近年のシティ・ポップ・ブームと80sリバイバルを背景に、新たな視点をリスナーに提供した書籍「シティ・ソウル ディスクガイド」。2018年に刊行された第1弾の好評を受けて、第2弾「シティ・ソウル ディスクガイド2 シティ・ポップと楽しむソウル、AOR & ブルー・アイド・ソウル」が2020年12月に刊行された。これにあわせてシティ・ソウルをテーマにしたコンピレーションの第3弾『City Soul:Sparkle – Today’s Soul, AOR & Blue Eyed Soul』もリリースされ、そちらも評判を呼んでいる。
同コンピに“Fireplace”を提供したPenthouseは、YouTubeでオリジナル曲やカバー動画を積極的に発信する新進気鋭の6人組だ。洗練されたサウンドと男女の力強いツイン・ボーカルで聴き手を魅了する彼らが標榜するのは、〈シティ・ソウル〉にほかならない。
今回はディスクガイド第2弾とコンピの発表を記念して、元「bmr」編集長で〈シティ・ソウル〉シリーズの監修者である小渕晃とPenthouseの座談会を行った。Penthouseからは、ボーカリストの浪岡真太郎と大島真帆、ドラマーの平井辰典が参加。世代や視点の異なる小渕とPenthouseの対話からは、新たなシティ・ソウルの像が浮かび上がってくる。
VARIOUS ARTISTS 『City Soul:Sparkle – Today’s Soul, AOR & Blue Eyed Soul』 Pヴァイン(2020)
シティ・ソウルってどんな音楽?
――まず、「シティ・ソウル ディスクガイド」が生まれた背景を教えてください。
小渕晃「きっかけはシティ・ポップの世界的なブームです。日本のシティ・ポップは、もともと洋楽志向のミュージシャンが先導したムーブメントでした。なので、たとえば〈山下達郎さんの音楽を好きだったら、ぜひこちらも聴いてほしい〉というような形で洋楽を紹介したかったのが動機です。そのため、ディスクガイドには〈シティ・ポップと楽しむ〉という副題を付けています。
ジャンルを〈ソウル、AOR & ブルー・アイド・ソウル〉としたのは、これまでバラバラに聴かれてきた音楽を一緒に楽しんだほうがおもしろいよ、と言いたかったからなんですね。
また、80年代のリバイバルも大きい。僕が『bmr』の編集者として仕事をしていた90~2000年代、80年代の音楽ってほとんど顧みられなかったんですね。それが、2010年代以降急速に再評価された。そこで、改めてその時代の洋楽を紹介しなきゃいけないんじゃないかなと思ったんです」
――では、〈シティ・ソウル〉とは具体的にどんな音楽なのでしょうか?
小渕「70年代にマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーが先導し、80年代にアース・ウインド&ファイアー、クインシー・ジョーンズ、デヴィッド・フォスター、スティーリー・ダンなどが推進してきたクロスオーバーなポップス、というのがざっくりとした説明です。
それらは、90~2000年代にはヒップホップとEDMの躍進で脇に追いやられていた音楽で、ブルーノ・マーズやファレル・ウィリアムズが活躍した2010年代に華々しく戻ってきました」