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スローライフに没入感を与える秘密、音楽から読み解く〈あつ森〉の魅力

 2020年3月に発売されて以来〈あつ森〉の愛称でプレイされている大ヒット・ゲーム「あつまれ どうぶつの森」。ファンを公言する著名人も多く、社会現象にまでなっている作品だがその魅力はどこにあるのだろう。

 〈どうぶつの森〉シリーズは2001年に誕生し20年に渡って愛されている。その内容はアイテムを集めたりゲーム内のイヴェントに参加して、気ままなスローライフを満喫するコミュニケーション・ゲームだ。ゲーム内では現実世界と同じく時間が流れており、生活リズムはもちろん曜日や季節の概念があったりと奥行きがある。アイテムも無数に存在し、プレイヤーは気に入ったものを集め気に入った時間を過ごし、ゲーム内で自分のライフ・スタイルを確立していく。今でこそインターネット通信も発展しゲームがコミュニケーション・ツールになることは当たり前だが、自分の環境をそれぞれが好きなように作成し、そしてそれがプレイヤー同士の交流につながるというテレビ・ゲームのスタイルは当時としては珍しい。しかし、いやだからこそというべきか同シリーズは支持され任天堂の看板シリーズにまで成長したのだ。

 実はこのシリーズ、初期から音楽にも強いこだわりがある。時間や季節・イヴェントごとにBGMが変化し当初から100を超える楽曲がゲームの世界観に彩りを添えてきた。そしてその結晶ともいうべきプロダクトが、今回発売される『あつまれ どうぶつの森 オリジナルサウンドトラック』なのである。サウンドトラックは『BGM集』『とたけけミュージック集 Instrumental』の2作と、その2つを合わせた『初回数量限定生産盤』の3種類がリリースされる。

任天堂 『あつまれ どうぶつの森 オリジナルサウンドトラック BGM集』 Columbia(2021)

 『BGM集』には前述したゲーム内の奥行きを持たせる時間別・イヴェント・場面別の音楽がCD4枚に詰まっている。Disc 1~2のトラックリストを見ればわかるが1時間ごとに楽曲が変わり、さらに天気でも音楽が変化する作り込み様。スローライフを彩るゆったりとした空気を与えてくれるのに、少しずつ変化していき飽きさせない。しかもエリック・ミヤシロ氏のフリューゲルホルンをはじめとする一流プレイヤーの生演奏を取り入れた音作りもされており、音響的にも強いこだわりを感じる。(昨年の5月に公開されたオープニングテーマのリモート演奏もボーナストラックとして収録されているのもなかなか嬉しい!)〈あつ森〉プレイヤーにはお馴染みの音楽だし、〈あつ森〉をプレイしていなくても4時間以上にも及ぶ上質なアンビエント音楽集になり得る、と言っても言い過ぎではないだろう。