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ロックでこれだけ新しいことが出来るという希望

――これも聞いてみたかったのですが、最近秋山さんが気になっているバンドってどんなバンドですか?

「3月に〈SXSW〉に演奏しに行ったんですけど、そこで今度一緒にやるソブズ(Sobs)のステージがあったので〈せっかくなら見ておきたいね〉って見に行きました。

もちろんソブズもめっちゃ良かったんですけど、トップシェルフ・レコーズ(Topshelf Records)というレーベルが主催していたステージにソード・II(Sword II)ってバンドが出てて。めちゃくちゃゴスい名前なんですけど(笑)、格好も凄かったんです。モード系のファッションでしっかりとしたバキバキの世界観を持っていて、ギタリストは白いフライングVを下げていて、スタイルからして圧倒的な存在感だったんですよ。演奏が始まったら曲も凄くユニークで、ロックとかパンクとかの匂いもあるけどエクスペリメンタルで、かつライブなのに宅録っぽさも感じる凄く良いバランスでした。〈あのバンドを偶然見れたのは超最高だった〉ってメンバーみんなで話してましたね。

2022年のコンピレーションアルバム『Through The Soil II』収録曲ソード・II“ First Rule Of The Bug”

その後で調べて、ゼイ・アー・ガッティング・ア・ボディ・オブ・ウォーター(They Are Gutting A Body Of Water)、ア・カントリー・ウエスタン(A Country Western)、ブルー・スマイリー(Blue Smiley) 、あとフィーブル・リトル・ホース(Feeble Little Horse)というバンドを見つけて、その辺りの音楽を聴いてます。それぞれ似ているんだけど違っているので、シーンとして括るのはちょっと雑な気もするんですけど、この辺は本当シビれますね。

ゼイ・アー・ガッティング・ア・ボディ・オブ・ウォーターの2022年の〈Audiotree〉でのライブ動画

〈ロックは死んだ〉とか〈全部繰り返しだ〉とか言われている中で、同じ楽器を使っているのにロックはこんなに変わっていっている。〈これだけ新しいことが出来る〉と示せる人がこんなにたくさんいるのが凄く希望だなって思ってます」

※編集部注 2023年6月4日に東京・下北沢THREEで開催された〈Sobs Japan Tour 2023〉にDYGLが出演した

 

〈今が一番楽しい〉と思える何かが起きそうな新時代

――そういう雰囲気で感じる部分ってめちゃくちゃありますよね。

「それは本当にめちゃくちゃありますね。ちなみにCasanova.Sさん(インタビュアー)は最近どんなバンドをチェックしてるんですか?」

――オーストラリア出身で今ロンドンを拠点に活動しているハイスクール(HighSchool)ってバンドがいるんですけど、スピーディー・ワンダーグラウンド(Speedy Wunderground)から7インチを出していて。そのバンドが初期のビーチ・フォッシルズにニュー・オーダーを混ぜた感じで凄く良いんですよね。世代的にも、それこそビーチ・フォッシルズを聴いてバンドを始めたり影響を受けたりした彼らのような人たちが増えてきているような気がしていて。

ハイスクールの2023年のシングル“Colt”

「その話を聞いて思ったんですけど、僕はビーチ・フォッシルズにジョイ・ディヴィジョンを感じるんですよ。僕は元々ポストパンクが好きだったっていうのもあって、USなのにUK感がある絶妙な感じがビーチ・フォッシルズにはあるから好きなんです。実際にビーチ・フォッシルズと共演した時も〈UKのバンドがこうでああで〉って話が深く出来て、それで盛り上がったままノリでオアシスの曲を一緒にやったりして(笑)。

レコーディングで僕らがニューヨークに行った時に、クイーンズに滞在してたんですけど、そこで仲良くなった音楽好きな人たちはオアシスとかはあんまり知らなかったんです。〈“Wonderwall”のバンドだっけ?〉みたいな感じで。リバティーンズに至っては〈聴いたことがない〉って感じでした。〈アメリカの人たちにとってUKロックってこれくらいの認識なんだ〉という衝撃がデカかったですね。

そんな中でビーチ・フォッシルズはめっちゃUKの音楽を聴いているなって感じる。そういうのが実際に音にも出てますよね」

――そういう共感についての話をすると、今はインターネットがあるからかもしれませんが、どこかで局地的に起こったシーンに対して他の場所で同じような感覚を抱いている人がアクションを起こして、両者が意図せずとも繋がっていく流れも増えているような気がするんですよね。たとえばオランダと日本は近い感じがあるのかなって。僕はオランダのア・フンガス(a fungus)ってバンドが好きなんですが、ああいうUKやUSの両方に通じるような、でもUKやUSともまたちょっと違ったバンドがたくさんいて、自国の音楽と他の国の音楽に影響されたシーンが各地に出来つつあるんじゃなかと思える雰囲気があって。

ア・フンガスの2022年作『It Already Does That』収録曲“Pull Out”

「なるほど。最近はアジアの音楽の認知度が海外でも上がってきて、インタラクティブな文化の行き来があって、見てて凄くワクワクしますね。今が一番楽しいなって本当に思えるような、何かが起きそうな感じがあちこちにあって。しかも、それは〈イギリス対アメリカ〉で僕らが観客なんじゃなくて、誰でも参加できるリングがみんなに用意されている。だいぶ新時代感を感じます」