Mikikiがオススメの新人アーティストを採り上げる連載〈Mikiki’s Young Bloods〉。編集部スタッフが、サブスクやCDショップで試聴して、あるいはライブハウスやクラブでパフォーマンスを観て、〈これはやばい!〉と興奮した新人ミュージシャンを紹介します。今回は天野龍太郎が、10代のラッパー・寝坊主をピックアップ。アーティストによる自己紹介、まずはこの曲から、編集部員の推しポイント、こんな音楽のファンにオススメ、という4項目でまとめました。
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自己紹介
「寝坊主といいます。2002年生まれ。ラッパーをやっています。2015年からネットに曲を上げ始めて、だんだんTwitterで知り合ったトラックメイカーの人たちと共作するようになりました。去年からは同じラッパーの燻、yoo!とBirthBySleepというクルーを組んで、サンクラに曲上げたりしてます。
元は日本語ラップばかり聴いてましたが、中2の時にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを聴いて痺れてから、ずっとバンド・ミュージックに対して憧れというかリスペクトがあります。洋楽も勿論好きですが、日本のロックの、汚さや美しさや独特の情緒を内包した詞には凄く思い入れが強く、そこを目指してやっている部分もあります。日本の数多くのバンドに人生を支えてもらってきたので、自分も誰かにとってそういう存在になるような曲を生み出したいと思っております。
現在ソロ・アルバムを制作中で、先日シングルで“Drive For Nothing”という新曲をリリースしました。トラックを手掛けていただいた群鶏中島さんはまさに自分が好きな90〜2000年代のオルタナの雰囲気をまとった曲を作る人で、なかなか他にはない曲になったと思ってます。聴いてくれ!!」
まずはこの曲から
“Drive For Nothing”
本当は“空蝉”から聴いてほしいのですが、ひとまず現在のところの最新シングルである“Drive For Nothing”を。群鶏中島がプロデュースしたサウンドはポスト・パンク、オルタナティヴ／インディー・ロック、インダストリアルなどが渾然一体となっていて（特にドラムがかっこよすぎ）、現在のUK／アイルランドのロック・シーンやNEHANNのような国内のポスト・パンク・バンドとも共振しているように感じます。やけっぱちな詞世界と寝坊主のヴォーカルはヒリついていて、2000年代の日本のロックをほうふつとさせるメロディーはエモい。最高です。このあとに“空蝉”や“メルト”などを聴くと、さらに驚くかも。
天野龍太郎の推しポイント
寝坊主は愛媛のラッパーで、まだ10代です。
Twitterで“空蝉”をたまたま聴いたのが、寝坊主を知った最初のきっかけだったと思います。いわゆるエモ・ラップや、いまで言う〈レイジ〉のように聴こえるけれど、もっと捨て鉢でノイジーで、引っかき傷みたいなざらついた痕跡を耳に残すラップとビートに衝撃を受けました。
それから、〈K/A/T/O MASSACRE〉に出演したことや、TwitterやSoundCloudのアイコンを黒沢清の映画「アカルイミライ」にしていたことも気になって、Junes K（福岡の才能にあふれたプロデューサー）との共演作品『九龍庭園』を聴いてみたところ、さらにショックを受けたんです。なんだこれ、すげえ、やばいと。
寝坊主は～離とのコラボレーション・ソング“MY CHAIN-SAW”を発表していて、そのことからもわかるように、ビートの幅がめちゃくちゃ広くて、音楽性を拡張することへの貪欲さを感じます。上の“Drive For Nothing”はロックですし、彼の音楽はエモ・ラップでもレイジでもなく、ラップ・ミュージックですらないのかもしれない。今後どうなっていくのかわからない、次に何が出てくるのかわからない、可変性と可能性に満ちているという点で、ずっと追いかけたくなる。だからこそ、下で挙げたようにプレイボーイ・カーティのリスナーもNUMBER GIRLのファンも夢中になれるアーティストだと思います。
もちろん、ラッパーとしても魅力的です。ちょっと古い曲ですが、たとえば2018年の“雨の降る丘にて”では、THA BLUE HERBのBOSSからの影響を感じさせるフロウやライミングが聴けます。ヘッズらしい一面を感じるとともに、ラッパーとしてのスキルの高さやリリシズムも強く印象づけられました。
BirthBySleepの活動、またクルーのメンバーである燻とyoo!も気になりますし、寝坊主を追いかけていれば、さらに新しいアーティストやシーン（のようなもの）との出会いが待っていそう。そんな、わくわく感をもたらしてくれるアーティストです。
こんな音楽のファンにオススメ
Playboi Carti／Trippie Redd／XXXTentacion／Tohji／kZm／Dos Monos／Bloc Party／Interpol／shame／The Murder Capital／NUMBER GIRL／eastern youth／bloodthirsty butchers
RELEASE INFORMATION
リリース日：2021年9月1日
配信リンク：https://ultravybe.lnk.to/dfn
TRACKLIST
1. Drive For Nothing
