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意味は後付けでも、韻を踏まなくても、ええやんええやん

――今、鼻歌みたいなラップのスタイルってあると思うんですけど。力まずに、フワフワっとした感じというか、リリックも英語を交えつつ、言葉として聞き取れなくても、雰囲気で聴かせるようなラップです。マンブルラップなんて言葉もちょっと前にありましたが、KMCさんのスタイルはそういうのとは真逆ですよね。

KMC「真逆ですね、ハッキリとラップする。やっぱり俺は、デカい声のラッパーが好きなんで」

――腹にも喉にも力を入れて、ハッキリ何を言ってるかわかるようにラップするっていう。だけど、KMCさんの場合、何故それを言ってるのか、何を伝えようとしているのかはよくわからないっていう……(笑)。言葉としてはわかるけど、これは何の話を聞かされてるんだろう?みたいな面白さがありますよね。

KMC「(あるフレーズを)言いたいだけ、っていうのがスゴいあるんですよ。それ言いたかっただけっしょ?みたいな。そういうのをリリックにしちゃってますね。でも歌ってる内に、結構後から意味が付いてきたりもするんで。その時は意味がわからなくても、後から、あーこういうことだったんだ、みたいな。無責任だけど、これ言いたかったんだから仕方ねーっしょ、聴いてる人で解釈して、っていう思いがありますね」

OMSB「あとKMCって、前はもっと、面白い韻を踏むイメージだったけど、今は言いたいことを言うために韻を減らしてる」

KMC「韻を踏まなきゃっていう義務感があったんだけど、でもそれもさんざんやり尽くしたし。韻はもう、バシッと決める所だけ決めればOK、って感じですね。

あと前は、とりあえず荒々しいものにしなきゃ、みたいな思いが先走ってて、曲のテーマとかがぼんやりしてて。でも今回のアルバムは〈この曲はこのテーマで〉っていうのがハッキリ決まってますね」

OMSB「それと、ある感情を歌って、でも聴いてる人には他の感情を抱かせる、ってのが上手いと思いましたね。悲しいことを言ってるのに、聴いてる方は笑っちゃう、みたいな」

KMC「それはあるかもね。こっちはもう、大変なことが起こってるのに、聴いてる方はそうじゃないとか。(過去の曲で)”東京WALKING”(2010年)ってあるじゃん。こっちはポジティブなことを言ってないのに、聴いてる方は元気出るとかブチ上がるとかさあ!」

2010年作『東京WALKING』収録曲“東京WALKING”

OMSB「まあ……いいじゃないの(笑)」

KMC「そうだね。自由だからね! ええやん」

OMSB「ええやんええやん!」

ハリウッドザコシショウのYouTube動画〈ザコシのええやんええやんじゃあ景気付けに一発鳴らしてみるしかねえだろ!?【シン・スタジオ】【荷物まみれは変わらない】【いいカメラはまだ埋もれている】〉

――KMCさん、ハリウッドザコシショウ好きなんですか? 僕、めっちゃ好きで動画を観まくってるんですけど。シショウもKMCさんと同じく、静岡出身ですよね。喋り方が似てるなってさっきから思ってたんですけど(笑)。

KMC「大好きですよ! あの人やっぱ、静岡のフロウがありますよね? 俺のフロウは静岡のオールドスクーラーのフロウですよ」

OMSB「最初俺は、KMCは江戸前フロウだと思ってたんだけど。浅草とかの、チャキチャキの。静岡だったんだ(笑)」

KMC「別に浅草の人、こういうフロウじゃないでしょ。もっと抜いて喋るよね。静岡の人は一生懸命喋るから! 愚直で、威勢のいい感じで(笑)」

――ルーツが垣間見えましたね。

 

50歳でビートメイカーに、70歳になってもバカシャウト

――ところで、夢というか目標というか、KMCさんは将来的にどうなりたいとかってありますか?

KMC「夢って言うと違いますけど、オムスのようにビートを作るラッパーっているじゃないですか? 俺もそういう風になんなきゃいけねーのかなーって思ってたんすけど……50歳くらいになってからでもいいかなーと(笑)。とりあえずラップを一生懸命やって、50になったら他のことも始めよう、みたいな」

――VOLOさん(VOLOJZA)やQNなんかも、ビートもラップもやりますよね。

KMC「そうすねー。スゴいなーって思うし、俺も何かしなきゃなって思うんすけど、出来ないし(笑)。まあ(経験をいろいろ積んで)50くらいになれば多分……。とにかく、ジジイんなっても、70、80、90と、やり続けてたらカッコいいですよね」

OMSB「いやーそうなんだよね。年取ってもラップやるの、キツいんじゃないかとか言われるけど(笑)」

KMC「いないからじゃん? ラッパーで年寄りが。(自分たちが)なんなきゃダメだよね。70になってバカシャウトしてたらヤバいよ」

OMSB「それかトラップ系の人で、80なってもこう……(腕を振ってユラユラする)ムーブしてたら、クッソ燃えるでしょ(笑)」

――日本で、おじいさんになってもラッパーやってて、っていうロールモデルがまだ無いですよね。

OMSB「ECDさんは、おじいさんというには若すぎたしね」

KMC「じいさんになる前に死んじゃったからさ。早すぎたよね。ECDさんの“君といつまでも”(加山雄三のカバー、2017年)を亡くなってから聴いたら、めちゃくちゃ食らいましたね。やんなきゃダメなんだなって思いました」

OMSB「うん」

2017年のコンピレーションアルバム『加山雄三の新世界』収録曲“君といつまでも(together forever mix)feat. ECD × DJ Mitsu The Beats”

KMC「70、80……120くらいまで生きたいっすけどね! 不老不死の体を手に入れて」

――ベンジャミン・バトンのように。

KMC「そう(笑)。年を取るほど若返ってしまう男……!」

 


RELEASE INFORMATION

KMC 『ILL KID』 PERFECT STORM(2022)

リリース日:2022年4月27日(水)
品番:YNGH-001
価格:3,300円(税込)
配信リンク:https://ssm.lnk.to/ILLKID

1. Krush Groove (Intro) / Beats by STUTS
2. Outta Here / Beats by OMSB
3. HOO!EI!HO! / Beats by OMSB
4. ILL KID / Beats by KO-ney
5. COAST 2 COAST / Beats by Hi'Spec
6. Rock Steady / Beats by STUTS
7. おやすみTOKYO / Beats by ALTO
8. NEW YORKに行こう / Beats by STUTS
9. Renegades / Beats by Hi'Spec
10. 人気者でいこう / Beat by IRONSTONE
11. ダウンタウンボーイ / Beats by Yasuyuki Sugawara (ecke / SYMBOL)
12. My Summer Vacation 2002 / Beats by MAHBIE
13. Ride Music / Beats by OMSB
14. 新所沢PATARSON / Beats by YAB (JUMANJI)
15. 働けMOVE THE CROWD / Beats by KO-ney
16. Summertour / Beats by STUTS

 

LIVE INFORMATION
KMC “ILL KID“ RELEASE PARTY

2022年5月5日(木・祝)東京・新宿 LOFT
開場・開演:17:00
RELEASE LIVE:KMC
GUEST:OMSB & Hi’Spec/STUTS
前売り/当日:3,000円/3,500円(いずれもドリンク代別)
チケット:e+にて販売中
https://eplus.jp/sf/detail/3603710001-P0030001​
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/209809

 


PROFILE: KMC
駿河湾の荒波が生んだスーパースター、そして雄大な富士山を望む事が出来るパラダイスシティー a.k.a. 静岡県吉田町から飛び出した無敵の0548 Style MCである。麻薬もやらねぇしタトゥーもありゃしねぇがHIPHOPが好きという愚直さと威勢のよい楽曲とライブパフォーマンスでPropsを獲得。Rapしてきて色々あったが悲しい事もHIPHOPでぶっとばしてきたのでどんな時だってぶっちぎりのKING。声がバカでかく突き動かされる衝動のままに発せられるRhyme & Flowは爆発する魂の叫びそのもの、キャベツ頭をぶち抜くリリックはたちまちKids達の胸に突き刺さる。毎月、東京・新宿カブキラウンジで開催されているレギュラーイベント〈泪橋〉ではコミッショナーとして君臨している。今後ノロマな時代をマイメン達とぶっとばしながら新しいアルバムとかをガンガン出して50歳になったらビートも作ってく予定。本当の名前は柳原一仁。

PROFILE: Mr. “All Bad” Jordan a.k.a. OMSB
2010年から自身も所属するグループSIMI LABとして活動を開始。グループとして2枚のアルバムをリリースし、2012年にソロとしてのファーストアルバム『Mr. “All Bad” Jordan』、2015年にはセカンドアルバム『Think Good』を発表。プロデューサーとしても多数のトラックプロデュースを行ない、2019年に新機軸となる“波の歌”を発表。2021年4月よりTV東京にて放映がスタートしたアニメ作品「オッドタクシー」の劇伴音楽をPUNPEE、VaVaと共に担当した。5月にはひさびさの新作となる4曲入りEP『MONKEY』を発表。そして8月、同年2作目となる4曲入りEP『HAVEN』を発表した。