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向かう所敵なしの3人が作り出す〈21世紀の音〉に注目

 この3人が集まったら出来ないことなんて無い、と思わされてしまいそうな強力トリオのコンサートが行われる。サクソフォンの上野耕平、ピアノの山中惇史、パーカッションの石若駿が集まるコンサートで、実は昨年に予定されていたものだ。新型コロナウイルスの流行で延期され、改めてこの3月27日(土)にヤマハホール(東京・銀座)で行われる。それぞれのジャンルを代表する若手奏者だが、3人とも東京藝術大学の卒業生であり、在学中からお互いにその才能を認め合っていた間柄でもあった。

 実はこの3人の演奏はすでに録音で聴くことが出来る。アンドレア・バッティストーニと東京フィルハーモニー交響楽団のレコーディング・プロジェクトである 『BEYOND THE STANDARD』の中の1枚に、ベートーヴェンの“運命”と並んで吉松隆の傑作“サイバーバード協奏曲”が収録されている(2019年録音)が、その時のソリストがこの3人なのである。“サイバーバード”はもちろんサクソフォン協奏曲(須川展也のために書かれた)だが、ピアノとパーカッションもサクソフォンと並んでこの作品の重要な一部となっている。それを録音する時に、上野があえて選んだのが山中と石若であった。

 この録音後に上野にインタビューしたことがあった。「この協奏曲を演奏する時はこの3人でやりたいという念願が叶ったし、録音も常にスリリングで、ライヴのような感覚で出来た」と、(彼が好きな)鉄道のことを語るとき以上に楽しげに語っていたのが印象に残っている。そして、ヤマハホールでのトリオ版の“サイバーバード”についても話してくれたのだが、それが本当にライヴで聴けるチャンスがやって来るのである。

 当日のコンサートでは、上野、山中、石若のそれぞれの作品も演奏される他、藤倉大が上野のために書いた“bueno ueno”(2019年)のドラム版(オリジナルはサクソフォンと太鼓のために書かれた)が披露されるのも楽しみ。そして若手作曲家として注目を集める旭井翔一の“サクソフォンとピアノのためのソナタ”の第1楽章も演奏される。それぞれが多忙な活動を続けている3人が、いったん延期された後、よくスケジュールの合う日を見つけられたものだと驚きもしたが、それだけに〈トリオで演奏したい〉という強い意欲もあったのだろうと想像する。“サイバーバード”の録音で聴かせてくれた新世代の疾走感とも言うべき音楽の前進力。トリオ編成でそれがどう変化するのか、聴き逃せないコンサートになる。

 


LIVE INFORMATION
Yamaha Hall 10th Anniversary
上野耕平トリオ

2021年3月27日(土)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:15:30/16:00
出演者:上野耕平(サクソフォン)/山中惇史(ピアノ)/石若駿(パーカッション)

■曲目
上野耕平/De-o-chi
石若 駿/Dejavu #4
山中惇史/SAKURA
藤倉大/bueno ueno(ドラム版初演)
旭井翔一/サクソフォン・ソナタより第1楽章
吉松隆/サイバーバード協奏曲 Op. 59

■チケット料金(全席指定)
一般/学生:4,500円/3,500円(いずれも消費税込)

チケットのご予約・お申し込み(チケットぴあ):0570-02-9999/https://pia.jp/t//[Pコード:190-195]

※政府のイベント人数制限方針により、販売数が変動する可能性がございます。予めご了承ください
※本公演は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から中止となった2020年3月7日公演で予定していた内容と同内容となります。なお、2020年3月7日公演のチケットではご入場いただけません。予めご了承ください

お問い合わせ(ヤマハ銀座ビルインフォメーション):03-3572-3171 11:00~18:30(火曜定休)

https://www.yamahaginza.com/