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©Scarlet Page
FOO FIGHTERS
悲劇を乗り越え、苗場に降り立つ
フー・ファイターズのニュー・アルバム『But Here We Are』のジャケには〈FOR VIRGINIA AND TAYLOR〉と印字されている。後者は25年間バンドを支えたテイラー・ホーキンス(ワイルドなドラムはもちろん、曲作りでも大貢献した)、前者はデイヴ・グロールの母であるヴァージニアのことで、共に2022年に亡くなった。2人に捧げられた11作目のニュー・アルバムは、必然的にデイヴの私的な感情が堰を切るように溢れている。バンド/人生観を揺るがす別離を歌詞や音色に落とし込んだ、柔らかくも力強い筆致に胸を抉られる一枚だ。喪失と決意を背中合わせに、前へと進んでいくメッセージ性が楽曲を奥深いものにしている。
ファースト・アルバムを彷彿とさせる“Under You”のようなフレッシュな煌めきを放つ曲がある一方で、教師であった母に宛てられた10分超えの“The Teacher”は圧巻。ストーリーテラーとしてのデイヴの真骨頂が刻まれた名演である。5月末から始まったツアーではヴァンダルズのジョシュ・フリーズをドラマーに起用。その新布陣により、今年〈フジロック〉2日目の大トリを務めることになっている彼ら。苗場で過去の名曲群とエモーショナルな新曲がどう響くのか、期待せずにはいられない。 *荒金良介
フー・ファイターズのニュー・アルバム『But Here We Are』(RCA/ソニー)