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自分なりのポップスへのこだわり

 目まぐるしく移ろっていくSNSタイムラインと併走するように、楽曲単位で聴かれるポップスの即時性といつの時代も変わらないポップスの普遍性を行き来しながら、音楽シーンの第一線で活躍するプロデューサーらしく、本作は多彩な11曲が揃っている。2019年にトム・ミッシュの韓国公演で共にサポート・アクトを務めた韓国のデュオ、dosiiをフィーチャーした“I MA”からミニマルなポップス“Natsume”、前作から続くディスコ路線の決定打となる“image”など、サウンド面においてはフレッシュな響きを追求する一方で、シンガー・ソングライターとしての存在感が増している。

 「これまでの作品ではいろんな歌い方を試してきたんですけど、『Susanna』収録の“Ash Brown”で初めて声を重ねず、一本で歌ったんですけど、そのアプローチに手応えを感じたこともあるし、ライブで歌い続け、シンガーとして、Shin Sakiuraさん、児玉奈央さんをはじめ数々のコラボレーションを行ってきたことで、昔よりシンガー・ソングライターとしての自覚が出てきているように思いますし、今回のアルバムは言葉へのこだわりを強めながら、普通に歌い、声を重ねた正攻法の作品になりました。2曲目の“image”には〈大胆な思考のドライブ、風を切り裂け〉という一節があるんですけど、西洋占星術で〈風の時代〉に入ったと言われているいま、考え、想像することを肯定したいし、いま起きていることを見つめようという思いを込めたというか、その歌詞からして、シンガー・ソングライター然とした曲ですよね。一方で、J-Pop感を強めるBメロを挟む作り方は恥ずかしくていまだにできないんですけど、J-Popらしいサビの解放感は意外に好きだったりするし、ビートルズを聴いて育った自分には3分弱に凝縮されたポップスの美学への共感があって、自分なりのポップスのこだわりが反映されているんじゃないかなって」。