
大事なのは、音楽を愛しているスタッフがいるかどうか
――Borisは海外に軸足を置いているからなおさら痛感するでしょうね。
Atsuo「そうですね。海外レーベルの場合、アナログのプレスのスケジュールありきなので、今回KiliKiliVillaにも(海外のリリース元であるセイクリッド・ボーンズと)タイミングを合わせてもらったりもしました。どうしても向こうの事情優先ってのがありまして」
――でも、最近は日本国内での活動みたいなものも重視されている感じがするんですが。
Atsuo「コロナ禍に突入してからは、ツアーで稼ぐのでなくてバンド運営の軸をリリースへ変えざるをえなくなったんです。そこで権利関係を整理して、リリース自体もBandcampをメインに自己管理できるようにして、海外のリスナーと直接繋がるようにしました。結果、運営がすごく安定してきて、体力がついてきたから逆に日本でも好きにやれるようになったというか」
――余裕が出てきたと。
Atsuo「ほんと日本でそんなに稼ぐ必要はないんで、はい」
シュガー「あと、コロナ禍以降は日本にいなきゃいけなかったわけじゃない? Borisってずっとツアーバンドでさ、常に海外にいたでしょう? 日本をおろそかにしていたわけじゃないんだけど、私も観る機会がないぐらいずっと海外にいた。それが今回コロナでずっと日本にいて、ツアーも行けなくなって、いろんなことが整理できたって感じなんじゃないの」
Atsuo「そうですね。コロナだったからシュガーさんとかTOKIEさんも僕らと遊んでくれた、みたいな。」
――同じように海外で活動するMONOだと、やっぱり日本国内の活動を半分諦めてるみたいなところがある気がします。
Atsuo「正直消耗することばっかりですよ、日本は」
――そうですか。やっぱり。
Atsuo「はい。でも僕らは本当にラッキーなことに、今回はKiliKiliVillaと仕事させてもらえて。KiliKiliVillaの運営方法って欧米のインディーレーベルと同じ感じなんですよね。利益が出たらそれをレーベルとバンドで折半。海外ではそれが普通なんですよねは。日本でそういうレーベルって実は少なくて。今回の出会いはラッキーだったかなぁ」
――がっつり組める日本のレーベルがなかなかなかった。
Atsuo「そうですね。僕はコラボレーションが好きなんで、レーベルもコラボレーションと思っているんです。その前のTRASH-UPだったら、自分たちでは全然周知できなかったところに、TRASH-UPなら届けられる。それぞれのレーベルの良さがあるんです。
今回、たまたま知人の紹介でKiliKiliVillaからリリースすることになったんですけど、〈あれれれれ?〉ってぐらい価値観とか運営方法を共有できるレーベルで、ちょっとびっくりしましたね。でも欧米では普通なんです。ほんとに。その当たり前が共有できない日本の音楽業界っていうのは……ちょっと不健全だなって思うところもあります」
シュガー「なんかやっぱね、日本って〈会社社会〉なんだよね。音楽業界でさえも。それが私たちみたいな人間には肌に合わないんじゃない?」
Atsuo「〈音楽業界〉なんですよね。会社対会社みたいな」
シュガー「そうそうそう。会社単位で話してくるわけよ、バンドに対して。なんか違うのよ。〈あなたたちと一緒にやりたい! 一緒に作りましょう!〉みたいな話には絶対ならなくて。Bandcampがなんでいいかって、自分たちでやれるからね。誰の手も経ずに聴きたい人のところに直接届けることができる。そういう意味で健全なんですよ」
Atsuo「(日本の音楽業界は)芸能のやり方なんですよね」
シュガー「芸能っぽいんだよ。ほんとそう」
Atsuo「アーティストが事務所に所属して、そこから給料を出してもらってみたいな、そういうやり方がみんな普通だと思ってるんで。欧米はバンドがマネージャーを雇うのに」
――アーティストとレコード会社が直にやりとりするケースって日本ではあまり聞かないですね。
Atsuo「会社同士でないと入金できませんってそういう話が普通にあるんで」
シュガー「あ〜普通にあるよね。そんなんじゃインディーバンドはやっていけないね」
Atsuo「やっていけない。まず会社にしなきゃなんないもん」
シュガー「そういうのがイヤだからもう自分たちでやろうって言って、バッファローの原盤も自分たちで管理してるし。だからよく若いバンドがメジャーと契約しましたとか言って喜んでるのを見てると〈気をつけろよ〉〈原盤は持っとけよ〉といつも思う」
Atsuo「そうですね!」
シュガー「取り返すのは大変だからね。うちらはがんばりました。ま、だからそういうことも含めてね、日本の音楽業界の構造はおかしいなと。海外とかのシーンを見て帰ってくると、居心地悪いなって」
Atsuo「KiliKiliVillaみたいな価値観が広く共有できたらいいと思う、若いアーティストとかにも」
――そうですね。
Atsuo「シンプルにね、音楽を愛しているスタッフがいるかどうかだと思いますね。音楽を愛してる人であれば、アーティストの想いも理解してくれるだろうし、音楽を健全に届けられる。シュガーさん含め今回そういう人たちに巡り会えたのはとても良かった」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2022年1月21日(金)
配信リンク:https://geni.us/BorisW
TRACKLIST
1. I want to go to the side where you can touch…
2. イセリナの神様は言葉 -Icelina-
3. 数に溺れて -Drowning by Numbers-
4. Invitation
5. 未来石 -The fallen-
6. 善悪の彼岸 -Beyond Good and Evil-
7. Old Projector
8. 知 -You Will Know- "Ohayo" Version
9. 乗算 -Jozan-