大好評のニューアルバム『(エン)』のリリースとツアーを終え、ほっと一息ついているRYUTist。この連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉では、RYUTistの宇野友恵さんがお気に入り本を紹介してくれています。2022年最後の一冊は、伝説のロックバンド・ジャックスの元メンバーでシンガーソングライター、早川義夫さんの代表的なエッセイ集「たましいの場所」。ツアーの思い出を振り返りながら、早川さんの言葉に気づかされたことを綴ってくれました。 *Mikiki編集部

★連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉の記事一覧はこちら


 

アルバム『(エン)』リリースからはや1ヶ月。

ツアーを無事に終え、寝るために家に帰っていたような怒涛の日々から一変、時間を気にせずあたたかいお部屋でじっくり本を読める喜びを感じています。

 

本といえば、北書店さんが場所を新たに再オープンされました。
おめでとうございます!
夏に一度閉店されてから確実に本に触れる機会が減っていたので、自分の居場所が戻ってきたみたいで嬉しいです。

佐藤店長が前・北書店がなくなる前に語っていた〈俺のいる場所が北書店になる〉というのは本当で、場所は変わったけど、私が大好きなあの空間でした。

 

〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第17回目は再オープンした北書店さんで購入した早川義夫さんの「たましいの場所」をご紹介します。

早川義夫 『たましいの場所』 筑摩書房(2012)

佐藤店長は1月9日(月)放送のRYUTistのレギュラーラジオ番組「東港線もどかしルーム」にゲスト出演されます!
その収録の様子とともにお楽しみください。

 

〈「にじみ」を作っている時、枕元でずっと読んでいたのは早川義夫さんの「たましいの場所」でした。〉
前回〈心で歌う〉というヒントをいただいた二階堂和美さんの紹介文があったので読んでみると、すぐに心をグッと掴まれました。

早川義夫さんは、バンド・ジャックスを解散後、制作の仕事に回りましたが、ちょうど今の私と同じ23歳の頃に辞め、本屋・早川書店を開店。22年続けたのち、シンガーソングライターとして復帰されました。

早くおじいさんになろうと思って町の本屋さんになったけど、おじいさんをやっていたら今度は若い頃に戻りたくなって、再び歌を作りはじめたのだそうです。
すごく素直で正直なところが、いいなぁと思いました。
〈今、輝くことができれば、過去も輝くことができるのだ。〉という言葉が印象的です。

 

「たましいの場所」を読んでいると、ツアーの記憶がよみがえってきました。
今回のツアーは本当に楽しくて、ずっとこの時間が続いてほしい、と何度願ったことか。
ファンの皆さんのお顔をまっすぐ見てライブができるようになりました。
マスクをしていても、目と目を合わせたらこんなに相手の表情がわかるものなのかと驚いたり、ノリ方も、縦揺れ・横揺れ・16ビート派とさまざまで面白かったです。
こういう風に書くとそれまではどうしていたのだろうとわからなくなりますね。
与える側のはずなのに、私の方が皆さんから力をもらっていて、心で歌うって実はこういうことなのかなと、言葉で表すには難しいけどハッと感じるものがありました。

 

心残りなのがひとつだけあって、それは千秋楽の新潟公演で寂しさのほうが溢れすぎてしまったことですね。かけがえのない幸せな時間が終わってしまうのが嫌で仕方なかったです。

大きくなった寂しさはそのうちネガティブ感情を呼び起こし、ライブ中一瞬だけ〈私はこのツアーで何ができたかな、何を届けられたのかな〉と疑う心に変わってしまいました。曲と曲の間に次の動き出しまで後ろを向いて待っているその一瞬。
〈まだ終わってないじゃないか、この公演が初めての人もいるのに何を言っているんだ〉と、前を向いた時にはその迷いをすぐに消去して更新することはできたけど、お客さんに対して失礼なことを思ってしまいステージに立つ者として失格だったなと、あとでひどく悲しい気持ちになりました。

元々ぐずぐず引きずってしまうタイプだったのを、いつからか自分の中にシュンカン・ポジティブ・チェンジャーが搭載され、切り替え上手になれるよう取り繕っていた私ですが、今回ばかりはダメになりそうでした。本当にそのままでいいのか。
もうやめた方がいいんじゃないかと最悪な提案もよぎる。そういう極論に走ろうとするのは本当に良くないです。
師走の呪いかもしれない。一年の締めで、自分に問いかけたくなるタイミングでもあって、心を探ってしまうんですよね。