田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。先週の話題といえば、アバの復活! 40年ぶりの新作『Voyage』を11月5日(金)にリリースすることをアナウンスして、2つの新曲“I Still Have Faith In You”“Don’t Shut Me Down”を発表しました。2曲ともめちゃくちゃいいですね~。特にディスコ・ポップな後者が最高!」

天野龍太郎「新曲は〈アバだなあ〉って感じで、どう受け止めるべきか悩んでいます(笑)。ミュージック・ビデオもすごくノスタルジックで……。数年前からアバは本格的に再結成に向けて動いていて、アバターを使ったツアーなどをやっていましたよね。アバターに関しては、ダジャレっぽいんですけど(笑)。それより、ドレイク vs. カニエ・ウェストのビーフが新局面を迎えていますよ」

田中「9月3日にSiriusXMのラジオ番組『Sound 42』でドレイクがゲスト・ミックスを担当、そこでドレイクへのディスが含まれたカニエの新曲“Life Of The Party”がリークされたのだとか。“Life Of The Party”にはアウトキャストのアンドレ・3000が参加していて、アンドレは〈こういう形で発表されて残念だ〉と声明を発表しました」

天野「2人はプロモーションを兼ねてやりあっている感じが否めないので、ちょっと冷ややかに見てしまいます。それに対して、アンドレのステートメントの大人っぷりがよかったですね。えらいなあ。最後には自分の宣伝も含まれていましたが(笑)。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から」

 

Tokischa & ROSALÍA “Linda”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉はトキーシャとロザリアのコラボレーション・ソング“Linda”です。ロザリアはもう何度も〈PSN〉に登場しているので説明不要だと思うんですけど、大活躍した2019年に比べて最近は活動のペースが落ちているのが心配だったので、コラボとはいえ、こうやって新曲が聴けてよかったです。彼女の新作は完成間近だと言われているのですが……

田中「一方のトキーシャは、ドミニカ、サン・フェリペ・デ・プエルト・プラタ出身の若手ラッパー/シンガーです。元々はモデルだったそうですが、デビュー・シングルのラテン・トラップ“Pícala”(2018年)やその後の“Twerk”(2019年)などで、ラッパーとして注目を集めていきました」

天野「性的にあけすけなリリックで、彼女のラップはかなり議論を呼んでいるらしいです。この“Linda”については、ロザリアのInstagramでミュージック・ビデオのティーザーを見て、〈新曲かな?〉と思っていたんです。そうしたら、トキーシャとロザリアのコラボ曲だった、という。サウンドは、レゲトンの元になったデンボウのシンプルなリズムが特徴ですが、ロザリアらしいフラメンコの手拍子も入っていてハイブリッドな感じですよね。プロデューサーはロザリアとドミニカのレオ・RD(Leo RD)。2人のヴォーカルの掛け合いも最高で、勢いに満ちた超かっこいいラテン・ポップだと思います!」

 

Anz feat. George Riley “You Could Be”

天野「英マンチェスターのDJ/プロデューサー、アンツ。オーヴァーモノやファクタらと並んでUKテクノ/ベース・ミュージック・シーンで注目を集めている新鋭です。〈PSN〉が〈2020年年間洋楽ベスト・ソング25〉の1位に選んだロミー“Lifetime”のリミックスも手掛けていましたね」

田中「エッジ―でエクスペリメンタルなサウンドでありつつも、あくまでもフロア仕様のエレクトロニック・ミュージックが十八番だという印象を持っていたので、この“You Could Be”は驚きました。西ロンドン出身のヴォーカリスト、ジョージ・ライリーをフィーチャーしていて、端的に言ってめちゃくちゃポップ。正直、アンツがこんなにソングオリエンテッドな楽曲を作るとは思っていませんでした」

天野「弾けたメロディーのキャッチーさも魅力的ですが、やっぱりプロダクションがかっこいいですよね。フューチャリスティックなシンセサイザーの音色や、各音域がくっきり分離した音像ガ気持ちいいですし、サステインのほとんどかかってないビートも潔くてクールです。エレクトロニック・ミュージックからポップソングへのアプローチとして、類を見ない完成度を持った楽曲と言えるのでは。アンツは、この曲を含むファーストEP『All Hours』を11月5日(金)にニンジャ・チューンからリリース。1日=24時間をテーマにした作品とのことです。楽しみですね!」

 

Swindle feat. Knucks, Ghetts, Akala & Kojey Radical “BLOW YA TRUMPET”

田中「続くスウィンドルは、もはやUKベース・ミュージック・シーンにおいて大御所と言えるプロデューサーですよね。グライムやダブステップが出自でありながら、ジャズやファンクを咀嚼して、独自のビート・ミュージックを作り出してきました」

天野「この“BLOW YA TRUMPET”は、彼が10月29日(金)にリリースする新作からのリード・ソング。ナックス、ゲッツ、アカラ、盟友コージー・ラディカルと、グライムの実力者たちをフィーチャーした強烈な楽曲で、タメの効いた複雑なビートとぶっといベースが最高」

田中「〈トランペットを震わせろ〉というタイトルのとおり、アッパーなホーンが印象的。スウィンドルならではの緻密に打ち込まれたビートを、舞うように乗りこなす4者のラップにも痺れます。この曲よりも前に発表されたリード・シングルにはロイル・カーナーやマハリアなんかが参加していたし、新作『THE NEW WORLD』はグライムやラップ・ミュージックに回帰した作品になってそうですね」