加速する感じ、レイヴに浮き立つ感情、終わらない陶酔、あるいは生きていることを実感できる瞬間? 『Green Language』に潜む煌めきは勝手に名前をつけろ!
いまでも心配だ
「いまでも、あまり話したくないって思ってるんだ。俺のことを伝える役割は音楽に任せておきたいから、俺自自身から説明しすぎないようにしてる。自分の音楽について説明すると、大抵の場合、頭が混乱しちゃうか、わけのわからないことを言っちゃうからさ(笑)」。
では、わけのわからないことを言っていただきましょうか……。2011年のファースト・アルバム『Glass Swords』がおしなべて高い支持を獲得し、年の終わりには栄誉あるThe Guardian紙にて〈最優秀ファースト・アルバム〉を授かり、さほど栄誉のないbounceの〈Opus Of The Year 2011〉では年間6位に輝いたラスティ。そうでなくても、ジャケに描かれたクリスタルのように、トランシーに乱反射するキラキラと煽動するレイヴ・ベースのガシガシした暴れっぷりが凄まじかったのは誰もが認めるところだろう。それは、寡黙な男が脳内に描いた一瞬の美を何百倍にも増幅して伸張して何度も何度も何度も何度も何度も炸裂させるような、不思議なスピード感を帯びていたのだ。
当初は世間の反応を「自分のため、それから俺の音楽に以前から興味を持ってくれていた奴らのために作ったから、それ以上の反響は驚きだった」とシンプルに受け止めていた彼も、流石に次のアルバムが完成に近づくにつれてナーヴァスになったようで、「最初は普段通り、後でどうするかあまり考えずに作ることだけやってたから、そうでもなかったけどね。アルバムが大体出来上がってきた頃、セカンド・アルバムがどう受け止められるのか心配になってきた。いまでも心配だけど」と心境を吐露してもいる。
環境の変化もあった。前作を仕上げたロンドン近郊のイーリングにいる段階で手をつけたという今回の新作は、グラスゴーへの帰郷を経て数年がかりで完成させたものだという。そうやって生まれたのが待望のセカンド・アルバム『Green Language』だ。これは何というか……本人の心配はまるで不要だったとしか言いようのない仕上がりである。
「新作で表現しようとしたのも、前作でやったことと似たようなものだよ。俺はいまでも、加速するような感じや、クラブやレイヴで遊びはじめた頃に感じたような気分を曲にしようとしている。まあ、今回のアルバムでは、そういう感情と、自然を見た時に感じる気持を加えたのかな。例えば、美しいものを見て、ハッと息が止まり、思考もスロウダウンしてしまう――そういう、生きていることを実感できるような瞬間。自分ではそんなふうに解釈してるよ」。