
1. Changed
──“Changed”は、すごくかっこいいロックナンバーですよね。カーネーションはアルバムを出すたびに、1曲目がどういう感じでくるか気になるんですけど、これはすごくストレートにかっこいい。ドカドカくる感じ、それがすごく新鮮でした。これほどのキャリアのバンドの1発目がこれなんだと。
直枝「良い曲でしょ、良いメロディーでしょ、じゃないところで出来ているからね。非常にバンド的というか音楽的。快楽や衝動ではじまるパターンはカーネーションでは珍しいかもしれない」
大田「確かにいままでこういう曲ではじまるアルバムはなかったよね」
直枝「照れ屋だったよね(笑)」
大田「(“Changed”は)すごくシンプルじゃないですか。カーネーションの曲はわりと展開が多かったり、ちょっとフックがあったりとかするんですけど、この曲はそうじゃない。ベースも全部岡本くんのドラムに沿うように弾いているし、岡本くんの若いバネがしっかり出ている」
直枝「彼はプレイで煽ってくる。そういうところが頼もしい」
──つい最近も家主と対バンしていましたけど、カーネーションがずっと続けてきた下の世代との対バンシリーズも影響しているんですかね。
直枝「負けてられないと思っているし、一方でこんなこと考えているんだなって毎回発見もある。最近は変に肩ひじはらずに、出会いを楽しめるようになってますね。あと、チカーノ・バットマンをよく聴いていたから途中にいきなりファズのギターを入れたくなった。ネタではないけれど、そういう外部からのちょっとしたヒントはありましたね」
2. SUPER RIDE
直枝「最初は1曲目がいいかもと思ってたけど、いまは2曲目でちょうどよかったのかなと思います。転調があるから1回聴いただけでは構造がよくわからない人もいると思うんだけど、実にジワジワくる良さがある。INO(hidefumi)さんにフェンダーローズを弾いてもらったおかげで、すごく独特のドリーミーな世界になりました。
あとはコーラスで参加してもらったのが、Smooth Aceの重住(ひろこ)さん。彼女は、カーネーションの“愛する言葉 -Summer Children-”(98年)ってシングルで、歌ってくれたんだけどそれ以来でした。この曲にはあのプレーンでまろやかな声が必要だったんです。ぴったりでしたね」
3. その果てを心が
──これはライブでもわりと早くからやっていましたね。
直枝「そうですね。次の“BABY BABY BABY”と同じ頃から」
──コロナ以前に出来ていた曲ですけど、不思議にいまに繋がる感じもあって。
直枝「『昔日の客』(78年)という本を出されていた作家の関口良雄さん(古書店〈山王書房〉店主でもあった)の葉書をオークションで買ったことがあって、そこに〈冬川の果てを心が流れけり〉という句が書かれていたんです。それをもとに、詩にしたんですよ」
──この曲は素晴らしいです。“VIVRE”で示された人生観の先にある成熟に落ち着くのではなく、〈直枝さんはまださまようんだ〉という感覚があって、しびれます。
4. BABY BABY BABY
──こちらは草月ホールのライブ盤(『CARNATION Official Bootleg Vol.5 草月ホールのカーネーション』)にも収録されていましたね。新曲をライブでやるのを聴くと、ファンとしては〈次はこういうのが基調になるのかな〉って考えたりします。
直枝「僕らは端っこから攻めていくんだよね。あんまりど真ん中からは行かない。そうしていかないと力はいっちゃうので。〈全部が良い曲じゃないといけない〉というのは(作り手にとって)いちばん手厳しいじゃないですか」
──いい曲じゃなくてもいい、ってことではなく、力のはいりようってところですよね。
直枝「そう。そのやり方で、意外と後に残るものが出来る。次の“Highland Lowland”もまさにそうです」
5. Highland Lowland
直枝「これ、最初はどうしていいかわからない曲だったんですよ。でも、完成形は素晴らしく化けたなって思います。最初にトリオでやっているときはストレートなだけの曲だった。今回この曲がいちばん化けましたね。わりとシューゲイザー的な新しい要素が入り、ライブでやっているときとガラッと変わりました。いまライブ用のアレンジをあらためてしているんだけど、とってもいいですよ」
──そういう変化は思いつきで出てくるんですか?
直枝「ずっと頭のどこかで考えているんですけど、それがギリギリになって浮かんできて、デモにダビングしてイメージを固めたんです。それをスタジオに持っていって伊藤(隆博)さんが鍵盤でいろいろ被せてくれたりしてようやく完成しました」