8月のある日、何の前触れもなく、佐藤優介の新曲“UTOPIA”が届いた。『Kilaak EP』(2019年)以来2年ぶり、Kaedeの新作『Youth - Original Soundtrack』(2021年)のプロデュースを経た新曲だ。
この“UTOPIA”を解読すべく、大学時代から彼のことをよく知り“UTOPIA”に参加しているスカートの澤部渡と、ユニット〈僕とジョルジュ〉で活動を共にしてきた姫乃たまを招集した。
〈音楽が変わる〉予感に満ちた曲
――“UTOPIA”はある日たまたまYouTubeで知ったんだけど、もうびっくりして。Twitterで誰かも言ってたけど、80年代半ばにスクリッティ・ポリッティが12インチ・シングルを3枚連続で出した時があって※。
澤部渡(スカート)「『Cupid & Psyche 85』(85年)の前だ」
――もう〈音楽が変わるぞ〉みたいな衝撃があったんですよ。“UTOPIA”はあの時の感じをすごく思い出しました。
佐藤優介「スクリッティ・ポリッティを思い出した、っていうのはいろんな人から言われました。実はそこまでちゃんと聴いたことなくて」
――音楽的に、というより空気感が。〈何か変わるぞ〉っていうのがあった。でもみんながそう思うのも分かる。
佐藤「確かに80年代の音楽はよく聴いてました。ハービー・ハンコックとかアフリカ・バンバータとか、あと細野(晴臣)さんのソロとか」
――何を参照にしてるとか、そういうのが全く気にならなかったんですよ。
踊れる音楽が恥ずかしくてできなかった
――これはいつから作ってたの?
佐藤「曲自体は去年にはもうほぼ出来てました。コロナでライブもなくなっちゃって、毎日ずっと家にいたので」
姫乃たま「家にいなきゃいけなくなったっていうのが制作のきっかけなんですね」
佐藤「急に時間がいっぱい出来から、じゃあ自分の曲でも作ろうかって」
姫乃「前作『Kilaak EP』からの流れというか、そこでやり残したことをやりたいという考えもあったんですか?」
佐藤「『Kilaak EP』でやってなかったのは、グルーヴのある音楽なんです。踊れる音楽を作るっていうのが、なんていうか恥ずかしくてできなかったんですよね。聴くのは好きだし、人に歌ってもらう曲だと何でもできちゃうんですけど」
姫乃「歌が(音像の)奥のほうで小さく鳴っているのも、そういう照れが理由なんですか? それともトラックの一部として使ってるという意識なのかな」
佐藤「歌、やっぱりちっちゃいですか?」
澤部「パーツとしてはあれが最適なんだと思う。歌がメインだと、どうしても(歌い手の)顔が大きくなるから」
佐藤「歌手じゃないし、俺の歌なんてあれくらいでいいんです」
――じゃあ今回はミックスまで全部自分でやったの? 途中で誰かに意見をもらったりは?
佐藤「誰かに聴いてもらうっていう発想がなかったです。ずっと一人で……」