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男声と女声の境界を曖昧にするファルセット

――Remayさんの音楽は、パッと聴いても女性なのか男性なのかがわかりにくいし、境目をあまり持たせないようにしている感じさえします。中性性を目指しているというより、もはや男でも女でもどっちでもいい的な曖昧な良さがあると思います。ファルセットはどういうきっかけでやろうとしたのですか。

「合唱部ではテノールだったんです。ちょうど声変わりした後くらいだったので、無理やりテノールになって、声が出ないところは口パクで歌ってた記憶もあります(笑)。声の低い女の子がアルトの一番端っこに座ったりして、そこらへんの境界がその時は確かに曖昧でした。そういうことも体験していたので、わざわざ無理やり境界線を引く必要もないのかなって、もしかするとそういうところから意識し始めてたのかもしれないです。

ファルセットについては、〈ファルセットを出せるようになろう〉って言って、同じ合唱部で出会った友達と、1週間裏声で喋り続けるってことをやってたんですよ。日常会話も全部裏声で喋る(笑)。〈それをやったら出るようになる、なったらしい〉と先輩が言ってたとかで、〈それをやろう〉って言って。でも、恥ずかしすぎて、2日か3日ぐらいでやめたんですけど(笑)。ただ、それから本当にファルセットができるようになって。実際に、その頃から歌うこともよくするようになっていたので身についたのかもしれないです。

そしたら、もしかしたら表現の幅としてファルセットの方が広かったり強かったりするのかな、と思うようにもなりました。それこそサム・スミスのバックにいる黒人女性コーラスの気持ちで歌うっていうのをやってみたりもしました」

──声の出し方も自分でコントロールできるようになったということですか。

「はい。例えば〈この部分はファルセットで歌うんだ〉とか、〈この曲は素で歌うんだ〉とか、歌い方や声の出し方を考えて曲を作るようになりました。今回の作品はあまりそこを意識して作った曲ではないかもしれないですけど、今までに作った曲の中には、地声のちょっと低いところからいきなり裏声に変わって、〈違う人が歌い始めたのかな〉みたいな感じに聞こえる曲もあります。

ただ、裏声に変わった瞬間に印象が変わってくることが必ずあるので、キーを調整したりメロディーを一番最後に変えたりとか、そういうことは作る段階から考えながらやってます。逆にそれがうまくいかなかったりしたら、そこそこ落ち込みますね(笑)」

 

曲と詞を同時に生む直感的作曲

──曲作り自体がかなりテクニカルな作業なんですね。歌詞の内容もそれによって変化していくものなのでしょうか。

「ちょっと前までは詞先で作ることが多かったんです。完全に後からメロディーを合わせにいく、みたいな。でも最近は、なるべく同時がいいんですけど、曲が先行することが多いかもしれないです。

まずメロディーを思いついて、それをボイスメモみたいなのに録っておいて。それを後から変えたりもします。〈サビのところはこういう感じでいくけど、途中で他のメロディーを合わせよう〉とか、〈このままの流れでいこう〉みたいに、結構柔軟に。

だから、細かく分ければ曲先ですけど、ちょっと大きめな時間軸で見ればほぼ同時に作ってる、みたいな感じかもしれないです。響きやメロディーに合った言葉が出てくるだろうと信じてるので」

──例えば、今回の作品に先行して公開していた2曲“かかえてきた”“光る魚”に関してはどうでしたか。

「めちゃくちゃ直感的でした。まるで天才みたいなエピソードなんですけど(笑)、“かかえてきた”はお風呂で思いついたんです。言葉もすごく単純なので、〈どうしようか? もういったんやめちゃおうかな〉って思ってたんですけど、最後のコーラスの掛け合いの部分をアレンジしたくなって。閃いたんです。で、お風呂から上がってすぐに作業をしました。そこからは早かったですね。

『夕暮れ』収録曲“かかえてきた”

“光る魚”はほぼ同時期に作った曲です。かなりスピーディーにというか、多分どっちも1時間もかかってないんじゃないかな」

『夕暮れ』収録曲“光る魚”

──お風呂……自然にエコーがかかるので曲の仕上がりをイメージしやすいですよね。

「はい。だから普通に部屋で何となく鼻歌で歌ってるときよりも連想しやすい形にはなると思うんですよね。〈スタジオで歌録りをするときはこんなふうに響くのかな〉とか、〈この言葉の語感がこんなふうに実際に響くのかな〉みたいなことをイメージしやすいですね」

──お風呂もそうですが、幼少期から親しんできた自然の響きみたいなものが体に染み込んでいるということもあるのかなと思いました。

「そうですね。これも今お話を聞いて初めて考えたんですけど、かなりあるかもしれないですね。音の響きからメロディーを作った曲っていうのはボーカルに結構深めにリバーブをかけることが多いんです。ちょっと教会……チャペルっぽいとイメージ、響きが伴うんです」