FALL OUT BOY
いろんな意味でフォール・アウト・ボーイが帰ってきた! ニール・アヴロンと再会したラーメン復帰作は、純粋な衝動と〈あの頃の続き〉に終わらない新鮮な熱気に溢れている!

完璧な場所

 「僕たちはもう20年近く一緒にバンドをしているし、この旅の途中でさまざまな出来事もあった。新しいものにしつつ、そしてバンドの基盤を取り込みつつ、いままでのことを融合するアルバムを作りたかった。それを実現するにはフュエルド・バイ・ラーメン(以下FBR)が完璧な場所だった」(ピート・ウェンツ、ベース)。

FALL OUT BOY 『So Much (For) Stardust』 Fueled by Ramen/ワーナー(2023)

 約20年在籍したアイランドとの契約を終えたフォール・アウト・ボーイ(以下FOB)が5年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム『So Much (For) Stardust』をリリースした。初作『Take This To Your Grave』(2003年)ぶりに古巣のFBRに帰還した作品という触れ込みながら、厳密に言うと『Folie À Deux』(2008年)までのアイランド作品にもFBRのロゴは刻まれており、代表のジョン・ジャニックがA&Rに名を連ねてもいた。

 そうしたリリース元の変化よりも重要なポイントは、まさにその『Folie À Deux』まで3作連続で組んでいたニール・アヴロンを久しぶりにプロデューサーに起用したことだろう。NMEのインタヴューによるとパトリック・スタンプ(ヴォーカル/ギター)は今回の新作について、〈もし休養しないで『Folie À Deux』の後にもレコードを作っていたらどんなサウンドになっていたのか〉を意識して取り組んだそうだ。

 その分岐点だった2008年の後……実際のFOBは疲弊して2009年末から休止状態に入り、個々が私生活の変化や心の不調に苦しむことになった。ブッチ・ウォーカーのプロデュースで皮肉な表題の次作『Save Rock And Roll』が届いたのは5年後の2013年。そこからのFOBはポップ市場におけるよりモダンなロック・バンド像を志向し、作品ごとに曲調の幅を広げてコラボやコライトにも柔軟に対応し、ジョン・シンクレアら複数の制作陣と組んでハイブリッド感を強めた『American Beauty/American Psycho』(2015年)、トロピカル・ハウスなど過去最高にアレンジの振り幅が広い『Mania』(2018年)まで3作連続で全米1位を獲得した。その舵取りは、脱ロック的なバンドや効率的で利口な新しさが持て囃される時代の空気にもフィットしていたはずだ。が、そこから次作の登場までまたも5年の間隔を要したということは、(コロナ禍もあったとはいえ)改めての転換期が訪れていたのかもしれない。