洗練と泥臭さの融合、グレッグ・オールマン・バンド『Playin’ Up A Storm』
──続いては前回も最年少ながら渋いギタリスト物を推薦してくれた中本さん。今回はまず、グレッグ・オールマン・バンド『Playin’ Up A Storm(嵐)』(77年)。

中本「このアルバムはニール・ラーセンがキーボードでいたり、プロデュースがレニー・ワロンカー&ラス・タイトルマンだったり、オールマン・ブラザーズの泥臭いイメージとはちょっと違って、結構洗練された感じの曲がいいんですよ」
村越「サザンロックなのにバーバンクサウンド」
熊谷「この曲(“Brightest Smile In Town”)なんかまさにそういう感じですよね。ストリングスアレンジもうまい」

中本「リリース当時はAORが流行ってきてたし、もともと泥臭いものをやってきた人たちがみんなちょっとシティな感じになるんですよ。これは、その融合した感じがいいアルバムなので、変な先入観なしで聴いてもらいたいです」
NYからはみ出すニューオーリンズ、ドクター・ジョン『City Lights』
──次もその流れですかね。ドクター・ジョンがホライズン・レコードで出した『City Lights』(78年)。

中本「トミー・リピューマのプロデュースで、ドラムがスティーヴ・ガッド、サックスでデヴィッド・サンボーンも参加してたり。これもバックは洗練系なんですが」

──でも、トミー・リピューマって、アーティストの持ち味を殺すことは決してしませんよね。
中本「そうですね。ドクター・ジョンのダミ声はそのままで、洗練されたこのサウンドと出会うと、あったかい感じがするんですよね」
熊谷「イントロだけ聴くとニューオーリンズじゃなくてNYにいるみたい」
中本「でも、歌い出すとニューオーリンズがはみ出してくるんですよ(笑)」
村越「サウンドは変わってもドクター・ジョンは変わんない。そこがいいですよね」
中本「AOR好きの方にも聴いてもらって、ここからドクター・ジョンの世界に入ってもらいたいですね。ドクター・ジョンのファンで『Gumbo』(72年)しか聴いてなかった人も、安心して聴いてください」
70年代後半でも熱々なエルヴィン・ビショップ『Raisin’ Hell』
──そして、3枚目はエルヴィン・ビショップ『Raisin’ Hell(エルヴィン・ビショップ・ライヴ)』(77年)。

中本「さっきの御二方の音楽は時代とともに洗練されていきましたが、この人は熱々なままです。このライブは結構大所帯で、ホーンや女性コーラスもいて、ソウルやファンク寄りのサウンドなんです」
──ポール・バターフィールド・ブルース・バンドで同僚だったマイク・ブルームフィールドのほうがギタリストとしてカリスマ的な評価が高いですよね。
中本「ブルームフィールドのほうがシリアスな感じで、こっち(エルヴィン)は、ちょっと調子のいいあんちゃんな感じ(笑)。でも、そこがいいんですよね。プレイも陽気で、すごくエンターテイナー感があって盛り上げ上手」
熊谷「以前、〈ブライアン・セッツァー・オーケストラみたいな作品ないですか?〉って訊かれたときに、エルヴィン・ビショップのこのライブを勧めたらすごく喜ばれた記憶があります。もうちょっと再評価されてもいいですよね」

中本「興味ない人でも〈なにこれ?〉って気になる感じがありますよね。小難しいところがないんですよ。しかも、まだまだ現役で新作を出してますしね」
村越「チャーリー・マッスルホワイトと一緒にやった最近のアルバム(2020年作『100 Years Of Blues』)もめちゃくちゃ良かった」
──エルヴィン・ビショップ、推していきましょう!