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『Love For Sale』で披露されたコール・ポーターの名曲たちを紹介!

1. It's De-Lovely
ブライアン・ニューマン・クインテットを従えたトニーとガガの楽しげな姿が浮かぶオープニングは、造語感覚に溢れたポーターの代表曲。もともと36年初演のミュージカル「Red, Hot And Blue」に書き下ろされ、アニタ・オデイやエラ・フィッツジェラルドらのカヴァーで知られている。伝記映画「五線譜のラブレター」ではロビー・ウィリアムズが披露。

アニタ・オデイの59年作『Anita O'Day Swings Cole Porter With Billy May』(Verve)

 

2. Night And Day
オーケストラをバックにしたロマンティックなナンバーで、これもポーターを代表する名曲だ。32年初演のミュージカル「陽気な離婚」で初披露され、フレッド・アステアのレコード版は10週連続で全米1位を獲得。フランク・シナトラの代表曲としてスタンダード化し、リンゴ・スターがソロ・デビュー作で取り上げたほか、セルジオ・メンデスやエヴリシング・バット・ザ・ガール、U2、テンプテーションズ、ロッド・スチュワートまで多彩な面々が挑んでいる。

リンゴ・スターの70年作『Sentimental Journey』(Apple)、ロッド・スチュワートの2004年作『Stardust... The Great American Songbook Volume III』(J)

 

3. Love For Sale
かつてトニー自身も『The Beat Of My Heart』(57年)で歌った名曲をゴージャスなビッグバンド仕立てで再演。元はミュージカル「ザ・ニューヨーカーズ」(30年)のために娼婦の目線で書かれ、不道徳な曲として当時はラジオで放送禁止となったそう。それゆえのキャッチーさもあってマイルス・デイヴィス、ジェーン・バーキン、笠井紀美子、シールまでカヴァーは多く、ボニーMのディスコ解釈も知られている。

笠井紀美子の75年作『This Is My Love』(ソニー)、ボニーMの77年作『Love For Sale』(Hansa/Sony)

 

4. Do I Love You
こちらはトニーのクァルテットとオーケストラを従えたガガのソロ・ナンバー。39年初演のミュージカル「デュバリイは貴婦人」で披露され、43年の映画化に際してはジーン・ケリーが歌唱している。エラやジュディ・ガーランドが取り上げたほか、ポーターのトリビュート盤『Red Hot + Blue』(90年)でアズテック・カメラが披露した内省的なヴァージョンも忘れ難い。

ジュディ・ガーランドの58年作『Judy In Love』(Capitol)、アズテック・カメラのボックスセット『Backwards And Forwards (The Wea Recordings 1984-1995)』(Cherry Red)

 

5. I’ve Got You Under My Skin
ビッグバンドを従えたトニーの快活な歌唱が光る、ミュージカル映画「踊るアメリカ艦隊」(36年)の挿入歌。フォー・シーズンズのヒット以上にフランク・シナトラのレパートリーとして知られ、その紳士的な振る舞いはマイケル・ブーブレやベン・ロンクル・ソウル、シール、ウィリー・ネルソンらに継承されている。日本産では村上“ポンタ”秀一の『WELCOME TO MY LIFE』(98年)における山下達郎の歌唱や土岐麻子のカヴァーもあり。

ベン・ロンクル・ソウルの2016年『Under My Skin』(Blue Note)、シールの2017年作『Standards』 (Decca)

 

6. I Concentrate On You
かつての前線復帰作『Steppin' Out』(93年)にてトニーも取り上げた映画「踊るニューヨーク」(40年)挿入歌の再演で、マーヴィン・ゲイがライヴ盤『Live At Copa』(66年録音)の冒頭で披露したように、ニューヨーカーにとっては意味のあるスタンダードなのだろう。シナトラ作法でボビー・コールドウェルが歌ったほか、ハリー・コニックJrのポーター・トリビュート作でも印象的に披露されていた。

ボビー・コールドウェルの96年作『Blue Condition』(Sin-Drome/ビクター)、ハリー・コニックJrの2019年作『True Love: A Celebration Of Cole Porter』(Verve)