INTERVIEW

BASEMENT JAXX 『Junto』 Part.1

熱い祝祭のシーズンは終わらない……っていうか、いま始まったばかりだよ! 一周回ってパーティーの楽しさに回帰した2人が、奮闘の果てに『Junto』を完成した!

BASEMENT JAXX 『Junto』 Part.1

ハウスの昂揚感へ

 90年代末のロンドンから登場し、古今東西の音楽要素を詰め込んだプレイフルなパーティー・ハウスで一躍人気者になった、ご存知ベースメント・ジャックス。当初2枚組として発表する計画だった前々作&前作『Scars』『Zephyr』(2009年)は、彼らのキャリア中でも少し風変りな作品だった。何しろ『Scars』は内面の傷をタイトルにしたメランコリックなダンス・アルバム。『Zephyr』に至ってはビートをほぼ排したアンビエントな作品で、“Romeo”や“Red Alert”のようなアンセムは一切なし。本来のイメージとはかけ離れた姿に、驚きを感じた人も少なくなかったんじゃないだろうか。とはいえ、パーティー・ピープルの皆さん、ご心配なく。通算7枚目、約5年ぶりのニュー・アルバム『Junto』は、ベースメント・ジャックスらしい陽気な祝祭感がぎっしり。まるで息を吹き返したように徹頭徹尾ダンス・モードで貫かれた、ソウルフルで踊れるパーティー・レコードだ。

BASEMENT JAXX Junto Atlantic Jaxx/HOSTESS(2014)

「『Scars』の頃の僕らって、ちょっとダークなものに惹かれる時期だったんだ。僕自身、何度か警察にお世話になったりもしてさ(笑)。でも今回はそういう生活に〈ノー!〉を突き付けて、ポジティヴな方向に目を向けようと思った。ハウスって本来そういうものだしね。それに、僕はオックスフォード大学で講義もするんだけど、そこで若い人たちの未来について考えた。そして〈僕らの作る音楽が誰かの役に立ってほしい〉って気持ちがまた強くなってきたんだ」(フィリックス・バクストン)。

 実際、『Scars』『Zephyr』以降の彼らは、「アタック・ザ・ブロック」や「ザ・フーピング・ライフ」といった映画のスコア、メトロポール・オルケストとの共演ライヴ盤『Basement Jaxx vs. Metropole Orkest』を筆頭に、オーディエンスとの関わりを気にせず、自分たちの興味をひたすら追求しているかのようだった。もちろん、作品を重ねたヴェテランだけに、新たな方向性に興味が湧くのは当然のこと。これは彼らにとって、必要な時間だったのだろう。しかし2人がまたハウスの昂揚感に興味を持ったのには、UKで〈ビッグ・ビート以来のダンス・ムーヴメント〉と言われたディスクロージャーらによるハウス/ガラージの再評価や、バウアーの“Harlem Shake”を筆頭にしたトラップなど、若手による新たな音楽に触発された部分も大きかったそうだ。

【参考動画】ベースメント・ジャックス×メトロポール・オルケストの2011年作
『Basement Jaxx vs. Metropole Orkest』収録曲“Hey U”

 

「ここ最近登場したいろんな若手プロデューサーたちの音楽や、彼らが僕らの名前を挙げてくれたことはすごく刺激になったよ。5年前なんて、ベースメント・ジャックスとしてまたアルバムを作ることにさえ確信を持てなかったのにね。〈やるなら今しかない〉ってくらいに、また時代がいい方向に進んできたのを感じたんだ」(サイモン・ラトクリフ)。


全員が同じ立場で楽しめるもの

 そして2人はスタジオも新たに心機一転。もう一度アルバム制作に突入する。

「今回はアルバム用に50曲以上も用意したよ。制作がスタートする以前、僕が1人で日本に行ってCHARAの自宅で録った音源やMADEMOISELLE YULIAとの音源もあったし(どちらも日本盤のボーナス・トラックとして収録)、ほかにもケニアやインドなど世界中で録り溜めた素材がたくさんあったからね。これまでの僕らはブリクストンにある自分たちのスタジオから何とか世界を見ようとしていたけど、今回は実際にさまざまな場所に行って、むしろスタジオの外側から眺めて作っているような感覚だった」(フィリックス)。

 有名から無名まで多岐に渡るゲスト・アーティストも、そうした風通しのいい作風にさらなる広がりを追加。ケリスオノ・ヨーコサム・スパローら豪華ゲストで固められた『Scars』とは対照的に、今回は“Buffalo”でクィア・ラップ界の雄、ミッキー・ブランコが高速ラップを披露したかと思えば、“Power To The People”に参加した通りすがりのシンガー、ニアラや、〈エジンバラ・フェスティヴァル〉で偶然会ったスコットランド人ラッパーのパトリシア・パンサーなど、街で出会ったアーティストとのコラボレーションも多数収録。初期の彼らにあった、ストリートの雑多な雰囲気を作品に反映させる遊び心が戻ってきた。また、作品をリリースするだけに留まらず、2人はゴスペルにも迫る昂揚感を持った先行曲“Power To The People”のリミックス/カヴァーを自由に作成できるサイト〈Power To The People.fm〉をオープン。世界中の人々と音楽を通じて体験をシェアし、その連鎖を広げていく仕組みを持ったこのサイトは、スペイン語で〈共に〉を意味するタイトル〈Junto〉の世界観にも通じるようだ。

「やっぱり僕がいいと思うのは、同じ空間にいる人全員が同じ立場で楽しめるものなんだ。僕ら自身そういう経験をたくさんしたし、80年代のレイヴなんかも、まさにそんな場所だった。社会的な背景も人種も違う人々が、ひとつの場所で音楽をシェアできるようなね」(サイモン)。

 いち早く今作の楽曲を披露した7月の〈フジロック〉のステージも、新旧のヒット・パレードをバックにダンサーやバレリーナが踊り、黒人やアジア系など人種もさまざまなシンガーたちが登場する〈ヒット全部乗せ、祝祭感増し増し〉のパーティー・セット。そしてこの新作自体にも、まるで『Remedy』や『Rooty』といった初期の作品と同じく、いや、もしかしたらそれ以上に、〈ひとり〉ではなく〈みんなで共に〉踊る喜びが表現されている。

「もう一度〈人の力を信じよう〉ってことが最大のテーマだったんだ。例えば世間的に言っても、長い間企業が先導する独占状態があって……彼らの指示に振り回されるような状態が続いていて。人々にそれを強く拒む気持ちが出てきているのを感じていた。だからこそ僕らは、もう一度人の力を信じたかったのさ。いろんな人の力を合わせて、ストリートから世界のハピネス・レヴェルを盛り立てられるような作品を作りたかったんだ」(サイモン)。

 

▼『Junto』に参加したゲストの関連作を一部紹介

左から、MADEMOISELLE YULIAの2013年作『WHATEVER HARAJUKU』(ユニバーサル)、CHARAの2013年のシングル“恋文”(キューン)、ミッキー・ブランコが客演しているトリッキーのニュー・アルバム『Adrian Thaws』(False Idols/!K7/BEAT)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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