2023年2月18日、〈Bialystocks “Quicksand” Tour 2023〉のツアーファイナルが東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催された。メジャーファーストアルバム『Quicksand』とライブの評判が高まるなか、今回のツアーも全公演がソールドアウト。『Quicksand』の世界が披露され、ライブバンドとしての進化と変化で魅せたステージを、ライターの峯大貴がレポートした。 *Mikiki編集部
そこかしこに飛び火しているBialystocksの表現の火
昨年10月に行われた初ワンマンライブ〈Bialystocks 第一回単独公演〉で、アルバム『Quicksand』のリリースとあわせて開催が発表された今回の初ツアー。チケットが発売されれば東名阪3公演の全てが即日完売だった。
また今年に入ってから「関ジャム 完全燃SHOW」(テレビ朝日系)での企画〈プロが選ぶ年間マイベスト10曲〉で蔦谷好位置が“灯台”を2位に選出。初の海外ライブとなる台湾のフェスティバル〈Neon Oasis Fest.〉に出演。2月には甫木元空(ボーカル/ギター)が監督を務めた映画「はだかのゆめ」の原案私小説が文芸誌「新潮」に掲載。
前回の単独公演でのレポートで筆者は〈Bialystocksの表現の火種が、鮮やかに燃え盛っている〉と評したが、そこからたった4ヶ月足らず。彼らの表現の火は、もう自身のみならずその周辺からも薪をくべられ、そこかしこに飛び火しているような状態になっている。
ライブ感が増した今までとは違う熱気、映像との新たなコラボ
そんな状況の中で遂行してきたツアーの最終公演。これ以上なく満員の観客の拍手を浴びながら、メンバーが恵比寿LIQUIDROOMのステージに登場。菊池剛(キーボード)がアルバムの1曲目でもある“朝靄”を弾き出し、じっくり会場の感触を確かめるかのようにライブはスタートした。
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この日のメンバーは、甫木元と菊池に加えて、西田修大(ギター)、越智俊介(ベース)、小山田和正(ドラムス)に、早川咲(コーラス)、オオノリュータロー(コーラス)が加わった7人編成。コーラスの2人以外は大阪・名古屋公演も共にしていることもあってか、いつになくステージを楽しむような余裕が見て取れ、ライブ感が増していた。昨年の単独公演がMCをなるべく排し幕間に映像を挟みながら、まるで演劇を鑑賞するような作品性を持ち込んだステージだったのとまるで対照的である。
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例えば“雨宿り”の2番のサビ前。アルバムでは一旦音数が減って静かな歌唱になるパートだが、この日はブレイクを入れ、甫木元もむしろシャウトするように歌っていた。要所で音源とはガラリと印象が違うアレンジが施されている。また“あくびのカーブ”では菊池が、越智の立ち位置にセッティングされたシンセベースまで移動してフリーキーなソロを披露するなどステージパフォーマンスとしての見ごたえを感じられる場面も。そんな前のめりな演奏に観客も呼応し、8曲目の“Emptyman”で早くも大団円を迎えるかのような手拍子が自発的に生まれていたのも、今までのBialystocksのライブとは違う熱気を感じた瞬間だ。
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一方で映像とのコラボレーションは今回もあり、“コーラ・バナナ・ミュージック”、“I Don’t Have a Pen”、“Over Now”というBialystocksの音楽性の幅広さを象徴するようなライブでの重要曲では、バックにCGが映し出された。これが単に楽曲の世界観を表現するためのものではなく、かわいらしくもぬるぬると動く謎の生命体が時折登場し、独特の不穏さを演出していた。楽曲にこれまでと違うイメージを加えるような効果を発揮していたと言える。