余韻どころではない臨場感で迫るサントラが登場!
自室でこれほどまでにエキサイトしているのもどうかと思うが、でも仕方ない。あのオープニングの昂揚が、失われた人の気配とともに歩みを進めてきた主人公の痛みが、コート上で10人のドラマが交錯する湘北 × 山王戦の熱い拮抗がありありと目に浮かぶのだ、この音だけで。
連載の終了から約26年半を経て、ついに新たな劇場版が登場したバスケット漫画の金字塔「SLUM DUNK」。脚本・監督を原作者である井上雄彦がみずから担い、物語の中心となる湘北高校バスケット部の面々のなかでもポイントガードの宮城リョータに焦点を当てた映画「THE FIRST SLAM DUNK」は、昨年12月に公開されると初週から8週連続で観客動員数1位を記録。トータルで1000万人を突破し、いまもロングランを継続中だが、このたびそのオリジナル・サウンドトラックも到着した。
オープニング曲は井上からの指名となったThe Birthdayの“LOVE ROCKETS”。重低音のベース・リフで口火を切る硬派なガレージ・ロックに対し、エンディング曲を担ったのは10-FEETだ。バンドのソングライターであるTAKUMAはその“第ゼロ感”に加えて劇伴も手掛けており、静と動における〈動〉のパートをTAKUMAが、残る〈静〉のパートを武部聡志が書き下ろしている。
EDM × ハード・ロックな“第ゼロ感”をはじめ、キレッキレのギター・リフが多彩なヴァリエーションで押し寄せるTAKUMA曲はメタル色の強いスコアも多く、さらには同期や人力ドラムンも加わってこれまで以上のミクスチャーぶりを体現。そこに生のストリングスも並走する“いけ!”“死守”あたりはとりわけ真骨頂と言えるだろう。一方の武部曲は、繰り返されるシンプルな鍵盤の響きと深みのあるチェロが泣きたくなるような郷愁を誘う“ソータの部屋”を筆頭に、ピアノの一音のみで場の空気を変えるミニマルな構成のものが印象的だ。ほかにもテクノに近い電子音楽やアンビエントなシンセ・サウンドなど、テクスチャーを大事にしたスコアを引き受けている。
劇中で使用された全29曲を網羅しているだけあって、通して聴くと映画の余韻どころか冒頭のような感覚が呼び起こされる一枚。ブックレットにはスコアに対応した場面写真が掲載されているので、「THE FIRST SLAM DUNK」を観た人はもちろん、まだ観ていない人もこの映画の緊張感と開放感、そして叙情性に触れることができるだろう。