わたくし奥冨が、今聴いているアーティストや作品について愛情たっぷりにお伝えしていく連載〈BOY 奥冨直人の宇田川放送委員会〉。今回は、凍てつく前の街に開放する、鋭角も鈍角も感じる温かい鉄音を。

FUJI 『煌めき』 Fuji(2021)

1. FUJI『煌めき』
この1st EPと出会い、その希望も後悔も未来へ巻き込む新しい光を感じました。強烈に尖りまくったディストーションが叫ぶ様に鳴り響き、開放的なメロディーと絡んで楽曲の世界を膨張させます。ジャキジャキなギターと、ちょっと気だるくて伸びやかなヴォーカルにずっとキュンとしてリピート。新タイプのスクールロックの誕生。

 

大和那南 『夜明け前(BEFORE SUNRISE)』 BIG LOVE/Dull Tools(2021)

2. 大和那南『夜明け前 ~Before Sunrise~』(BIG LOVE)
ANNA名義で活動してきたシンガーソングライターのデビューAL。冒頭曲を聴き、その無機質な様で温かい空気感や、ほの暗さと眩しさの両面を持つ楽曲のレイヤーに直ぐ魅了されました。日溜まりの公園、都市の地下鉄、夜の海風……聴き手は様々な景色を頭に浮かばせるでしょう。イマジネーションのコミュニケーション。

 

uku kasai 『SIINA』 Maltine Records(2021)

3. uku kasai『SIINA』
宇田もずくが別名義でリリースしたこのEPで存在を知りました。エレクトロニカやブレイクコアの渦に、浮かぶ様に耳を突き抜ける日本語詞とウィスパーボイスがなんとも心地好い。インターネットの気配を感じつつも確実に肉体的なダンスミュージック。音景はスリリングでいて、未来への冒険の様な作品と受け取っています。

 


奥冨 直人(BOY)
平成元年・埼玉県生まれ。ユースカルチャーを発信するファッションと音楽のコンセプトショップ〈BOY〉を2009年渋谷円山町にオープン。2014年に現在の宇田川町店舗に移転・独立。現在スペースシャワーTVにて配信番組「スペトミ!」のVJを担当。DJやスタイリングなど日々の活動は多岐にわたり、どんな時代も楽しく暮らしている