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スカートの音楽は漫画である?

佐藤「ところで、さっきの点数の話になると、やっぱり思い出しちゃうんですが……」

澤部「はいはい、『ミュージック・マガジン』のレビューの話ね……。その話もはや優介しかしてないよ(笑)!」

佐藤「(笑)。でも実際、澤部さんの話をしようとすると、学生時代から近くで見てきた身からすると……澤部さんの歴史っていうのは、高円寺の円盤から委託を断られたり、ファーストアルバム(2010年作『エス・オー・エス』)を持ち込んだレーベルからは拒否されたり、音楽誌からは、よからぬ点数を付けられたりだとか、ある程度信頼を寄せていた音楽媒体から、まず拒絶されるっていうところからスタートしてるじゃないですか」

澤部「そうです(笑)。でも、たとえばココナッツディスクがあったり、松永良平さんが見つけてくれたり、っていうのも大きかったと思うね」

佐藤「それはわりと能動的な部分ですよね。もうちょっと自発的なところで、澤部さんの音楽がどう受容されていったかっていうと、これは俺の視点ですけど、〈コミティア〉が大きかったんじゃないかと思うんです。そこが他のミュージシャンと大きく違ったというか」

澤部「それはあるかも。実際に〈コミティア〉でCDを売り出したのは2012年の2月だから『ストーリー』以降なんだけどね。

でも……ちょっと言い方が難しんだけど、なんていうか、音楽が好きな人より、漫画が好きな人たちに聴いてもらいたい、っていうのはやっぱりあったよ。こういう音楽は、漫画を好きな人の方がわかってくれるんじゃないかって」

佐藤「それはどういう部分なんでしょう。俺はちょっとわかるけど」

澤部「漫画って、一般的には起承転結みたいなものを求められるわけじゃない? でも僕が好きな漫画って、〈結〉がなくてもいいようなものが多くて。〈何かが起きてる〉とか、〈こういうことがあった〉とか、そういう状態を切り取ったものが多かった。だから、自分もそういうものを作りたかったし、作ってる自負があったから、いわゆる〈音楽好き〉よりも響くことがあるかもな、って思ったんだよね」

佐藤「確かに、澤部さんの音楽って、なにか音楽的に面白いことを起こそうっていう感じがないですよね。それがすごいなと思って」

澤部「いや……やろうと思ってそうやってるんだけど、やっぱり想像してた通りの茨の道ですよ(笑)」

佐藤「ある意味で非ミュージシャン的というか」

澤部「うん。普通のミュージシャンだったら、こんなおんなじようなアルバム何枚も作ってないよ(笑)」

佐藤「(笑)。でも、どうしたって違うことをしたくなるじゃないですか。それでいうと、俺が澤部さんの音楽で一番面白いと思うのは、間奏なんです。普通だったらギターソロとかいくらでも入りそうじゃないですか。そこを、何もしないっていう(笑)。あれは中々できないと思う」

澤部「どうしても入れちゃう曲とかはあるけどね」

佐藤「それも、ゲストを呼んできて弾かせるみたいなことが多い。なんていうか、ミュージシャン的な我を出そうっていう感じがあんまりないですよね。それはどこから来てるんでしょう。やっぱり漫画なのかな」

澤部「漫画だと思う。要は、〈台詞がないコマにこそ何かがあるぞ〉って思ってる部分がずっとどこかにあって、そういう歌とかメロディーじゃないところに、我々は何かを宿すべきなんじゃないかって思うのよ。自分でも成功してるかどうかはわかりませんけど(笑)。でも、やる価値はあると思ってるから」