マルチな才能を示すピアニストが新たな挑戦として挑んだショパン・アルバム
作曲家・編曲家としてのみならずピアニストとしてもソロ・アンサンブルと幅広い活動を展開する山中惇史。数々のレパートリーを弾きこなす彼が今作で取り組んだのは意外にも王道中の王道であるショパン。あらゆる時代の楽曲を散りばめながら、山中自身の作品を織り交ぜた意欲作となっている。
「これまで演奏活動は誰かとの共演、もしくは室内楽を中心にしてきました。本当にアンサンブルが大好きなので、主要なレパートリーはほぼ網羅しているといっても過言ではないです(笑)。ソロ・アルバムを出させて頂いたのは、新しい挑戦をしたいという想いがあったからです。こうして一人で弾いてみると、新しい角度から音楽に接することができました」
あえてショパンを選んだのには意外な理由があった。
「2015年のショパン国際ピアノコンクールをYouTubeで視聴したことでショパンが好きになったのです。作曲を勉強する上で、ショパンはサロン音楽の作曲家、というイメージが強く、あまり積極的に向き合う機会がありませんでした。しかし、彼の様々な楽曲、とりわけ後期の作品をじっくりと聴いているうちに、誰も到達できないようなことを成し遂げた作曲家なのだということがわかったのです。決して煌びやかな、美しい音楽だけを書いた人ではない。それからというもの、どんどんショパンに惹かれていってしまいました」
山中の美しい音色と楽曲の輪郭を鮮やかに示す演奏は、ショパンの魅力を丁寧に描き出しており、織り交ぜられたオリジナル曲と共に物語のように世界を創り出している。
「前の曲の最後の音が次の曲の最初の音と重なるようにしてプログラミングしていきました。具体的なストーリーを組み立てているわけではないのですが、ショパンが辿ってきた道を辿るような気持ちで作っています。多くの名盤がある中で、自分なりにできることを精一杯込めたつもりです」
ショパンに対する想いと楽曲へのリスペクトが存分に伝わってくるアルバムが生まれたことで、山中のさらなる音楽の深まりが感じられる。最後に、今後の目標を伺った。
「高橋優介さんと結成しているピアノデュオ〈アン・セット・シス〉の活動もさらに盛り上げていきたいと思っているところです。昨年演劇的な要素を取り入れたコンサートを行い、それがとても楽しいものになったので、いずれはさらにそれを発展させ、総合的な芸術作品のようなステージを作っていきたいです」
LIVE INFORMATION
中野翔太・金子三勇士・山中惇史 トリプルピアノ
2023年4月23日(日)東京・後楽園 文京シビックホール 大ホール
開場/開演:14:15/15:00
曲目:ラヴェル(ボレロ-中野翔太編曲)/他
音楽堂ホリデーアフタヌーンコンサート2023前期
《ヴィルトゥオーゾ・ホルン》福川伸陽 ホルン・リサイタル
2023年5月6日(土)神奈川・横浜 神奈川県立音楽堂
開演:13:30
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