積み重ねられた努力などがひとつの形をとって現れること――『結晶』という名を冠したニュー・アルバムにおいて彼らは何を形にしたのか?……と言っても難しい顔して考えることじゃあない。聴けばわかるさ、迷わず聴こうぜ!

 本来はその年のワインの出来栄えを測ることを目的としたボジョレー・ヌーボー。近年のイヴェント化の善し悪しはさておき、解禁とともに発表される出来栄えの評価も話題となることが多い。以下、それを列挙してみよう。

1995年 ここ数年でいちばん出来が良い
1996年 10年に一度の逸品
1997年 1976年以来の品質
1998年 10年に一度の当たり年
1999年 品質は昨年より良い
2000年 上々で申し分のない仕上がり
2001年 ここ10年で最高
2002年 1995年以来の出来
2003年 100年に一度の出来
2004年 香りが強くなかなかの出来栄え
2005年 ここ数年で最高
2006年 昨年同様良い出来栄え
2007年 果実味が豊かで上質な味わい
2008年 果実味と程良い酸味が調和した味
2009年 50年に一度の出来
2010年 昨年並みの仕上がり
2011年 果実味に富んだリッチなワイン
2012年 よく熟すことができて健全
2013年 瑞々しさがある素晴らしい品質

 で、結局どの年が最高なのよ!?というツッコミも常態化するほどの〈今年最高!〉の連発ぶりだが個人的にはまったく笑えず、むしろワイン農家のプライドをビンビンに感じるのだ。最新こそ最高。ロックンロールバンドの新譜も、まさにそうではないか。

SCOOBIE DO 『結晶』 CHAMP(2014)

 

潔いロック・アルバム

 そしてSCOOBIE DO、通称スクービー。数多くのライヴ・ツアーをこなし、年に一度アルバムをリリースし、気付けばキャリア20年弱。そんな彼らの新作『結晶』は、いかにもらしさに溢れた楽曲が得意なストロング・スタイルで次から次へと演奏されていく、スクービー・ファン歓喜の出来栄え。もうノリッノリ。一方で、音楽ジャーナル的にこのアルバムを眺めると、コンセプトらしいものも見当たらず、はてこれをどう聴くか?

 「どう聴くかもなにも、超シンプルな〈ロックンロール・バンドのアルバム〉って感じじゃないですか(笑)」と笑うマツキタイジロウ。SCOOBIE DOのリーダーでありソングライターでありギタリストであり、バンドのレーベルであるCHAMPの代表者、つまりボス。

  「今回は〈特別なことは何もいらないな〉〈キャリアの成せる術にすべて任せよう〉みたいな、どっちかと言えば開き直ったアルバムでしょうね。スクービーがもともと持ってるアンサンブルの魅力をゴリ押しするだけのアルバムでイイかなって、作る前は思ってました。歌モノの曲も一切なくていいかな、くらいに思っていたんだけど、作って行くとやっぱりバランス感覚が出ていつものスクービー・バランスになったんですけど。まあ、潔いロック・アルバムですよ」(マツキ)。

 見方を変えれば〈SCOOBIE DO、いまこうなんですよ!〉を伝えるにはまさに最適なアルバムとも言える。時代性や世の中のムードを反映した芸術性などどこ吹く風。

 「バンドが醸し出すムードが世の中とまったく同じだとイヤだなと思うんですよね。バンドがいるべき場所ってライヴハウスかCDのなかしかなくて、そこだけで成り立っている感じっていいなと思うんですよね」とヴォーカルのコヤマシュウ。バンドの背景や世の中的な立ち位置に左右されずに、バンドや作品単体で魅力が立っているというのはまさに彼が言う通りで、SCOOBIE DOにはヴェテラン感とは無縁のスピード感溢れる現役感がある。

 「山下達郎さんも言ってたけど、リマスター盤ばかり出してるようじゃダメで、ライヴ・ツアーをやって、シングルでもいいから新譜を1年に1枚は常に出さないと現役感はあっという間になくなる――それは絶対その通りだと思うんですよ。スクービーは2~3年に1枚超大作を出して何十万枚も売るっていう存在でもないし、そこをめざしているわけじゃない。ライヴでお客さんと1対1で対峙したときにいちばん響く曲を作ろうっていうのがスクービーなのかなと思うんです。バンドが生き生きと音楽を鳴らせていればそこに伸びシロがある、そういうバンドなんでしょうね」(マツキ)。