード・カード封入(初回盤のみ)
TRACKLIST
1. Paprika
2. Be Sweet
3. Kokomo, IN
4. Slide Tackle
5. Posing In Bondage
6. Sit
7. Savage Good Boy
8. In Hell
9. Tactics
10. Posing For Cars