山下達郎が76～82年にRCA/AIRからリリースした名盤の数々が新たなリマスターとカッティングのアナログ盤およびカセットテープでリイシューされている〈TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection〉。同企画にあわせてタワーレコード渋谷店で開催されたのが〈CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA〉だ。2023年7月12日からは〈CITY POP UP STORE @ TOWER RECORDS UMEDA NU CHAYAMACHI〉として大阪の梅田NU茶屋町店でも開催されている。
渋谷店のポップアップストアではクリス松村と長門芳郎のトークイベントが5月13日に行われた。山下達郎の音楽に造詣の深いクリス松村とシュガー・ベイブでのデビュー以前から山下達郎を知るパイドパイパーハウスの店主・長門芳郎の対話は（時系列が少々混乱し脱線をしながらも）貴重なエピソードが満載。Mikikiは充実のトークの模様を4回に分けてお届けする。第2回に続く今回はソロデビュー作『CIRCUS TOWN』の制作、長門芳郎の故・坂本龍一との思い出などについて。
シュガー・ベイブのバイト時代、センチメンタル・シティ・ロマンスとの半世紀の友情
長門芳郎「『SONGS』のレコーディング中、シュガー・ベイブのメンバーは食えないわけで、みんなアルバイトをやっていましたから。宛名書きのアルバイトだったかな? そういうのにみんなで行ったりとか」
クリス松村「そんなバイトが（笑）」
長門「メンバーが食えないから、マネージャーももちろん食えないですよ。それで僕はキャラメル・ママの楽器運搬とか、そういうアルバイトを始めて」
クリス「達郎さんも実は、引っ越しのバイトをおやりになっていた。その前はレコード販売、高校時代は床掃除と。みなさん、大スターですごいミュージシャンだと思っていらっしゃるかもしれないけど、そういう食っていけない時代があったという!」
長門「僕は、キャラメル・ママの林立夫さんに中古のハイエースを譲ってもらったんですよ。74年かな? 名古屋のセンチメンタル・シティ・ロマンスの〈センチメンタル・パーティー〉に呼ばれてシュガー・ベイブのメンバーを乗せて行ったのですが、高速の途中でエンストしちゃったんです。あの頃は携帯電話もないですから、高速の公衆電話からセンチのマネージャーの竹ちゃん（竹内正美）に〈時間までに間に合わない〉と連絡して。でも、僕らは前座なわけですよ」
クリス「前座なのに間に合わないんじゃ困りますね（笑）」
長門「それでも、なんとか着いたんです。コンサートが終わる時間なのにお客さんも待っていてくれて。センチが先にやって、僕らがあとにやって」
クリス「え～っと……どっちが前座?」
会場「（笑）」
長門「センチとはずっと仲良くしていて。もう、49年前か。シアターグリーンで一緒にやったのが最初ですね。それからメンバー同士、マネージャー同士、みんな家族みたいになっていますね。それは今も続いていて。センチは今年、50周年ですよ」
クリス「（竹内）まりやさんともよく一緒にやってなさいますけど」
長門「そう。そう考えるとね、同じ頃に始めたシュガーは2年ちょっとで解散、アルバムは1枚だけ……」
クリス「76年のお正月には解散する結論が出ていたそうですからね」
長門「でも、センチは未だに新譜を出していますからね。今度、6月にはメーカーの垣根を越えたベスト盤（『50th Anniversary The Very Best of SENTIMENTAL CITY ROMANCE』）も出ますし」
クリス「ということは、達郎さんももうすぐ50周年?」
長門「そうなりますね」
クリス「50周年! 当時の山下少年を見ていて、そんなことを思われました?」
長門「いやあ、さすがにここまでとはね。
ただ、さっき言ったとおり、（中野）ブロードウェイを通る時に〈この商店街のスピーカーから山下くんの歌声が流れてくる日がきっと来るはず〉と思っていましたけど、それは実現しましたね」
クリス「もう、流れてくるところじゃない（笑）!」
長門「そうですね（笑）」
