音楽の聴き方が多様化した今、タワーレコードがおすすめしているのは高音質なSACDでのリスニングです。この連載〈SACDで聴く名盤〉では、そのSACDの魅力や楽しみ方をお伝えしています。第17回に取り上げるのは、ロック、ひいてはポップミュージックを代表する不朽の名盤、ピンク・フロイドの『狂気(The Dark Side Of the Moon)』(73年)です。先日リリースされた豪華盤『狂気ー50周年記念SACDマルチ・ハイブリッド・エディション』について、あるいはピンク・フロイドというバンドや『狂気』という作品の普遍性と特異性について、筆家の佐藤良平さんが熱く綴ってくれました。 *Mikiki編集部

普遍的で今なお現役な『狂気』の問題意識
今日まで録音されて残っているすべての音楽を大洋の水に例えるなら、自分の音楽体験は遠泳や潜水にも及ばず、たかだか波打際で足先を濡らした程度に過ぎない。極めて限定的なものだ。そうだと分かった上で敢えて書くが、アルバム『狂気』の特異性は突出している、と私は考えてきた。
今から50年前は世界中に『狂気』を買い求める人がいて記録的ベストセラーになる時代であったし、その後の50年間は『狂気』が風化しなかったため用済みにならなかった時代だ、と言うことができる。『狂気』が提示した問題意識は普遍的であり、50年かけても課題を解決できなかったどころか今なおバリバリの現役で、ますます重さを増して人々の上にのしかかっている。
最後から二番目の曲“狂人は心に”では、毎朝配達される新聞を読むのが恐ろしくて手に取ることができず、開かれないまま放置された新聞がドアの内側に積み重なっていくさまが歌われた。新聞を購読しない家庭は増えたが、読む者を狂気に誘うニュースはネットに溢れ返り、毎秒ごとに更新され続けている。歌詞にあるように、ニュースを受け取る者の頭が爆発しても不思議はない。
多数派を占める人々の考えが大きく変わらない限り社会は変革しないのだから、おそらく『狂気』は今後も聴き継がれる運命にある。それゆえ、リリース50周年を祝う気持ちがある一方で、素直に喜んでばかりはいられない、とも思う。将来〈ずいぶん昔に『狂気』というアルバムがあったんだよ、でもあれは人間が問題の多い文明生活を送っていた頃の産物で、我々は当時の人々のことを学ぶとき以外、もう必要としないんだ〉と言える時代が来るだろうか? 次の50年も『狂気』が生き延びるとしたら、その時代を生きる人々が幸福だとは必ずしも言えないかも知れない。
30周年盤の音作りへの自信
大上段に構えた物言いはこれぐらいにして、日本独自企画の完全生産限定盤である発売50周年記念SACDに話を進めよう。
音に着目すると、今回リリースされたSACDは2003年にEMI/キャピトル/東芝EMIが発売した『狂気』30周年記念盤SACDと何ら変わらない。比較試聴したが、両者の音質はほぼ同一だと判定できた。
今回ソニーが発売した50周年記念盤の国内盤SACDのディスク自体は、米アナログ・プロダクションズ(以下AP)が出したSACDと共通していると考えてよい。APは米モービル・フィディリティと並んで独自のリマスタリング手法を売り物とする再発専業の高音質レーベルであり、素材となるマスターテープから取り出した音に施す味付けで勝負してきた。ところが、今までAPが発売したフロイド関連SACD『炎』『死滅遊戯』『Animals (2018 Remix)』に限っては独自のマスタリングを行わず、フロイド側が供給したマスターそのままの音質でリリースしている。それら三作の印刷物を見てもAP側のマスタリングエンジニアやマスタリングスタジオのクレジットはない。この点は今回の『狂気』も同様だ。
その理由だが、しばらく前からフロイド側のクオリティコントロールが非常に厳密になり、発売元によって作品の音質が変わる事態を好まないためだと考えられる。APが制作した『死滅遊戯』SACDを基にして日本のソニーが国内盤SACDを出そうとした時、国内盤限定で盤面に緑色の特殊インキを印刷することで音質向上を図る〈音匠(おんしょう)レーベルコート仕様〉を採用すると発表した。にもかかわらず、さんざん発売を延期したあげく音匠仕様でなく本国盤と同じ通常印刷のSACDでリリースしたことがある。これは日本サイドが独自に音質を改善しようとしても、音質が変わるのを恐れたロジャー・ウォーターズ側が音匠仕様を認めなかった結果であろう。それほどまでに融通が利かないのだ。
そういった経緯で、ディスクの中身の音に関して今回の『狂気』50周年盤は30周年盤と変わりがないから、音しか興味がないリスナーはわざわざ買い増ししなくても構わない。音に関して完璧主義を貫くフロイドが30周年盤と同じマスターで50周年盤を出したのは、20年を経た今でも30周年盤の音作りに自信があり、ことさらミックスをやり直す必要はないと判断した、と捉えるのが妥当だ。もちろん、新規にミックスをやり直せばデヴィッド・ギルモアとロジャー・ウォーターズの確執が再燃する火種になりかねないので、ここは一つ穏便に……という配慮も感じないではない。また、緩やかながらオリジナルマスターの劣化が進んでいる現実もあり、幾つかのファクターから総合的に判断して2003年盤の音を踏襲したと評者は見ている。
結局APはフロイド関連音源に関して独自マスタリングによる自己主張を行わず、パッケージのデザイン/制作および商品の流通に専念している。『狂気』50周年盤の国内盤SACDでは、APに代わってソニーが独自のパッケージを制作する形となった。
貴重な写真集やポスターに想像力を刺激される
このソニー独自パッケージこそ国内盤SACDの眼目だ。手のひらの上に乗せると持ち重りがする。全体が7インチシングル盤と同じ寸法の紙ジャケット仕様なのだが、それと同じサイズの写真集が付属していて、これが重さの正体だ。中身は72年の来日時に撮影されたメンバーの写真40葉で、画質・紙質とも申し分ない。当たり前だが全員揃って若々しく、カラー写真では血色の良さに目を見張った。50年という歳月の流れを思い知らされる。

サイズは小さいが、縦長のツアーパンフの複製も興味深い。当時フロイドの理解者として力があった宇野亜喜良氏のコメントや、内田裕也氏の生々しいフロイド体験記が載っている。バンドのメンバーを紹介する文章も辛辣かつ挑発的で、身を張ってロックの最前線で戦っていた時期のフロイドを思い起こさせ、時代の相が窺われる。
その他のポスター・来日公演チケットの複製など付き物については各種の記事などに説明を譲りたい。これらの印刷物は日本国内オンリーのものが貴重だ。今まで伝説や写真でしか知らなかった物品なのに、(複製とはいえ)いきなり実体を突きつけられるのだから堪らない。73年に埋められたタイムカプセルを開けるような体験ができて、いたく想像力を刺激される。こんな思いを味わえるとは想像しなかった。令和の時代も、こう見えてなかなか捨てたものではない。
〈建築科出身〉のバンド
この文章の冒頭で指摘した『狂気』の特異性について説明したい。
ロックの世界には〈アートスクール系のバンド〉という系譜がある。ロキシー・ミュージックやトーキング・ヘッズが典型的で(他にも多数)、音楽が専門ではないから演奏はそれほど上手ではないかも知れないが、ビジュアルのセンスや発想の面白さで勝負をかけるタイプだ。音楽的なルーツと確かな演奏力で音楽を作る伝統的なバンドのあり方とは違うが、ロックは折に触れてアートスクール系バンドから新しい血を導入し、刺激を受けることで表現の幅を広げてきた。
ピンク・フロイドもアートスクール系バンドに準じるが、他と決定的に違うのは主要メンバーが建築科の出身だった点だ。文系ではなく理系であり、当然のことながら両者の発想は全く異なる。建築は完成形から逆算し、仕事を完遂するための材料を地道に積み上げる作業が重要だ。堅牢な建物は一時の衝動や思いつきだけで建てられない。全体を見通す構想力が必須となる。効率や手順、テクノロジーを重視するのは言うまでもない。そして、当初の目標を達成するために使える手段は何でも使う。これがフロイドの音楽の作り方の基礎となった。
演奏力が平凡なら、楽曲の構成や詞作、舞台上の演出、照明、映像……それらすべてを動員して自分たちの不利を補う。初期のライブにおけるスライドショウ、ライトショウに始まり、録音済みテープによる効果音、円形スクリーンに投影するイメージ映像、人間や豚を形どった巨大なバルーン、花火、さらには会場内を飛行してステージに激突し燃え上がる模型飛行機……とエスカレートしていった。単なるミュージシャンとして振る舞うのではなく、総合力で勝負したわけだ。
先進的なサラウンドの試み
その中でも特に威力が強いのがサラウンド音響である。PA装置の平均水準が現在とは比べ物にならないほど貧弱であった頃から、フロイドは〈アジマス・コーディネーター〉と名付けたオリジナル機材を装備し、ライブ会場に4チャンネルサウンドを導入した。会場の四隅にスピーカーを置き、それぞれから好きな音を出せるようにセットする。映画のサラウンド音声よりもはるかに先駆けており、先進的な試みだった。
70年代に入ると4チャンネル規格のLPレコードが実用化され、家庭でのサラウンド再生が可能になった。フロイドにしてみれば、ライブ会場と同じ演出をリスナーの部屋で再現できるのだから、我が意を得た思いだったろう。必然的にアルバムの4チャンネルバージョンが次々と作成された。『狂気』50周年盤のジャケットに巻かれた金帯の表示〈「4チャンネル」RMサウンド〉は、それを表したものだ。
しかし、今と違って当時はオーディオ機材の全てがアナログ技術に基づいており、4チャンネルLPレコードの再生音は理想から程遠かった。ノイズが多く、演奏音が曇りがちになる。各チャンネルのセパレーション(分離)が悪く、チャンネルどうしで音が混じり合ってしまう。そうした弱点をカバーするため、ソフト側ではサラウンド感を強調するミックスが行われた。初心者が聴いても効果が分かりやすく、サラウンドのありがたみが伝わる音場構成だ。初期のステレオLPにもあった〈泣き別れ〉と呼ばれる分離過剰な音作りである。
こうした技術的な問題にオイルショックがもたらした不景気が追い打ちをかけ、新しいハードウェアを必要とする上に部屋の中で場所を食う4チャンネルLPは成功しなかった。この失策が音楽業界と家電業界のトラウマになったのか、アナログ盤と交代したCD規格はサラウンドをフォローせず、CDの次の音楽ソフト規格となるSACDおよびDVD-Audioが登場するまでの約20年間はサラウンドにとって冬の時代となった。
ロックで『狂気』を超えるサラウンドはなかなかない
4チャンネルLP用マスターをマルチチャンネル付きSACDへ移植したソフトは結構な数が出ている。史上初のマルチ付きSACD『Tubular Bells』から始まって、ディープ・パープル『Machine Head』EMI盤(ワーナージャパン発売の国内盤SACDとは異なる)、サンタナ『Caravanserai』、ジェフ・ベック『Blow By Blow』『Wired』、ムーディー・ブルース全盛期のアルバム群などが挙げられる。それらの音は確かにサラウンドするが、再生機器の性能が上がったぶん不自然に聞こえてしまう要素も多い。今はメディアも信号処理もデジタルで行うからノイズは少ないし、チャンネルセパレーションも理想値に近付いた。その結果、すでに必要がなくなった泣き別れミックスが目立ってしまう。
SACDのソフト規格をよりよく生かすには、やはり現在の再生装置に合わせたサラウンドミックスを作る方が合理的だ。フロイドのメンバーやスタッフもそのように考えて、新しいミックスを立ち上げたと察する。したがって、『狂気』50周年盤の金帯にある〈「4チャンネル」RMサウンド〉の文言は単に当時の帯を復刻したもので、中身の音は2003年盤に準じる。これは重要なポイントで、私が教員なら期末テストに出します。
4チャンネルLP時代の音源から現在のBlu-ray Audioに至るまで、決して少なくない数のアルバムがサラウンド化された。デジタル規格のディスクで発売されたサラウンド作品は結構な数を聴いてきたが、いま確信を持って言えるのは〈ロック系で『狂気』を超えるサラウンド音楽がなかなか出現しない〉という事実だ。
サラウンドの使い方は多様で、ライブ会場の熱気を再現したり、楽器をリアに振ってフロントの音と対話させたりといった手法がある。しかし、アルバム全体のコンセプトがサラウンドを要求し、楽曲が最初からサラウンドを想定して組み上げられた作品はさほど多くない。おそらく最大の原因は〈サラウンドで音楽を作る発想が作り手の側にない〉ことだ。その発想をフロイドはライブで鍛え、スタジオで実践した。単に後ろへ音を回した小手先のサラウンドとは年季も情熱も違う。早くから総合力で勝負したバンドならではの戦略と工夫が見られる。
クラシックのソフトでは、コンサートホールの雰囲気や残響を再現するのが目的の〈音場再現型サラウンド〉が主流だ。それに対して、フロイドのようにリスナーの周囲で縦横無尽に音を動かしまくり、必要なら効果音を援用するタイプを〈音場創造型サラウンド〉と呼ぶ。後者のジャンルで評者が傑作だと認定するのは、冨田勲の諸作品、芸能山城組による『交響組曲AKIRA』(規格はDVD-Audio)、そしてフロイドの『狂気』。この三極に尽きる。どれも録音の段階からサラウンドを想定した作品であり、サラウンドではない2チャンネルステレオミックスでは力がかなり落ちてしまう。CDや通常のLPといった2チャンネルステレオのソフト規格に盛り付けるだけで事足りる録音素材を後付けでサラウンドに拡張するのは、やはりどうしても無理がある。
是非『狂気』をサラウンドで聴いてほしい
同じアルバムを聴くのでも、2チャンネルステレオとサラウンドでは全く異なる体験となる。その違いを言葉で伝えるのは難しい。なので、中古の機材でも安物でも構わないから是非『狂気』をサラウンドで聴いていただきたい。
オーディオマニアや評論家の先生方は〈サラウンド再生をやるなら最低でも12畳、できれば20畳の部屋が望ましい〉などと非現実的なことを平然と言うのだが、そういった極論がサラウンドの普及を妨げた面は否定できない。〈クルマに乗るならロールスロイスかランボルギーニを買って下さい〉とは言わないでしょう? クルマに乗る楽しみや利便性は、たとえ軽乗用車であっても充分に味わえるのと同じだ。再生時の音量も、そんなに上げなくて大丈夫です。むしろ小音量で聴いても満足感が得られるのがサラウンドの効用でもあるのだ。
一つだけお願いしたいのは、テレビの前に置くようなサラウンド機能付きのサウンドバーではなく、5本ないし6本の独立したスピーカーと、それらから音を出せるアンプやプレーヤーを用意してほしい。バー1本で完全なサラウンド再生ができるなら苦労はない。
SACDの5.1チャンネルは古くなっていない
『狂気』50周年盤の海外盤は、ここで紹介した国内盤と商品の内容が違っている。大きな特色はBlu-ray Discが同梱されていて、サラウンドをさらに発展させたDolby Atmos規格でアルバム全曲を聴ける点だ。この違いを指摘して〈国内盤は30年前と同じ音しか入っていない〉〈Dolby Atmosがないからダメだ〉と主張するマニアもいる。

PINK FLOYD 『The Dark Side Of The Moon - 50th Anniversary Box Set』 Pink Floyd/Legacy(2023)
だが、ここでリスナー側の状況に目を向けてもらいたい。実際に5.1チャンネルで音楽再生を楽しんでいる人が、自分の知人や親類縁者、職場に何人いるか。一人でもいるなら、それは例外的なケースだ。正確な数字は公表されていないが、サラウンド再生の世帯普及率は1%にも届かないだろう。ましてやスピーカーを天井にずらずら設置して本格的にDolby Atmosを楽しんでいる人は、さらに少ない。日本全国に何百戸あるのか。
ということは、再生側の環境を見ればSACDの5.1チャンネルはリリース後20年経ってもぜんぜん古くなっていないのである。5.1付きSACDやDolby Atmos付きBDを買ってもコレクターズアイテムとしてキープする人がほとんどで、実際にサラウンド音声を聞ける人はごく僅かという状況が今なお続いている。これは本当にもったいない話であって、残念としか言いようがない。サラウンドの再生装置を担いでご自宅まで伺って聴かせたいぐらいだ。
率直に言えば、5.1さえ満足に使いこなしているとは言えない現生人類にとって、Dolby Atmosは商用化を急ぎすぎた規格ではないのか。家電メーカーの人たちは新しい製品がバンバン売れれば儲かるだろうし、音作りの可能性を追求するのは構わないのだが、もうちょっと現実を見てほしいなと思っている。
2チャンネルステレオで聴く『狂気』も飛べます
念のために補足するが、5.1チャンネル再生とは別物であるけれど、普通の2チャンネルステレオ再生で聴く『狂気』もなかなかのものだ。2チャンネルステレオで聴くリスナーの割合が最も多いのはLP時代から現在まで一貫しており、そこを疎かにするフロイドではない。音がリスナーの側面から背後近くまで回り込むようにミックスが設計され、とつぜん左後ろから笑い声が来て思わず振り向きたくなる場面もある。今風の言葉で言えば〈音で作ったバーチャルリアリティ〉だ。ご禁制の薬物を使わなくとも、部屋を真っ暗にして、いつもより少しだけ音量を上げれば、かなり飛べます(※効果には個人差があります)。
2003年盤と、そのマスターを流用したAP盤は、2チャンネルステレオのSACD層向けにDSDフォーマット、CD層にはPCMフォーマットと、わざわざマスターテープを2回走らせ、2倍の手間をかけてデジタル変換している。それが音質のためにベストな方法なのは自明なのだが、本当に実行したハイブリッド盤は決して多くない。多くの場合、ハイビットPCMでアナログ/デジタル変換した後でSACD層向けにDSD化し、CD層向けにはPCMでダウンコンバートする。もしくはDSDでA/D変換したマスターからCD層向けにPCM変換を行う。
フロイドのメンバーが持っていた高音質志向は『狂気』の後にますます嵩じて、『The Wall』で完成の域に至る。作品の内容からいっても『The Wall』はサラウンドと相性バツグンだ。頼むから早くSACDを発売してくれ、もう待てない、サラウンドするけどギルモアのギターがない『The Wall』なんか嫌だ!と言い続けて何年経ったか、もう忘れた。最近は少々ヤケ気味に〈名前が変わるまでに聴ければいいや〉と考えたりもする。今年は『狂気』があったから多分ダメだろうな。『The Wall』50周年まであと6年か。長すぎる。
ピンク・フロイドと水野英子の名作少女マンガ「ファイヤー!」
以下は余談です。
水野英子先生という偉大な少女マンガ作家がいて、70年ごろにロックバンドの人間模様を描いた長編「ファイヤー!」を発表し、新しい分野を少女マンガ界で開拓した。当時としては画期的な作品であり、同作の成功を追いかけて音楽ネタの少女マンガが多数出現することになる。
その水野先生がフロイドを描いた短編が、今年1月に2巻組の豪華版で再刊された「ファイヤー!」上巻に採録されたのをご存知ですか? 初出はマンガ雑誌ではなく、小学館が発行していたFM雑誌「FMレコパル」だ。小学館には名だたる大作家がおおぜい出入りしていたから、彼らにミュージシャンを描いてもらった短編マンガが恒例の呼び物になっていた。残念な事に現在それらの多くは読むことが難しくなっており(松本零士先生が描いたクラシック関連作だけは一冊の単行本にまとまっている)、フロイド編が再び日の目を見たのは僥倖としか言いようがない。
発表は『Animals』リリースの頃だ。フロイドのキャリアをダイナミックな絵柄で紹介し、少女マンガ風に花を背負ったシド・バレットが描かれていたりする。これを読めば、フロイドが「ファイヤー!」のストーリーに影響を与えたことがあったかも知れない、などと妄想を逞しくしてしまう。日本のソニーが出した『狂気』50周年盤の付き物と同じく、こちらも海外のファンが縁を感じ取りがたい独特な世界だ。
日本で人気が高かったクイーンやボウイが少女マンガに与えた影響は計り知れない。締切に追われる連日の徹夜作業をロックで乗り切った制作現場も多かったと聞く。そういった時代に想いを馳せる一助としても、ぜひフロイド編付きの「ファイヤー!」に浸ってもらいたい。ゴールデンウィークのお供にいかがですか?
もっと言いたいことがあったと思うのだけど……。
RELEASE INFORMATION

リリース日:2022年4月19日
品番:SICP-10143
価格:6,600円(税込)
日本独自企画/完全生産限定盤
パッケージ:7インチ紙ジャケット仕様(超レア!日本盤クアドラフォニック〈金帯〉を復刻)
収録内容:SA-CDマルチハイブリッド:アルバム『狂気』(CD層は通常CD機器で再生可能)
SACD, Hybrid, Multichannel, Stereo, Remastered, 5.1ch Surround Sound
15大特典:〈1972来日公演関連復刻〉①フォトブック(全48P)②ツアーパンフレット ③④チケット2種 ⑤ツアー告知ポスター ⑥公演会場で配布された幻の歌詞リーフレット「月の裏側 -もろもろの 狂人達の為への作品-」⑦ツアー告知フライヤー ⑧宣伝用チラシ ⑨来日記念ステッカー ⑩⑪来日記念盤シングルジャケット2種〈オリジナルLP関連復刻〉⑫⑬ポスター2種 ⑭⑮ステッカー2種
TRACKLIST
1. スピーク・トゥ・ミー/Speak To Me
2. 生命の息吹き/Breathe (In The Air)
3. 走り回って/On The Run
4. タイム/Time
5. 虚空のスキャット/The Great Gig In The Sky
6. マネー/Money
7. アス・アンド・ゼム/Us And Them
8. 望みの色を/Any Colour You Like
9. 狂人は心に/Brain Damage
10. 狂気日食/Eclipse

PINK FLOYD 『The Dark Side Of The Moon - 50th Anniversary Box Set』 Pink Floyd/Legacy(2023)
リリース日:2023年3月24日
品番:19658713451
価格:48,890円(税込)
輸入盤のみ/完全生産限定盤デラックスボックスセット
•『狂気』2023最新リマスター CD & LP
•『ライヴ・アット・ウェンブリー1974』CD & LP
•『狂気』Atmos Mix Bl-ray (Audio)
•『狂気』5.1 Mix + High-Res Remastered Stereo Mix Blu-ray (Audio)
•『狂気』5.1 Mix + Remastered Stereo Mix DVD(Audio)
•72~75年の全英・全米ツアーからレア・未発表写真を収録した豪華160ページハードカバーフォトブック
•オリジナル盤の76ページ楽譜集
•オリジナル7”アナログシングル復刻 × 2枚(『マネー/望みの色を』と『アス・アンド・ゼム/タイム』)
•ポスター4枚、ポストカード2枚
•1973年にロンドン・プラネタリウムで行われた『狂気』試聴会のEMI制作パンフレットおよび招待状のレプリカ

PINK FLOYD 『The Dark Side Of The Moon - Live At Wembley Empire Pool, London, 1974』 Pink Floyd/ソニー(2023)
■CD
リリース日:2023年3月24日発売
品番:SICP-6509
価格:2,750円(税込)
完全生産限定盤/日本独自紙ジャケット仕様/見開きジャケット・巻き帯/解説・歌詞・対訳付/ポスター封入/日本国内プレスCD
■LP
品番:SIJP-139
価格:4,400円(税込)
完全生産限定盤/アナログ/輸入盤国内仕様/見開きジャケット/日本独自巻き帯/解説・歌詞・対訳付/ポスター2枚封入



