天鼓(てんくう)は、カリンバ奏者・制作者の暁天(ぎょうてん)と、ドラム&パーカッション奏者花岡英一によるユニット。デザイナーでもある暁天自身によるアートワークにあるような、世界各地の様々な民族楽器を駆使して創り上げるのが彼らの音楽。しかしその音楽が伝承される音楽を精錬したのか、というとそういったことではないという。そもそもジェンベにしてもカリンバにしても、二人とも伝統音楽をそれほど意識していないようだ。「カリンバを使っても、アフリカを意識していません。あくまでも表現の手段ですから、極端に言うなら楽器でなくてもいいわけです。絵の具と同じような感覚です」(暁天)。「僕もジェンベは使いますが、アフリカ音楽をしているつもりはないですね。むしろ、伝統的な音楽の世界やコミュニティーからは飛び出したい、という気持ちもあります」(花岡)
二人が出会ったのは、様々なプレイヤーが集まるセッションの場。「永福にそういうことを定期的にやっていたお寺があって、そこで出会ったんです」(暁天)。「暁天と出会ったときに、彼とだったらお客さんに良い作品を届けられるなと思って」(花岡)
口コミで二人の作る音が話題となり、徐々に演奏を披露するようになっていったというが、確かに話しているとミュージシャンというより、現代美術家に近いスタンスだと思えてきた。音のオブジェ、装置、時には演出といってもいいかもしれない。だからこそ、現代舞踊などジャンル違いのアートとの組み合わせも多くなるはずだ。
ところで今回彼らのアルバムをリリースするT-TOCレコーズといえば、とことんまで音質を極める姿勢で、サウンドに厳しい層にも認められているレーベル。そんな質のいい録音環境を、二人はどう感じたのか。「ここまで高音質だと、まずごまかしがきかなくて、良いところ悪いところが正直に出てしまいます。だから僕にとってこれからの作品作りのきっかけにもなっています」(暁天)。「打ち合わせにいったときに(スタジオが)郊外にあってビックリ(笑)。でも持参した楽器を鳴らした時、スタジオの鳴り(響き)にビックリしました。すごく繊細な部分を再現してくれていますから、おかげで演奏も変わってきますね。そもそも僕は音楽は生で、という指向なんですが、これなら録音でも遜色ないですね」(花岡)
レコーディングとはいえ、音もライヴで再現できる範囲でしか重ねていないという。空間に情景を描くような彼らの演奏を全身で浴びてみることにしよう。