
FALL OUT BOY
いろんな意味でフォール・アウト・ボーイが帰ってきた! ニール・アヴロンと再会したラーメン復帰作は、純粋な衝動と〈あの頃の続き〉に終わらない新鮮な熱気に溢れている!
完璧な場所
「僕たちはもう20年近く一緒にバンドをしているし、この旅の途中でさまざまな出来事もあった。新しいものにしつつ、そしてバンドの基盤を取り込みつつ、いままでのことを融合するアルバムを作りたかった。それを実現するにはフュエルド・バイ・ラーメン(以下FBR)が完璧な場所だった」(ピート・ウェンツ、ベース)。

約20年在籍したアイランドとの契約を終えたフォール・アウト・ボーイ(以下FOB)が5年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム『So Much (For) Stardust』をリリースした。初作『Take This To Your Grave』(2003年)ぶりに古巣のFBRに帰還した作品という触れ込みながら、厳密に言うと『Folie À Deux』(2008年)までのアイランド作品にもFBRのロゴは刻まれており、代表のジョン・ジャニックがA&Rに名を連ねてもいた。
そうしたリリース元の変化よりも重要なポイントは、まさにその『Folie À Deux』まで3作連続で組んでいたニール・アヴロンを久しぶりにプロデューサーに起用したことだろう。NMEのインタヴューによるとパトリック・スタンプ(ヴォーカル/ギター)は今回の新作について、〈もし休養しないで『Folie À Deux』の後にもレコードを作っていたらどんなサウンドになっていたのか〉を意識して取り組んだそうだ。
その分岐点だった2008年の後……実際のFOBは疲弊して2009年末から休止状態に入り、個々が私生活の変化や心の不調に苦しむことになった。ブッチ・ウォーカーのプロデュースで皮肉な表題の次作『Save Rock And Roll』が届いたのは5年後の2013年。そこからのFOBはポップ市場におけるよりモダンなロック・バンド像を志向し、作品ごとに曲調の幅を広げてコラボやコライトにも柔軟に対応し、ジョン・シンクレアら複数の制作陣と組んでハイブリッド感を強めた『American Beauty/American Psycho』(2015年)、トロピカル・ハウスなど過去最高にアレンジの振り幅が広い『Mania』(2018年)まで3作連続で全米1位を獲得した。その舵取りは、脱ロック的なバンドや効率的で利口な新しさが持て囃される時代の空気にもフィットしていたはずだ。が、そこから次作の登場までまたも5年の間隔を要したということは、(コロナ禍もあったとはいえ)改めての転換期が訪れていたのかもしれない。
昔ながらのやり方
とはいえ、先述したNMEのインタヴューでパトリックが慎重に〈これはスロウバックではない〉とわざわざ念押ししているように、そうしたある種の回帰を近年のポップ・パンク/エモのリヴァイヴァル現象などの外因と結び付けるのは安直かもしれない。その変化はあくまでも本人らの内側から生じたモード変更でもあり、パトリックが「現代はテクノロジーのおかげでレコードが速く制作できるようになって、それは何ひとつ悪いことではない。でも僕たちは昔ながらのやり方で制作することを選んだ。僕たちは繊細な料理のように慎重に制作され、計画的で根気よく導かれた作品を作りたかった」というコメントを見るに、マインド的な揺り戻しのニュアンスが大きいのだろう。今回はアヴロンと組んだ過去3作の制作途上で存在していたアイデアと近年のサントラ仕事で培ったパトリック自身の経験が反映されているそうで、その意味では〈あの頃の続き〉でもあり、同時に現在のFOBらしい音でもあるわけだ。
ストリングスで始まる“Love From The Other Side”と80s感覚のシンセも用いてドラマティックに駆ける“Heartbreak Feels So Good”というアタマ2曲のエモーショナルな先行カットだけでも、軸となるシンプルなバンド・サウンドの逞しい一体感は伝わることだろう。その範疇においてアレンジも多彩で、クラップが印象的なダンス・ロック“Hold Me Like A Grudge”や浮遊感のある80sポップな“Fake Out”、モータウン・ビートの“So Good Right Now”など親しみやすい楽曲が居並ぶ様はまさに『Infinity On High』の頃に通じるかもしれない。EW&Fの“September”を下敷きにした“What A Time To Be Alive”の微笑ましさから一転、ラストのディープな表題曲まで、起伏の激しい感情を溢れさせたFOB印の名曲が揃っている。
なお、本作のリリースに前後してジョー・トローマン(ギター)がメンタルヘルス治療を理由にバンドから一時離脱することを表明したが、FBRの援護を得たこの充実作によってFOBがまた新たなフェイズに入ったのは確かだ。パトリックは満足げにコメントを締め括っている――「自分にはあまり誇りを持てないけど、このアルバムのことはとても誇りに思っている!」。 *出嶌孝次
左から、マーティン・ギャリックスの編集盤『The Martin Garrix Experience』(ソニー)、パトリック・スタンプが手掛けた2019年のサントラ『Spell』(Milan)、MAN WITH A MISSIONの2021年作『Break and Cross the Walls I』(ソニー)、100gecsの2021年作『1000 Gecs And The Tree Of Clues』(Dog Show)
FOBの作品。
上段左から、2003年作『Take This To Your Grave』(Fueled By Ramen)、2005年作『From Under The Cork Tree』、2007年作『Infinity On High』、2008年作『Folie À Deux』、2009年のベスト盤『Believers Never Die: Greatest Hits』(すべてDecaydance/Fueled By Ramen/Island)、2013年作『Save Rock And Roll』(Decaydance/Island)、2015年作『American Beauty / American Psycho』『Make America Psycho Again』(共にDCD2/Island)、2018年作『Mania』、2019年のベスト盤『Believers Never Die Volume Two: Greatest Hits』(共にIsland)


